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EVは本当に環境にやさしい? 製造時はガソリン車より多く出し、走って取り返す 答えを決めるのは「走る距離」と「充電する電気」

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EVは本当に環境にやさしい? 決めるのは「走る距離」と「電気」、製造から廃棄までで見るCO2
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「EVは走るときCO2を出さない。でも、作るときにたくさん出すって聞いた。結局、環境にいいの? 悪いの?」——EVを検討する人も、EVに懐疑的な人も、一度はぶつかる疑問です。この記事では、車を作るところから走り終えるまでのCO2を合計する「ライフサイクル」の考え方で、EVとガソリン車、ハイブリッド車を比べた調査をもとに整理します。先に言っておくと、答えは「はい」か「いいえ」の一言では終わりません。

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答えを決めるのは「何km走るか」と「どんな電気で充電するか」

国際エネルギー機関(IEA)は「Global EV Outlook 2024」で、2023年に売られた中型のEVは、15年・約20万km使う前提で、ライフサイクル全体の温室効果ガス排出量が同等のガソリン車などのおよそ半分、ハイブリッド車より4割以上少ないと示しました。

一方で、EVは作る段階で多くのCO2を出すのも事実です。この2つは矛盾しません。

EVは「作るときに多く出し、走るときに取り返す」車です。だから、どれだけ長く走るか、そして充電する電気がどう作られているかで、答えが変わります。

この記事は、その2つの条件を順番に見ていきます。

作るときは、EVのほうが多く出す

EVの製造でCO2が増えるいちばんの理由は、駆動用の大きな電池です。電池の材料を掘り出し、精製し、電池に組み上げる工程で、多くのエネルギーを使います。

スウェーデンの自動車メーカー、ボルボが公表したライフサイクル評価では、EVの「C40 Recharge」は、同クラスのガソリン車「XC40」に比べ、製造段階の排出量が約70%多いとされました。日本の電力中央研究所が2021年6月に公表した研究資料も、電動化が進むほど製造時の排出量が増え、EVでは電池の製造がその4割強を占めると分析しています。

「やっぱりEVは環境に悪いのでは?」と感じるのは、この段階だけを見た場合です。

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「作るときに多く出すのに、なぜ生涯では少なくなる?」

ここが、EVの環境性能でいちばん誤解されやすいところです。

ガソリン車は、作るときのCO2は少なめですが、走るたびにガソリンを燃やしてCO2を出し続けます。EVは走行中に排気ガスを出さず、充電に使う電気をつくるときのCO2だけがかかります。走れば走るほど、1kmごとの差が積み重なり、製造時の「借り」を少しずつ返していくイメージです。

その「借りを返し終える距離」を、ボルボは電気の種類ごとに計算しています。

充電に使う電気 EVがガソリン車を下回るまでの距離
風力発電の電気だけ 約4万8,000km
EU28か国の平均的な電源構成 約7万7,000km
世界平均の電源構成 約11万km

※ボルボ「C40 Recharge」とガソリン車「XC40」の比較(20万km走行を前提としたボルボのライフサイクル評価、2021年)。報道(Carscoops、キヤノングローバル戦略研究所の解説記事など)で確認した値。車種・電池の大きさ・前提で数字は変わります。

この距離を年数に直すと、実感がわきやすくなります。

年間の走行距離 約4.8万km(風力) 約7.7万km(EU平均) 約11万km(世界平均)
5,000km 約9.7年 約15.4年 約22年
1万km 約4.8年 約7.7年 約11年
約1.3万km(IEAの前提:15年で20万km) 約3.6年 約5.8年 約8.2年

※上の表の距離を、年間走行距離で割っただけの単純な計算例です。電池の劣化や乗り方、実際の電源構成の変化は考慮していません。

同じEVでも、充電する電気がきれいなら数年で、火力が多ければ10年以上かかって、ようやくガソリン車を追い越す。EVの「エコ」は、買った日ではなく、走り続けた先に生まれるものです。

逆に言えば、年に数千kmしか乗らず、数年で手放す使い方では、製造時の借りを返しきれないまま次の人へ渡ることになります。もっとも、車は中古車として次の持ち主のもとでも走り続けるので、「車1台が一生で何km走るか」で見ることも大切です。電池がどれくらい長持ちするかはEVのバッテリー劣化、何年でどれくらい?で紹介しています。

「どんな電気か」で、差はここまで変わる

IEAは同じ報告で、国ごとの電源構成によってEVの削減効果が大きく違うことも示しています。

国・地域 中型EVのライフサイクル排出量(ガソリン車などとの比較)
世界平均 およそ半分
アメリカ 45〜65%少ない
中国 40%少ない
インド(石炭火力が多い) 20%少ない程度

※IEA「Global EV Outlook 2024」による。前提はいずれも中型車・15年(約20万km)。

石炭火力の多いインドでも、EVのほうが少ないという結果ですが、その差は2割ほどまで縮まります。発電の中身が変われば、同じEVでも環境への効き目が変わるということです。

