
「屋根の雪くらい、走っているうちに風で飛んでいくでしょ」。朝の忙しい時間に、ガラスの雪だけ払って出かけたくなる気持ちはよく分かります。でも、屋根に積もった雪は、走りながら少しずつ消えてくれるとは限りません。首都高速道路やNEXCO東日本は、冬になると「屋根の雪を落としてから走ってほしい」と呼びかけています。屋根に雪を積んだまま走ると何が起きるのか、そして車を傷めずに下ろすにはどうすればいいのかを整理します。
屋根の雪で起きる3つのこと
| どこに落ちるか | きっかけ | 起きること |
|---|---|---|
| 自分の車の前(フロントガラス) | ブレーキ、暖房で屋根が温まったとき | 雪がずり落ちてきて前が見えなくなる。雪が重いとワイパーで払えないこともある |
| 後ろの車 | スピードが上がったとき、段差 | 雪が塊で飛んで、後ろの車のガラスに当たる |
| 道路の上 | 走っている途中 | 落ちた雪で後ろの車が急ブレーキや車線変更をする。残った雪が踏み固められて凍る |
※首都高速道路の利用者への呼びかけ、NEXCO東日本の広報の説明(いずれもくるまのニュースの報道)をもとに整理。
3つのうち、自分の身にいちばん直接かかわるのは1つめです。信号や渋滞でブレーキを踏んだ瞬間、屋根の雪が前へ滑って、フロントガラスを一気にふさぐことがあります。走っている最中に、急に前が見えなくなるわけです。
残りの2つは、後ろを走る人にとっての危険です。NEXCO東日本は、屋根に雪が積もったまま走ると雪が塊になって落ちることがあり、後ろの車にとって大変危険だと説明しています。高く積もった雪が高速道路の上に落ちて、後ろの車が乗り上げるおそれも指摘しています。
屋根の雪は「いつか飛んでいくもの」ではなく、「いつ、どこに落ちるか分からない重い荷物」です。
「走っていれば、そのうち落ちるのでは?」
実際に、少し走っただけで屋根の雪がなくならなかった、という経験をした人は多いはずです。それなのに、ある瞬間に急に落ちてくる。この食い違いには理由があります。
積もった雪は、さらさらの粉のまま屋根に乗っているわけではありません。時間がたつと自分の重みで押し縮められて、雪どうしがくっついた「しまり雪」になります。表面がくっついて1枚の板のようになった雪は、風を受けても少しずつは飛ばず、屋根にしがみついています。
ところが、車を走らせて暖房を入れると、屋根は車内の熱で少しずつ温まります。屋根と雪のあいだがゆるんだところに、ブレーキやスピードの変化が加わると、くっついたままの大きな塊として一度に動きます。少しずつ消えるのではなく、まとめて落ちるのです。
では、その塊はどのくらいの重さなのでしょうか。雪の重さは雪の状態によって大きく違います。
| 雪の状態 | 1m³あたりの重さ(目安) | 屋根に20cm積もった場合(計算例) |
|---|---|---|
| 新雪(積もったばかり) | 約30〜150kg | 約12〜60kg |
| しまり雪(押し縮められた雪) | 約150〜500kg | 約60〜200kg |
※1m³あたりの重さは新潟県の資料(新雪30〜150kg、しまり雪150〜500kg)による。Forbes JAPANの記事では新雪50〜150kg・押しつぶされた雪150〜500kgとされ、しまり雪の幅は一致しています。右の列は「屋根の面積を約2m²」と仮定した編集部の計算例(2m²×0.2m=0.4m³)で、実際の重さは車の大きさや雪の質で変わります。
積もったばかりの軽い雪でも、20cmなら数十kg。しまった雪なら、大人1人から3人分ほどの重さになることもあります。これだけの重さのものが、ブレーキのたびに前へずれようとし、スピードが出れば後ろへ飛ぼうとする。そう考えると、首都高やNEXCOがわざわざ呼びかける理由が見えてきます。
高速道路では特に注意が必要です。一般道よりスピードが出ているぶん、落ちた雪の塊を後ろの車がよけきれないことがあるからです。
屋根のほかに、雪を落としておきたい場所
首都高は、屋根だけでなく、ガラスやサイドミラーに積もった雪も落としてから利用するよう呼びかけています。屋根を下ろすついでに、次の場所も見ておきましょう。
- すべての窓ガラス:前だけでなく、横と後ろも。車線変更や右左折のときに必要になります。
- サイドミラー:雪が付いていると、後ろからの車が見えません。
- ライトのまわり:前と後ろのライトがふさがっていると、自分が見えにくいだけでなく、周りから見つけてもらいにくくなります。
- タイヤハウス(タイヤの上のすき間):NEXCO東日本・中日本は、ここに詰まった雪がハンドルの動きに影響して事故の原因になるとして、こまめに落とすよう呼びかけています。
