
「e-POWERって、ハイブリッドなの? それとも電気自動車の仲間?」——日産のノートやセレナ、エクストレイルに使われている「e-POWER」は、トヨタやホンダのハイブリッドと同じく、ガソリンを入れて走る車です。コンセントで充電することもありません。それでも、乗り味や得意な道ははっきり違います。違いを生んでいるのは、エンジンにどんな仕事をさせているか、です。この記事では、各社の公式の説明とカタログ燃費をもとに、3つの方式の違いと、「e-POWERは高速が苦手」と言われる理由、それがお金にするとどのくらいの差なのかを整理します。
違いは「エンジンがタイヤを回すことがあるか」
| 方式 | エンジンの仕事 | タイヤを回すもの | 主な車 |
|---|---|---|---|
| 日産 e-POWER | 発電だけ | いつもモーター | ノート、セレナ、エクストレイルなど |
| ホンダ e:HEV | ふだんは発電。高速で巡航するときはタイヤを直接回す | ふだんはモーター、高速巡航はエンジン | フィット、ヴェゼル、ステップワゴンなど |
| トヨタのハイブリッド(THS) | 力を「タイヤを回す分」と「発電する分」に分ける | エンジンとモーターの両方 | アクア、プリウス、ノア/ヴォクシーなど |
※e-POWERは日産公式の技術解説(エンジンは発電専用でタイヤを直接駆動しない、大出力モーターで100%駆動)、e:HEVはホンダ公式のフィットの性能ページ(EV・ハイブリッド・エンジンの3モード、高速巡航時にエンジンと車輪を直結)による。THSはくるまのニュース(2020年11月25日)・モーターファンの解説(動力分割機構でエンジンの力を駆動と発電に振り分ける)による。
e-POWERのエンジンは、いわば車に積んだ発電機です。エンジンが回してできた電気でモーターが走り、余った電気は電池にためます。タイヤとエンジンは機械的につながっていません。
ホンダのe:HEVも、ふだんの走り方はe-POWERとよく似ています。違うのは、高速道路を一定の速さで走るときだけ、エンジンとタイヤをつないで、エンジンの力で直接走れることです。トヨタのTHSは、遊星歯車を使った「動力分割機構」で、エンジンの力の一部をそのままタイヤに、残りを発電に回します。
3つとも「ガソリンで走るハイブリッド」ですが、エンジンの使い方が違います。e-POWERは、ガソリンで発電しながら走る電気自動車に近い方式です。
なぜ「e-POWERは高速が苦手」と言われるのか
電気を作ってモーターを回すやり方は、発進や低い速さでの加速が得意です。モーターは回り始めから大きな力を出せるうえ、エンジンは効率のいい回転数を選んで発電できます。日産は、走り出しからモーターの力が出る反応のいい走りと、効率のいい回転数で発電することによる燃費の良さを、e-POWERの特長として挙げています。
一方で、高速道路を一定の速さで走り続けると、必要な力が大きく、電池の電気だけではまかなえません。e-POWERはずっとエンジンで発電し続けることになります。元エンジニアの吉川賢一氏はベストカーWebのコラム(2025年3月)で、高速では常に発電が必要になるため燃費が伸びにくく、どの方式も高速では燃費が落ちるが、落ち込みがいちばん大きいのはe-POWERだと書いています。
e:HEVやTHSは、高速で巡航するとき、エンジンの力をそのままタイヤに伝えられます。いったん電気に変えてからまたモーターで力に戻す、という手間を省ける分、高速では有利になりやすい、というわけです。
カタログ燃費で比べると、差は数%
では、実際にどのくらい違うのでしょうか。同じくらいの大きさのコンパクトカーで、各社が公表している道路別の燃費(WLTCモード)を並べてみます。
| 車(方式) | 総合 | 市街地 | 郊外 | 高速道路 | 郊外を100としたときの高速道路 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日産 ノート X・2WD(e-POWER) | 28.4km/L | 28.3km/L | 30.6km/L | 27.1km/L | 約89 |
| トヨタ アクア Z・2WDほか(THS) | 33.6km/L | 33.1km/L | 35.7km/L | 32.5km/L | 約91 |
| ホンダ フィット e:HEV X・FF(e:HEV) | 29.1km/L | 28.8km/L | 30.2km/L | 28.6km/L | 約95 |
