
大雪の予報が出た日の夜にできることと、雪が積もった翌朝にできることは、まったく違います。翌朝はもう、給油に行くにも雪をかき分けなければならず、凍ったガラスやドアと格闘しているうちに出発の時刻が過ぎていきます。国土交通省と気象庁は、大雪が予想されるたびに「不要不急の外出を控える」「冬用タイヤとチェーン、スコップなどを備える」よう呼びかけていますが、その準備の多くは、降り出す前でなければ間に合いません。この記事では、気象庁の情報の出方、国土交通省やJAF、自治体の案内、JAFが雪の中で行ったテストの結果をもとに、大雪の前日に車まわりでやっておきたいことを順番に整理します。
前日にやることは「決める・満たす・覆う・積む」
先に全体を示します。前日の準備は、大きく4つに分けられます。
| やること | 中身 | 前日でないと困る理由 |
|---|---|---|
| 決める | 翌日、車で出かけるかどうか。出るなら時間と道 | 当日の朝は、道路が通れるか分からないまま判断することになる |
| 満たす | 燃料、寒冷地用のウォッシャー液、スマートフォンの充電 | 積もってからの給油は、行くこと自体が負担になる |
| 覆う | 停める場所を選び、ガラスにカバー、ドアの水気を拭く | 凍ってからでは、溶かすのに時間がかかる |
| 積む | スコップ、スクレーパー、チェーンなど。チェーンは付け方も確認 | 雪の中で初めて箱を開けると、付け方が分からないことがある |
このうち、いちばん効き目が大きいのは最初の「決める」です。
大雪の前日にできる最大の準備は、翌日に車を出さなくて済むように予定を動かすことです。
残りの3つは、それでも車を使う人や、使わなくても車を守りたい人のための準備です。
大雪は、何日前から分かるのか
「前日」といっても、大雪の気配はもっと前から出ています。気象庁は、大雪について段階的に情報を出しています。
| 時期の目安 | 情報 | 中身 |
|---|---|---|
| 6〜14日先 | 早期天候情報 | その時期として10年に1度程度の多い降雪になる可能性が高まったとき(冬の日本海側が対象)。毎週月曜と木曜の14時30分ごろ発表 |
| 5日先まで | 早期注意情報(警報級の可能性) | 警報級の大雪が予想されるとき |
| 数日〜1日前 | 気象解説情報 | 警報・注意報に先立って出ることがある |
| 約3〜6時間前 | 大雪警報 | 社会的影響の大きい災害のおそれがあるとき |
| 降っている最中 | 気象防災速報(短時間大雪) | 短い時間に一気に積もり、さらに続く見込みのとき(雪の多い一部の地域) |
※気象庁「大雪に関する情報について」「2週間気温予報と早期天候情報について」をもとに整理。名称は2026年10月時点のもの。
警報が出るのは、災害のおそれがある数時間前です。警報を見てから動くのでは、夜のうちに降り始めることも多い大雪には間に合いません。逆に言えば、数日前から「警報級の可能性」が出ている時点で、前日の夕方を準備の時間として空けておけるということです。気象庁は、短い時間に一気に積もる大雪の速報が出た地域では、外出を控えるだけでなく、ほかの地域からその地域へ向かわないことも大事だとしています。
決める:翌日、車を出すかどうか
国土交通省は大雪の前に出す発表で、最新の気象・交通情報に注意し、テレワークの活用も含めて不要不急の外出を控えるよう求めています。やむを得ず運転する場合には、冬用タイヤの装着、チェーンの付け方の事前確認と携行、早めの装着、スコップや砂などの携行をお願いしています。
あわせて書かれているのが、広い範囲で高速道路と、それに並行する国道などが同時に通行止めになる場合がある、という点です。「高速がだめなら下の道で」という逃げ道が、大雪の日には使えないことがあります。
実際に、2020年12月の関越自動車道では、大雪で2,000台以上の車が動けなくなる大規模な滞留が起き、解消までに3日かかりました。乗っていた人の多くは、出発した時点ではこうなるとは思っていなかったはずです。
