
「セルフのほうが安いのはわかるけど、実際いくら違うんだろう? たまにはフルサービスでもいいのかな」。ガソリンスタンドの看板を見比べながら、そう迷ったことがある人は多いはずです。先に答えを言うと、セルフとフルサービスの価格差は1Lあたり数円〜十数円で、ふつうに車を使う人なら1年で数千円程度の差になることが多い、というのが調査や報道から見えてくる姿です。ただし、その差は店や地域でばらつきがあり、フルサービスのほうが安い店もあります。この記事では、価格差の実際と、その差で「何を買っているのか」を整理し、自分はどちらを使えばいいかの考え方をまとめます。
まず違いを一覧で
セルフとフルサービスの違いは、ガソリンの値段だけではありません。給油のあとに誰が何をするのか、という「作業の分担」が違います。
| 項目 | セルフ | フルサービス |
|---|---|---|
| ガソリンの値段 | 安い傾向(ただし店による) | 1Lあたり数円〜十数円高いことが多い |
| 給油・支払い | 自分で行う | スタッフが行う。車から降りなくてよい |
| 窓拭き・ごみ捨て | 自分で行う(タオルなどが置いてある店が多い) | スタッフが行うことが多い |
| 簡単な点検 | 自分で気にかける | 空気圧やワイパーなどを見てくれることがある(商品の提案を兼ねる場合も) |
| 営業時間 | 24時間営業の店も多い | 夜間は閉まる店も多い |
| 混雑時 | 空いたレーンにすぐ入れる | スタッフの誘導を待つことがある |
※WEB CARTOP(2026年7月)、くるまのニュース(2023年8月)、乗りものニュースの解説をもとに編集部が整理しました。サービスの内容は店によって異なります。
フルサービスの割増分は、ガソリンそのものではなく「人にやってもらう作業」の値段です。
くるまのニュースが取材したセルフ店の店長の話では、14レーンほどの店で、セルフなら3〜4人で回せるのに対し、フルサービスでは日中7〜8人が必要になるといいます。その人件費の分が、ガソリンの単価に上乗せされている、という説明です。
価格差は、実際いくら?
セルフとフルサービスの価格差について、国がまとめて公表している数字は見当たりません。そのため、ここでは自動車メディアの調べた例をいくつか並べます。
| 調べた時期・場所 | フルサービスとセルフの差(レギュラー、1Lあたり) | 出典 |
|---|---|---|
| 2022年11月・広島県の平均 | フルが約16.0円高い | ベストカーWeb |
| 2022年11月・新潟県の平均 | フルが約12.6円高い | ベストカーWeb |
| 2022年11月・東京都の平均 | フルが約6.1円高い | ベストカーWeb |
| 2022年11月・福岡県の平均 | フルが約1.5円高い | ベストカーWeb |
| 2022年11月・秋田県の平均 | セルフが約0.5円高い | ベストカーWeb |
| 2023年2月・東京都の最安店どうし | フルが8円高い | ファイナンシャルフィールド(gogo.gsの価格から) |
| セルフとフルを併設した都内の店 | フルが約2円高い | 乗りものニュース(2019年7月) |
※ベストカーWebは、全国10都道府県のセルフとフルサービスの平均価格を比べています(2022年11月23日時点)。表はそのうち5つを抜き出したものです。いずれも数年前の時点の例で、今の価格差とは異なる可能性があります。
2026年7月のWEB CARTOPの解説では、フルサービスはセルフより「5〜15円程度高く」設定されていることが多い、と紹介されています。表の例とあわせると、差はおおむね1Lあたり数円〜十数円、ただし地域や店によって大きく違うというのが実態に近そうです。
ちなみに、資源エネルギー庁の調査によるレギュラーガソリンの全国平均は、2026年8月時点で1Lあたり170円前後と報じられています。1Lあたり5円の差は、その約3%にあたります。
「セルフなのに、フルサービスより高い店があるのはなぜ?」
表を見て、こう思った人もいるかもしれません。
「セルフは人件費が安いんだから、必ず安くなるはずでは?」
実は、ガソリンの値段は「セルフかフルか」で決まるのではなく、それぞれの店が、仕入れの値段や近くの店との競争を見ながら決めています。ファイナンシャルフィールドの記事でも、地域や石油会社によっては、セルフのほうが有人の店より高い場合もあると指摘されています。
たとえば、幹線道路沿いで安さを競っているフルサービスの店と、競争相手の少ない場所にあるセルフの店を比べれば、フルのほうが安いことも十分ありえます。2022年11月の秋田県の平均でセルフがわずかに高かったのも、こうした地域の事情が表れたものと考えられます(調査記事は理由まで分析していないため、ここは編集部の推測です)。
もう一つ、地域によっては、そもそも選ぶ余地がないこともあります。資源エネルギー庁によると、全国のガソリンスタンドは2022年度末で2万7,963か所と、2002年度の5万か所以上から4割以上減りました。2021年度末の時点で、町の中のスタンドが3か所以下の「SS過疎地」は348市町村あります。
