
秋の行楽シーズンに入り、10月10日〜12日の3連休をはじめ、遠出や帰省で長い距離を運転する機会が増える時期です。長距離ドライブの休憩は「2時間に1回」とよく言われますが、その数字にはどんな意味があるのか、疲れていなくても止まる必要があるのか。高速道路会社やJAF、居眠り運転の調査研究をもとに、休憩のタイミングと中身を整理しました。
目安は「2時間以内に1回」。2時間は“ノルマ”ではなく“上限”
NEXCO東日本は、長距離ドライブでは疲労や眠気による居眠り運転の危険が高くなるとして、「2時間に1回は休憩を」と呼びかけています。JAFも、長い距離を走るときは2時間に1回以上の休憩が取れるよう、余裕のあるドライブプランを立てることを勧めています。高速道路会社とJAFで、目安の数字は一致しています。
ただし、この「2時間」の読み方には注意が必要です。JAFの機関誌JAF Mateは、会員アンケートで休憩の頻度は「2時間に1回」が最も多かったと紹介したうえで、「2時間ごと」は必ず守るべきルールというより、「2時間以内には休む」という上限の目安と考えるべきだとしています。
「2時間たったら休む」ではなく、「2時間を超える前に、どこかで止まる」。
この差は小さく見えて、実際の運転ではけっこう大きく効いてきます。2時間を「そこまでは走り続けていい時間」と受け取ると、眠気や疲れが早く来た日にも「まだ1時間半だから」と走り続ける理由になってしまうからです。
なぜ「2時間」なのか——眠気には2時間前後の波がある
2時間という数字は、なんとなく決まった切りのいい数字というだけではありません。公益財団法人高速道路調査会が行った、高速道路での居眠り運転防止に関する調査研究では、居眠り運転の背景にある眠気を、周期の違う3つの生体リズムで整理しています。
| リズム | 周期 | 眠気が強まりやすいタイミング |
|---|---|---|
| サーカディアンリズム | 約24時間 | 午前2時〜4時ごろ |
| サーカセミディアンリズム | 約12時間 | 午前2時〜4時ごろと、午後2時〜4時ごろの1日2回 |
| ウルトラディアンリズム | 約2時間 | 高速道路の運転のような、変化の少ない単調な状況で表に出やすい |
※公益財団法人高速道路調査会「高速道路での居眠り運転防止に向けた効果的な対策に関する調査研究」の内容を紹介した各種資料より整理。
注目したいのは3つめの、約2時間周期のリズムです。景色がほとんど変わらず、速度も一定で、ハンドル操作も少ない高速道路の運転は、まさにこの「単調な状況」にあたります。「2時間に1回」という目安は、こうした眠気の波と付き合うための、現実的な区切りだと考えると納得しやすいはずです。
そしてこの表は、もう一つのことも教えてくれます。眠気の波は「運転を始めてから何時間か」だけでなく、「今が何時か」にも左右される、ということです。これについては後の章で詳しく見ます。
「まだ疲れていないのに、休む必要ある?」
2時間の目安を知っていても、実際に守れているかというと、話は別です。JAF Mateが紹介しているJAF会員へのアンケートでは、「疲れを感じて休憩したほうがいいと思いながら、休憩を先延ばしにした経験がある」と答えた人が6割を超えていました。理由として挙がっていたのは、「目的地まであと少しだった」「早く着きたかった」「SA・PAが混雑していた」といったものです。
誰にでも覚えのある理由ばかりです。そして、ここに長距離ドライブの落とし穴があります。
高速道路調査会の調査では、高速道路を運転していて「眠くなった経験がある」ドライバーは約8割、そのうえ事故には至らないまでも「ヒヤリとした」経験がある人は全体の約半数にのぼりました。眠気や居眠りで実際に事故を起こした人も1%いたとされています。さらに、こうした眠気によるヒヤリや事故は、道路が空いているときや、緩やかな直線区間で多く起きていたと報告されています。
渋滞やカーブの多い道では、ブレーキやハンドル操作が続くので、体も頭もある程度は働いています。ところが、空いていて走りやすい直線ほど、運転は単調になり、眠気が入り込みやすくなる。「順調に走れているから、このまま行こう」と思える状況こそ、眠気にとっては好条件だということです。