前日に決めておきたいのは、次のようなことです。
- 翌日の予定を、別の日やオンラインに移せないか
- どうしても行くなら、電車やバスで行けないか(ただし大雪の日は公共交通も遅れや運休が出やすい)
- 車で行くなら、出る時刻を早めるか遅らせるか。帰りの時間まで含めて、雪の強まる時間帯を避けられるか
- 家族と、出かけるかどうかを決める基準(たとえば「朝の時点で通行止めが出ていたらやめる」)
動けなくなったときの車内での過ごし方は、雪道で立ち往生したときの記事で詳しく整理しています。
満たす:燃料・ウォッシャー液・充電
燃料は「出かけない人」にも関係がある
「翌日は車に乗らないのに、給油しておく意味はあるの?」
群馬県は大雪への備えとして、自動車の燃料を満タンにしておくことを挙げています。同じ一覧には、停電などに備えて車のシガーソケットなどから充電できる充電器を用意しておくことも入っています。
乗らない人にも関係するのは、車が「動く手段」だけでなく、停電したときにスマートフォンを充電したり、暖を取ったりできる場所にもなるからです。急に避難が必要になったときにも、燃料が少なければ遠くへは行けません。雪が積もってからガソリンスタンドへ行くのは、それ自体がひと仕事です。ふだんから半分を目安に給油しておく考え方は、ガソリンの「半分ルール」の記事で紹介しています。
ただし、雪に囲まれた車の中でエンジンをかけるときは、マフラーの周りが雪でふさがっていないことが前提です。JAFは、マフラーの周りがふさがると排気ガスが車内に入り込み、一酸化炭素中毒になるおそれがあると注意しています。
ウォッシャー液は凍らないものに
JAFは、ふつうのウォッシャー液や水は凍ることがあるとして、寒冷地用のウォッシャー液に入れ替えるよう勧めています。雪道では前の車がはね上げた泥や融雪剤でガラスがすぐに汚れます。いざ使おうとして液が出ないと、視界の確保そのものが難しくなります。ふだん雪の降らない地域の人ほど、入れ替えずに冬を迎えていることが多いので、予報が出た時点で残量と種類を確かめておきます。
覆う:停める場所と、ガラス・ドアの凍結
停める場所は「平らで、上から雪が落ちてこない所」
JAFは、寒い地域で駐車するときは、なるべく平らな場所を選ぶよう案内しています。選べるなら、建物の屋根の端の真下や、背の高い木の下も避けたいところです。屋根や木に積もった雪がまとまって落ちると、車の屋根やガラスを傷めるおそれがあります。
止め方にも、寒い地域ならではの注意があります。JAFは、パーキングブレーキのワイヤーが凍って戻らなくなることがあるため、寒冷地ではパーキングブレーキを使わず、AT車はPレンジに入れたうえで、車体の対角線上の前後2か所に輪留めを置く方法を紹介しています。電動パーキングブレーキの車は、エンジンを止めると自動でかかる場合があるので、取扱説明書で確認し、自動でかからない設定にできるか確かめておくよう書いています。ふだん雪の降らない地域で一晩だけ積もる、という程度なら、ここまでは要らないことも多いはずです。氷点下が続く地域へ行くときや、雪国で暮らす人向けの注意と考えるとよいでしょう。
ガラスはカバーで覆うのがいちばん効いた
JAFは2014年2月、長野県の菅平高原で、雪の夜にミニバンを一晩停めて、フロントガラスの凍結を防ぐ方法を比べました。気温は夕方の8.5℃から、最低で−6.3℃まで下がっています。
| 前の晩にしたこと | 翌朝の様子 |
|---|---|
| 何もしない | 凍結。スクレーパーでも氷を取り切れず、視界を確保できなかった |
| 撥水剤を塗る | 凍結したが、スクレーパーで削ると視界を確保できた |
| カバーをかける | カバーの内側に雪が入らず、凍結しなかった |
※JAFユーザーテスト「寒冷地での駐車時は窓やドアの凍結に注意!」より。