※ノートは日産公式の主要諸元表(2026年8月版)、アクアはトヨタ公式の性能ページの注記(2026年7月の改良後の値。総合33.6km/Lの内訳)、フィットはホンダ公式の性能ページによる。アクアの値は、改良前後の諸元表を比べた記事の数字とも一致。「郊外を100としたとき」は編集部の計算(例:ノート 27.1÷30.6≒0.886)。車の大きさや重さ、タイヤが違うため、車どうしの燃費の高い低いは方式だけでは決まりません。ここで見ているのは、それぞれの車の中で、郊外から高速道路に移ったときにどれだけ燃費が落ちるかです。
確かに、高速道路で落ちる割合はe-POWERのノートがいちばん大きく、e:HEVのフィットがいちばん小さくなっています。順番は、言われているとおりです。ただ、差は数%にとどまります。
「苦手」と言われるのに、カタログの差が小さいのはなぜ?
「高速が苦手と聞いていたのに、思ったより差がない」と感じた人もいるでしょう。理由のひとつは、カタログの「高速道路モード」で想定している速さにあります。
日本で使われているWLTCモードの高速道路モードは、最高でも時速97.4kmまでの走り方です。国際的なWLTCには時速130km台まで出す「超高速」の区間がありますが、日本では対応する道路が少ないことなどから、この区間は燃費の計算に入っていません(ベストカーWeb・くるまのニュースの解説による)。
つまり、カタログの数字が見ているのは「時速100km弱まで」の高速走行です。実際の高速道路で時速100km前後、あるいはそれ以上で長く巡航すると、エンジンが発電し続ける時間が長くなり、カタログより差が開くと感じる人がいても不思議ではありません。夏や冬はエアコンの電気もエンジンの発電でまかなうことになり、これも燃費を押し下げると前出のコラムは指摘しています。
カタログの差が小さいのは、カタログの「高速」が日本の高速道路の実際より少し遅い速さで測られているから、とも言えます。
お金に換えると、1万kmで数千円の差
それでは、この落ち込みは燃料代でどのくらいになるのでしょうか。1年に1万kmを、すべて郊外モードの燃費で走った場合と、すべて高速道路モードの燃費で走った場合を比べてみます。
| 車(方式) | 郊外の燃費で1万km | 高速道路の燃費で1万km | 差 |
|---|---|---|---|
| ノート(e-POWER) | 約327L・約5万5,600円 | 約369L・約6万2,700円 | 約7,200円 |
| アクア(THS) | 約280L・約4万7,600円 | 約308L・約5万2,300円 | 約4,700円 |
| フィット(e:HEV) | 約331L・約5万6,300円 | 約350L・約5万9,400円 | 約3,100円 |
※レギュラー1L 170円、カタログの各モードの燃費どおりに走ると仮定した計算例(ノート 10,000÷30.6≒326.8L、10,000÷27.1≒369.0L、差42.2L×170円≒7,174円。アクア 280.1Lと307.7L、差27.6L≒4,689円。フィット 331.1Lと349.7L、差18.5L≒3,149円)。実際の燃費は速さ、気温、エアコン、乗る人数で大きく変わります。
1年に1万kmを全部高速で走るという極端な仮定でも、方式による差は年に数千円です。高速道路をよく使う人ほどe:HEVやTHSが有利になるのは確かですが、車を選ぶ決め手になるほどの金額ではない人も多いはずです。
方式の違いは、燃料代より「走ったときの感じ」に出ます。
乗ってわかる違い
前出のコラムでは、ノートとフィットを比べて、次のような違いが挙げられています。
- e-POWER:アクセルを踏んだときの反応がよく、低い速さから力強くなめらかに加速する。アクセルを離すと強めに減速し、アクセルだけで速さを調節しやすい(ワンペダルに近い運転)。一般道を時速30〜60kmで流すと、カタログ燃費を上回ることもよくある。
- e:HEV:低い速さから高い速さまで滑らかで、高速巡航でエンジン直結に切り替わったときの感覚もよい。アクセルを離したときの減速の強さを調節できる。ただ、小型車では電動車らしい爽快な加速は感じにくい。
- e-POWERの高速:エンジンが発電のために回り続け、エンジン音が気になりやすい。
THSについては、エンジンとモーターの力を混ぜて走るため、燃費と効率の面で有利な方式だとベストカーWebの別のコラムでも解説されています。アクアの数字でも、高速道路での落ち込みはe-POWERとe:HEVの間でした。
どんな使い方に向いている?