- マフラーの出口:雪でふさがったままエンジンをかけると、排気ガスが車内に入るおそれがあります。エンジンをかける前に確認します(くわしくは雪道で立ち往生したら、車の中でどう過ごす?)。
- 運転支援のカメラやセンサーのまわり:位置は車によって違うので、取扱説明書で場所を確かめておくと、雪を払うときに迷いません。
車を傷めない雪の下ろし方
順番は「上から下」
屋根の雪を最後に下ろすと、せっかくきれいにしたガラスの上にまた落ちてきます。屋根→窓ガラス→ライトやミラー→タイヤハウスやマフラーのまわり、と上から順に進めると、二度手間になりません。
雪は車の「横」へ落とす
下ろした雪は、車の前や後ろではなく、横へ落とすのが基本です。前に落とすと発進のじゃまになり、後ろに落とすとマフラーの出口をふさぐおそれがあります。どこに雪を集めるかを先に決めておくと、作業がスムーズです。
道具はプラスチックのスノーブラシ
金属のスコップはボディを傷つけやすいので、車の上の雪にはプラスチック製のスノーブラシや雪下ろし用の道具を使います。ミニバンやSUVのように屋根が高い車は、柄の長さを変えられる伸縮式のブラシがあると、屋根の真ん中まで届きやすくなります。
一気にこすり落とさない
凍って張り付いた雪を力まかせにかき落とすと、塗装やガラスに傷がつくことがあります。乗りものニュースの解説では、次のような「二段階」の下ろし方が紹介されています。
- まず、上のほうの柔らかい雪だけを、道具がボディに当たらないように下ろす(ボディに薄く雪を残す)。
- エンジンをかけてエアコン(暖房)を入れ、熱で雪がゆるんでから、残りをブラシややわらかい布で落とす。凍った部分には解氷スプレーを使う。
お湯をかけるのはやめておきましょう。冷えたガラスに急に熱いお湯がかかると割れるおそれがあり、残った水がまた凍って、かえって雪や氷が落としにくくなります。
時間の見積もりも準備のうち
屋根まで含めて雪を下ろすには、思っているより時間がかかります。雪の朝は、いつもより早く起きて「雪下ろしの時間」を予定に入れておくのが確実です。前の晩のうちにガラスにカバーをかけておくなど、前日にできる準備は大雪の予報が出たら前日にやることでまとめています。
こんなときは特に気をつけたい
雪国で毎朝、雪を下ろす人
毎日のことなので、つい屋根だけ省きたくなります。でも、何日も重なってしまった雪ほど重く、塊で落ちやすくなります。こまめに下ろしたほうが1回の作業も軽く済みます。スノーブラシは車に積みっぱなしにしておくと、出先の駐車場でも困りません。
雪がめったに降らない地域の人
首都高が呼びかけたのも、首都圏で大雪が予想されたときでした。雪に慣れていない地域ほど、スノーブラシを持っていない、時間を見ていない、ということが起きがちです。大雪の予報が出たら、まず「雪を払う道具があるか」を確かめておきましょう。
スキー場や雪山の駐車場から帰る人
遊んでいるあいだに、屋根にたっぷり雪が積もっていることがあります。帰りは高速道路を走ることが多いので、駐車場を出る前に屋根まで下ろしておくことが大切です。雪山で困りやすい場面はスキー・雪山ドライブの準備で紹介しています。
ミニバンやSUVなど背の高い車に乗る人
屋根が高いと、真ん中の雪が見えず、手も届きにくくなります。見えないぶん「残っていても気づかない」のが落とし穴です。伸縮式のブラシを用意し、反対側からも払うと取り残しが減ります。足場にするものは、すべりにくく安定したものを選んでください。
屋根の雪は、運転席からは見えません。見えないから、つい忘れてしまいます。
出かける前の数分で下ろした雪は、走っている途中で落ちてくることはありません。
情報源
- くるまのニュース「首都高『屋根の雪落として』異例の呼びかけ!?」(2025年3月4日、首都高速道路の利用者へのお願い・NEXCO東日本/中日本の呼びかけを紹介) kuruma-news.jp
- くるまのニュース「走行中、急に『前が見えない!怖い!』 雪乗せ車による『雪爆弾』が危ない!」(2022年1月4日、NEXCO東日本広報のコメント) kuruma-news.jp
- 乗りものニュース「車を傷めない『雪下ろし』とは コツは“二段階下ろし”」(2023年1月28日) trafficnews.jp
- 新潟県「雪の種類と重さ」に関する資料(新雪・しまり雪・ざらめ雪の密度) pref.niigata.lg.jp
- 新潟県「雪の変化(新雪・しまり雪・ざらめ雪)」 pref.niigata.lg.jp
- Forbes JAPAN(2023年1月26日、雪の種類ごとの重さを紹介) forbesjapan.com