セルフのスタンドは増えていて、日本エネルギー経済研究所 石油情報センターの調査では、2024年3月末に全国1万829店、全スタンドの39.5%になりました(2022年3月末は1万608店・37.3%)。それでも、店の数で見ればまだ4割ほどです。
「セルフだから安い」と決めつけず、いつも使う道沿いの店の値段を、実際に見比べるのがいちばん確実です。
1年でいくら違う? 走る距離で換算
1Lあたり数円の差が、1年でどれくらいになるのかを計算してみます。
| 1年に走る距離 | 使うガソリン(燃費15km/L) | 差が1Lあたり5円なら | 差が1Lあたり10円なら |
|---|---|---|---|
| 5,000km(週末に買い物やレジャー) | 約333L | 約1,700円 | 約3,300円 |
| 10,000km(ほぼ毎日使う) | 約667L | 約3,300円 | 約6,700円 |
| 15,000km(毎日の長めの通勤など) | 1,000L | 5,000円 | 10,000円 |
※仮定に基づく計算例です。燃費を15km/L、セルフとフルサービスの価格差を1Lあたり5円または10円としています。計算:5,000km÷15≒333.3L、×5円≒1,667円、×10円≒3,333円。10,000km÷15≒666.7L、×5円≒3,333円、×10円≒6,667円。15,000km÷15=1,000L、×5円=5,000円、×10円=10,000円。実際の差は、車の燃費、走り方、店ごとの価格で変わります。
1回の給油で見ると、40Lを入れて1Lあたり5円の差なら200円、10円の差なら400円です。毎回フルサービスを使い続けても、多くの人にとっては「年に数千円、たくさん走る人で1万円前後」という規模になります。
この金額をどう感じるかは人それぞれです。ただ、ガソリン代を抑えたいなら、セルフかフルかだけでなく、店の会員価格やアプリのクーポンも効いてきます。WEB CARTOPの解説では、会員価格とクーポンを組み合わせると店頭価格より1Lあたり3〜5円ほど安くなる場合もあると紹介されています。
「どの店で、どの払い方で入れるか」は、「セルフかフルか」と同じくらい値段に効きます。
フルサービスの割増で、何を買っている?
乗りものニュースが2020年1月に行った読者アンケート(1,060人)では、「どちらを優先して探すか」という質問に、68.9%がセルフ、5.9%がフルサービス、24.5%が「どちらでもよい」と答えました。
| セルフを選ぶ理由(複数回答) | 割合 | フルサービスを選ぶ理由(複数回答) | 割合 |
|---|---|---|---|
| 値段が安い | 77.9% | 車を降りなくてよい | 77.8% |
| 自分で給油できて楽しい | 40.7% | 窓を拭いてくれる | 47.6% |
| 店員と話さなくてよい | 33.0% | ごみを捨ててくれる | 28.6% |
| セールスを受けにくい | 31.6% | タイヤの空気圧を確認してくれる | 22.2% |
※乗りものニュース「ガソリンスタンド選び『セルフ派』多数か」のアンケート結果から上位を抜き出しました。フルサービス派はほかに「道路に出るときに誘導してくれる」12.7%、「エンジンルームを点検してくれる」7.9%など。
フルサービスを選ぶ人がいちばん重視しているのは、「車を降りなくてよい」ことです。雨の日、真冬の朝、小さな子どもを乗せているとき、体が思うように動かないとき。そんな場面では、給油と窓拭きと支払いを座ったまま済ませられることに、数百円以上の価値を感じる人がいるのも自然なことです。
一方、セルフ派の3割ほどは「セールスを受けにくい」ことを理由に挙げています。フルサービスの点検は、オイルやタイヤ、バッテリーなどの交換をすすめるきっかけを兼ねていることもあります。点検で何か言われたら、その場で決めずに「今日は大丈夫です」と伝え、気になる点は、いつもの整備工場や販売店で見てもらう、という使い方でもかまいません。
フルサービスは「割高なガソリン」ではなく、「降りずに済む時間と、ついでの目」を買うサービス。必要な日にだけ買う、という考え方もできます。
セルフで、自分が引き受けること
セルフを選ぶということは、スタッフがしてくれていた作業を、自分で引き受けるということでもあります。お金の差より、こちらのほうが大事な場面もあります。
給油の場面で気をつけること
セルフのスタンドでは、音声案内や掲示で次のような注意が呼びかけられています。どれも、ガソリンの気化したガスに火がつくのを防ぐためのものです。
- 給油口を開ける前に、静電気除去シートに触れる:体にたまった静電気の火花で、ガソリンの蒸気に火がつくおそれがあります。空気が乾く秋から冬は特に気をつけたい時期です。消防庁が紹介した事例には、シートに触れずに給油を始め、途中で歩き回るうちに服がこすれて帯電が増え、火花から引火したケースもあります。給油を始めたら、その場を離れたり車に出入りしたりしないほうが安心です。