では日本はどうか。経済産業省が2026年4月に公表した2024年度のエネルギー需給実績(確報)では、発電電力量のうち火力が67.5%、再生可能エネルギーが23.1%、原子力が9.4%でした。前年度(2023年度)も火力は68.6%で、日本の電気はおよそ7割を火力に頼っています。

電力中央研究所の研究資料は、火力発電の比率を90%・45%・0%と変えて比べ、火力の比率が下がるほど、内燃機関車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EVの順に排出量が小さくなり、EVの優位がはっきりすると分析しています。裏を返せば、火力の比率が高いあいだは、EVとハイブリッド車の差は小さくなりやすいということです。

日本のハイブリッド車は燃費のよさで知られます。日本でEVとハイブリッド車を比べる場合は、「EVなら必ず大きく減る」とは言い切れず、電源構成や車の大きさ、走る距離の前提しだいで差が変わる、と考えるのが正確です。ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車の選び方はPHEVとHEV、結局どっちを選ぶ?で整理しています。

電源構成は年ごとに変わり、IEAは発電の低炭素化が進むほどEVの削減効果がさらに大きくなると見込んでいます。今日買ったEVも、10年後に充電する電気は今とは違う電気かもしれません。

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走り終えたあと:電池はどうなる?

ライフサイクルの最後は、廃棄とリサイクルです。EVの電池は、車として使い終わっても、容量がまだ残っていることがあります。

日産と住友商事が2010年に設立したフォーアールエナジーは、日産「リーフ」の使用済み電池を回収し、福島県浪江町の工場で再利用・再製品化しています。報道によると、再生した電池は鉄道の踏切の電源や、太陽光発電と組み合わせた店舗の蓄電池、浪江町の街灯などに使われています。

車として役目を終えた電池が、蓄電池として「第二の仕事」をすれば、そのぶん新しい電池を作らずに済みます。電池を何に、どれだけ長く使い切るかも、EVの環境性能を左右する要素のひとつです。

前提で答えが変わる3つの条件

条件 EVに有利になる方向 EVに不利になる方向
走る距離 長く、たくさん走る あまり走らずに手放す
充電する電気 再エネの比率が高い電気、自宅の太陽光など 火力(特に石炭)の比率が高い電気
車と電池の大きさ 必要十分な大きさの電池 使い方に比べて大きすぎる電池(製造時の排出が増える)

※IEA、ボルボ、電力中央研究所の分析の考え方をもとに整理したもの。個々の車の排出量を示すものではありません。

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あなたの使い方では?

毎日の通勤で年1万km以上走る

走る距離が長いほど、製造時の借りを早く返せます。EVの環境面での強みが出やすい使い方です。費用面の比較はEVの充電、自宅と外出先でいくら違う?も参考にしてください。

週末の買い物中心で、年に数千kmしか乗らない

環境面だけで考えると、EVの「元を取る」までに長い年数がかかります。燃費のよいハイブリッド車や小さな車も、同じくらい現実的な選択肢です。大きな電池のEVほど、この傾向は強まります。

自宅に太陽光発電がある、または導入を考えている

昼間に発電した電気で充電できれば、充電する電気のCO2を減らせます。上の表でいう「風力発電の電気だけ」に近づく使い方で、EVの強みを最も生かしやすい条件です。

数年ごとに新車に乗り換える

1人の持ち主の期間だけを見ると、製造時の排出を返しきれないことがあります。ただし、手放した車が中古車として走り続ければ、車1台としては返済が進みます。乗り換えの頻度そのものが、環境負荷に関わることも覚えておきたい点です。

「エコな車」は、選び方と使い方で完成する

EVは環境にやさしいのか。調査を並べると、世界平均で見ればライフサイクルの排出量はガソリン車のおよそ半分で、多くの条件でEVが有利という結果が出ています。ただし、その差は、走る距離と、充電する電気によって大きく変わります。

EVを「エコな車」にするのは、車そのものだけでなく、長く走らせること、そしてできるだけきれいな電気で充電すること。それはEVに限らず、どの車を選ぶ人にとっても、環境との付き合い方を考えるヒントになるはずです。

情報源

  • IEA「Global EV Outlook 2024:Outlook for emissions reductions」 iea.org
  • 電力中央研究所 研究資料「電動車と内燃機関車の製造と走行に伴うGHG排出量評価―事業用火力発電比率に応じた比較分析―」(2021年6月) criepi.denken.or.jp
  • Carscoops(ボルボ C40 Recharge のライフサイクル評価) carscoops.com
  • キヤノングローバル戦略研究所「電気自動車(EV)は本当に環境にやさしいのか」(2021年11月) cigs.canon
  • LOGISTICS TODAY(2024年度エネルギー需給実績・確報、2026年4月) logi-today.com
  • 経済産業省「2023年度エネルギー需給実績(確報)」 meti.go.jp
  • 日産自動車「フォーアールエナジー」 nissan-global.com
  • くるまのニュース(フォーアールエナジーの使用済み電池の再利用) kuruma-news.jp
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