同じテストでは、凍ったガラスを溶かす時間も比べています。解氷剤を吹きかけた車は約1分で氷が溶けたのに対し、デフロスター(ガラスに温風を当てる機能)だけの車は、視界を確保するまで約10分かかりました。カバーがなければ、毛布などで代わりにすることもできますが、JAFは効果は落ちるとしています。凍ったガラスにお湯をかけるのは、温度差でガラスが割れるおそれや、溶けた水がまた凍るおそれがあるとして注意されています。
ワイパーを立てるかどうかは、雪の重さで考える
雪国でよく見る、ワイパーを立てて停める習慣。JAFは、目的地に着いたら積雪に備えてワイパーを立てておくよう勧めています。立てておかないと雪かきがしにくく、ワイパーのゴムがガラスに凍りつくことがあるためです。
一方で、湿った重い雪がどっさり積もる夜は、立てたワイパーに雪の重みがかかって、根元から曲がるおそれがあるという指摘もあります。屋根から落ちた雪が当たる場所なら、なおさらです。
一見正反対に見えますが、両方の言い分は「凍りつくのを防ぎたい」という同じ目的から出ています。サラサラした軽い雪なら立てる、湿った重い雪が大量に降る予報なら寝かせたまま、ガラスとの間にカバーやタオルを挟んで凍りつきを防ぐ、という使い分けが現実的です。冬用ワイパーへの交換の考え方は、冬用ワイパーの記事にまとめています。
ドアは「濡れたまま」が凍る
同じJAFのテストでは、運転席のドアを濡らした車と濡らさない車を一晩置いて比べています。濡らさなかった車は約5kgの力で開いたのに対し、濡らした車は凍りついて、20kg以上の力をかけ続けてようやく開きました。
20kgは、2リットルのペットボトル10本分の重さです。それだけの力でドアを引っぱり続けることになり、JAFは、無理に開けるとドアや車体のゴム、ドアノブを壊すおそれがあるとしています。雨や雪の中を帰ってきた日は、停めたあとにドアの内側のゴムまわりの水気を拭いておくだけで、翌朝の手間が大きく変わります。
積む:前日に「確かめる」ところまでやる道具
JAFは、雪道を走る前に準備しておきたいものとして、スタッドレスタイヤを履いていてもタイヤチェーンとジャッキは必要だとしています。国土交通省も、スコップや砂などの冬用装備を積んでおくよう求めています。
| 道具 | 使う場面 | 前日に確かめること |
|---|---|---|
| タイヤチェーン | 雪が深い道、上り坂 | 自分のタイヤサイズに合うか。付け方を一度試しておく |
| ジャッキ | チェーンの装着やタイヤの交換 | 車に積んであるか、どこにあるか |
| スコップ・砂 | 朝の駐車場の雪かき、はまったとき | 車に積めるか(家に置いたままにしない) |
| スクレーパー・スノーブラシ | ガラスや屋根の雪と氷を落とす | 壊れていないか(伸び縮みする柄は特に) |
| 解氷スプレー | 凍ったガラスや鍵穴、ワイパー | 中身が残っているか |
| 軍手・長靴・懐中電灯 | チェーン作業、夜のトラブル | 懐中電灯の電池 |
| 毛布 | 車内で待つとき | 人数分あるか |
| ブースターケーブル | 寒さでバッテリーが上がったとき | 古いバッテリーなら電圧も確認 |
※JAF「雪道を走る前に準備しておきたいものとは?」「寒冷地で駐車する際の注意点」、国土交通省の大雪時の発表をもとに整理。
チェーンの付け方を「確かめる」と書いたのは、国土交通省の呼びかけが「チェーンの装着方法の事前確認」としているからです。暗くて寒い路肩で、手袋をしたまま説明書を読むのは想像以上に大変です。晴れた前日の明るいうちに一度付けてみるだけで、当日の作業時間はかなり変わるはずです。
JAFの機関誌サイト「JAF Mate Online」が紹介した会員約1万4,000人への調査では、冬の朝に後悔した準備不足の1位は、雪の少ない地域では「タイヤの準備不足」、雪の多い地域では「視界確保ツールの不備」でした。雪に慣れた地域の人でも、ガラスの氷を落とす道具でつまずいているということです。