- エンジンを止めて、火の気を近づけない:エンジンをかけたままの給油や、給油中の喫煙はしないようにしましょう。
- 自動で止まったら、継ぎ足さない:「もう少し」と継ぎ足すと、ガソリンがあふれたり、燃料タンクの部品を傷めたりするおそれがあります。
- キャップの閉め忘れを確かめる:フルサービスのスタッフが「キャップOK」と声をかけてくれるのは、この確認のためです。セルフでは自分で確かめます。
わからないことがあれば、セルフの店にもスタッフがいます。インターフォンなどで呼べば対応してもらえます。
燃料の種類を間違えない
セルフでいちばん気をつけたいのが、燃料の入れ間違いです。特に、ガソリン車に軽油、ディーゼル車にガソリンを入れてしまうと、修理に大きなお金がかかることがあります。レンタカーや家族の車など、乗り慣れない車のときほど注意が必要です。詳しくはガソリンの入れ間違い、実際どうなる?で整理しています。
「見てもらう機会」が減る分を補う
フルサービスに通っていた人がセルフに切り替えると、タイヤの空気圧やワイパーを誰かに見てもらう機会がなくなります。セルフの店でも、空気入れを自由に使えるところは多くあります。月に1回、給油のついでに空気圧を確かめる、と決めておけば、フルサービスの「ついでの目」を自分で取り戻せます。空気圧の測り方はタイヤの空気圧は月1回でいい?を参考にしてください。
あなたはどっち? 4つのパターン
毎日の通勤でたくさん走る人
給油の回数が多いほど、単価の差が効いてきます。年1万5,000km走るなら、1Lあたり10円の差で年1万円前後になる計算です。ふだんはセルフや会員価格の安い店を決めて入れ、空気圧のチェックを給油のついでの習慣にすると、お金と手入れの両方を押さえられます。
週末に少し乗るくらいの人
年5,000km程度なら、差は年に数千円以内に収まることが多いはずです。値段だけで店を選ぶより、家から近い、入りやすい、空いている、といった使いやすさで選んでもかまいません。たまにフルサービスで窓を拭いてもらい、気になるところを聞いてみる、という使い方も十分ありです。
セルフの給油に不安がある人
セルフに慣れていない人、体の都合で車の乗り降りが大変な家族がいる人は、無理にセルフにこだわる必要はありません。数百円で、降りずに安全に給油が済むなら、それは立派な選択です。セルフを試すなら、スタッフが近くにいて、空いている時間帯から始めると安心です。
雪の多い地域や、悪天候の日が多い人
冬の朝や雨の日は、車を降りること自体が負担になります。ふだんはセルフ、天気の悪い日や、窓の汚れがひどいときだけフルサービス、と使い分けるのも一つの方法です。冬の前には、ワイパーや窓の状態を見ておくと、雪道でも視界を保ちやすくなります(ワイパーゴムはいつ交換?)。
選ぶ基準は「1Lの値段」と「その日の自分」
セルフとフルサービスの差は、多くの人にとって年に数千円ほどです。安く入れたいなら、セルフかどうかより、いつも通る道で実際に安い店と、得になる払い方を見つけるほうが効きます。
そのうえで、雨の日や疲れている日、家族を乗せている日には、降りずに任せられるフルサービスがある。どちらが正解というより、その日の自分に合うほうを選べばいい、ということです。
ガソリンを入れる数分は、愛車の様子を見られる数少ない時間でもあります。セルフなら自分の目で、フルサービスならスタッフの目で。どちらを選んでも、その数分を車のために使えれば、損はしていません。
情報源
- WEB CARTOP「給油速度まで違うってマジ!? ガソリンスタンドの『セルフ』と『フルサービス』のココが異なるポイント」(2026年7月3日) webcartop.jp
- くるまのニュース「セルフ式GSは『ガソリン価格が安い』噂はホント? フルサービス式と何が違う?」(2023年8月20日) kuruma-news.jp
- ベストカーWeb「実は4割弱しかないセルフスタンド!! 店員が給油するスタンドよりどんだけ安いのか?」(2022年12月4日) bestcarweb.jp
- ファイナンシャルフィールド「『セルフ』VS『有人』ガソリン代は変わらない? 安く抑えるための方法も紹介」(2023年3月15日、2025年9月26日更新) financial-field.com
- 乗りものニュース「ガソリンスタンド選び『セルフ派』多数か 『フルサービス派』それぞれの選ぶ理由とは」(2020年) trafficnews.jp
- 乗りものニュース「ガソリンスタンド、『セルフ』『フルサービス』併設の利点は? 同じ店内で価格差も」(2019年7月26日) trafficnews.jp
- くるまのニュース(日本エネルギー経済研究所 石油情報センター「セルフSS出店状況調査結果」を紹介、2025年7月3日) kuruma-news.jp
- nippon.com Japan Data(資源エネルギー庁のデータによる給油所数・SS過疎地の推移) nippon.com
- carview!(資源エネルギー庁 石油製品価格調査、2026年8月17日時点のレギュラー全国平均169.8円) carview.yahoo.co.jp