街中の買い物や送り迎えが中心の人
e-POWERのよさがいちばん出る使い方です。信号の多い道での発進や加速の気持ちよさ、アクセルだけで速さを調節しやすい運転は、毎日の短い距離ほど実感しやすい部分です。燃費も、ゆっくり流れる一般道では伸びやすいとされています。
高速道路で長い距離を走ることが多い人
e:HEVやTHSのほうが、燃費の落ち込みは小さくなります。とくに時速100km前後で長く巡航する人は、試乗で高速道路を走らせてもらい、エンジン音の大きさも確かめておくと安心です。ただし、燃料代の差は上の計算のとおり年に数千円の程度なので、乗り味や車そのものの好みと合わせて決めてかまいません。
街中も高速も半分ずつくらいの人
方式よりも、車の大きさ、荷室、価格、装備で選んだほうが満足しやすいはずです。同じ方式でも車によって燃費は違います。気になる車同士で、道路別の燃費(市街地・郊外・高速道路)を並べて比べてみてください。
「電気自動車っぽい走り」を試してみたい人
e-POWERは、充電の手間なしにモーターだけで走る感覚を味わえる方式です。いきなりEVを買うのは不安だけれど、モーターで走る感覚は気になる、という人には入り口になります。ただし、家のコンセントで充電して走ることはできないので、燃料はあくまでガソリンです。
車ごとの具体的な選び方は、ノートの記事、エクストレイルの記事、e:HEVの道路別の燃費差を扱ったステップワゴンの記事で整理しています。
名前より、ふだん走る速さで選ぶ
e-POWER、e:HEV、THS。名前は違っても、どれもガソリンで走り、電気の力で燃費を稼ぐ車です。違うのは、エンジンにタイヤを回させるかどうか、その一点です。
だからこそ、選ぶときに考えたいのは方式の名前ではなく、自分がふだん何km/hで走っている時間が長いか。その答えが、向いている方式を教えてくれます。
情報源
- 日産自動車 技術紹介「e-POWER」 nissan-global.com
- 日産 ノート 主要諸元表(2026年8月版) nissan.co.jp
- Honda フィット 性能・安全(e:HEVの3つのモード、燃費) honda.co.jp
- トヨタ アクア 性能(燃費の注記) toyota.jp
- ベストカーWeb(ホンダe:HEVと日産e-POWER 元エンジニアが判定「長所」と「短所」、2025年3月5日) bestcarweb.jp
- ベストカーWeb(燃費も効率もプリウス式HVが有利!! なぜ日産e-POWERは市民権を得たのか) bestcarweb.jp
- くるまのニュース(なぜプリウスは変速機がない? ハイブリッドの仕組み、2020年11月25日) kuruma-news.jp
- ベストカーWeb(WLTCモードで何が変わる?) bestcarweb.jp
- くるまのニュース(WLTCモード燃費とは? JC08モードとの違い) kuruma-news.jp