当日の朝、出る前に見るところ
前日の準備をしていても、朝にもう一度確かめたいところがあります。
- マフラーの周り:雪でふさがったままエンジンをかけない。先に雪をどける
- ガラス・ライト・屋根の雪:前だけでなく、後ろや横のガラス、ライトの雪も落とす。屋根に残した雪は、ブレーキをかけたときに前のガラスへ滑り落ちることがある
- 靴の雪:JAFは、靴に雪が付いたままだとペダルの感覚が変わるとして、乗る前に払うよう勧めている
- 道路と天気の最新情報:前日に決めた「やめる基準」に当てはまっていないか
暮らし方別の考え方
ふだん雪の降らない地域で、数年に一度の大雪
いちばん準備が足りなくなりやすいのがこのケースです。冬用タイヤを持っていないなら、翌日は車を出さないと前日のうちに決めてしまうのが確実です。車を使わなくても、給油と充電、ガラスのカバー(なければ古い毛布やシート)、ドアの水気の拭き取りまでしておけば、雪がやんだあと必要になったときに慌てずに済みます。
雪国で暮らしていて、毎冬のこと
タイヤや道具はそろっていても、寒冷地用のウォッシャー液の残り、スクレーパーやスノーブラシの傷み、解氷スプレーの中身といった「消耗品」が抜けやすいところです。JAF Mateの調査で雪国の後悔の1位が視界確保の道具だったことを思い出して、予報が出たら一度点検しておきます。重い雪の予報の夜は、ワイパーを立てるかどうかもその都度考えます。
翌日どうしても車で出なければならない
前日のうちに満タンにし、チェーンを積んで付け方を確かめ、出発と帰りの時刻を雪の強まる時間帯からずらす計画を立てます。高速道路と並行する国道が同時に止まることもあるので、「通行止めならこの時点で引き返す」という基準も決めておきます。毛布と飲み物、充電器を積んでおけば、途中で長く待つことになっても耐えやすくなります。
屋外の月極駐車場や、屋根のない場所に停めている
停める場所は選べないことが多いので、「覆う」に力を入れます。ガラスのカバーをかけ、ドアの水気を拭き、朝の雪かき用のスコップを車ではなく家に置いておく(車が埋もれると取り出せないため)か、すぐ取り出せる場所に積んでおきます。隣の車との間に雪かきの場所がない駐車場なら、早めに起きて作業の時間を見込んでおきましょう。
雪が降る前の夕方がいちばん長い
大雪の日の朝は、何をするにも時間がかかります。給油に行く、ガラスの氷を溶かす、ドアを開ける、チェーンを付ける。どれも前の晩なら数分で済むことが、雪が積もった朝には何倍もの手間に変わります。予報で「警報級の可能性」という言葉を見たら、その日の夕方を準備にあててください。いちばん効くのは、出かけない予定に変えることです。
情報源
- 気象庁「大雪に関する情報について」 jma.go.jp
- 気象庁「『2週間気温予報』と『早期天候情報』について」 jma.go.jp
- 気象庁「大雪に対する国土交通省発表」(2025年12月2日) jma.go.jp
- 国土交通省「大雪に対する国土交通省緊急発表」 mlit.go.jp
- JAF「寒冷地での駐車時は窓やドアの凍結に注意!(JAFユーザーテスト)」 jaf.or.jp
- JAF「寒冷地で駐車する際の注意点」 jaf.or.jp
- JAF「雪道を走る前に準備しておきたいものとは?」 jaf.or.jp
- JAF「雪で埋まった場合の一酸化炭素中毒の危険性とは?」 jaf.or.jp
- JAF Mate Online「雪の朝に後悔しない! 出発5分前の絶望を防ぐ『前夜の仕込み』とプロの時短術」(2026年1月29日) jafmate.jp
- 群馬県「大雪への備え」 pref.gunma.jp
- くるまのニュース「冬の光景『ワイパー立て』実はダメだった!?」(2026年1月1日) kuruma-news.jp
- 乗りものニュース(関越自動車道の大規模滞留の時系列) trafficnews.jp