JAF Mateの記事で監修を務める交通心理学者の島崎敢・近畿大学教授は、疲れを感じる前に休憩を取ることが大切だと指摘しています。疲れや眠気を自覚してから止まろうとしても、次のSA・PAまで距離があったり、混雑していたりすれば、そのぶんだけ「眠いまま走る時間」が延びてしまいます。休憩は、疲れてから取る“手当て”ではなく、疲れる前に入れておく“予定”として考えるほうが、結果的に安全です。
なお、「居眠り運転は高速道路の問題」とも限りません。日本自動車研究所(JARI)が交通事故統計を分析した2023年の研究では、居眠り運転による死亡・重傷事故は、プロのドライバーより一般のドライバー、仕事より私用の移動、そして高速道路よりも一般道で多く起きていると報告されています。高速を降りてからの下道、帰り道の最後の数十分も、油断できない時間です。
時間帯によって、同じ2時間でも重みが違う
先ほどの表のとおり、眠気には「1日の中で強まりやすい時間帯」があります。睡眠研究者の三島和夫氏は、居眠り運転が起きやすい時間帯として、深夜から明け方にかけての5〜6時間ほど続く山と、午後2時〜4時ごろの鋭い山の2つを挙げています。JARIの分析でも、時間帯別に見た居眠り運転の割合は早朝4〜5時台がもっとも高く、次いで昼の12〜16時ごろが高かったとされています。
これを長距離ドライブの予定に重ねると、気をつけたい場面が見えてきます。
- 渋滞を避けて深夜や早朝に出発する:午前2時〜4時ごろや明け方は、体内時計の上でもともと眠気が強い時間帯です。2時間を待たずに眠くなることがあっても不思議ではありません。
- 昼食後、午後の運転:行楽地からの帰り道や、昼過ぎに出発する帰省は、午後2時〜4時ごろの眠気の山とちょうど重なりやすいタイミングです。
- 前の晩によく眠れていない:出発前夜の準備や、早起きで睡眠が短くなった日は、そもそもの眠気が強い状態で出発することになります。
こうした時間帯や条件では、「2時間以内」をさらに短めに見積もり、1時間半前後や、眠気を感じた最初のSA・PAで止まるくらいの感覚でちょうどいいと考えられます。
2時間は何km? SA・PAの間隔に置き換えてみる
「2時間に1回」と言われても、走っている最中に時計を気にし続けるのは現実的ではありません。そこで、時間を距離と休憩施設の数に置き換えてみます。
NEXCOによると、高速道路のPA(パーキングエリア)はおおむね15kmに1か所、SA(サービスエリア)はおおむね50kmに1か所を目安に設けられています(路線の特徴によって間隔は前後し、必ずしもこの距離ごとにあるわけではありません)。
| 項目 | 平均時速80kmの場合 | 平均時速100kmの場合 |
|---|---|---|
| 2時間で進む距離 | 約160km | 約200km |
| 1時間半で進む距離 | 約120km | 約150km |
| PA(約15km間隔)を1つ通過するまで | 約11分 | 約9分 |
| SA(約50km間隔)を1つ通過するまで | 約38分 | 約30分 |
| 2時間のあいだに通過するSAの数(目安) | 3つ前後 | 4つ前後 |
※SA・PAの間隔はNEXCOが示す設置の目安で、実際の間隔は路線によって異なります。距離・時間は、表の平均時速で走り続けたと仮定した編集部の計算例(160÷50=3.2、200÷50=4.0)で、渋滞や速度の変化によって実際は大きく変わります。
2時間走るあいだに、SAだけでも3〜4か所を通り過ぎる計算です。PAも含めれば、止まれる場所は10か所前後かそれ以上ある計算です。言いかえると、「2時間以内に休む」というのは、目の前を通り過ぎていく10か所ほどの休憩場所のどれか1つに入る、ということです。
この感覚を持っておくと、「混んでいるから次へ」という判断も変わってきます。次のPAまでは10分前後なので、混雑していたら一つ先へ回すのは現実的な選択肢です。ただし、そうやって「次、次」と先送りを重ねていくと、気づけば2時間を大きく超えていた、ということにもなりがちです。最初から「この区間のこのSAかPAで止まる」と、出発前に地図アプリなどで目星をつけておくと、先延ばしを防ぎやすくなります。
休憩の10〜15分で、何をするか
休憩は、止まる回数だけでなく、その間に何をするかでも効果が変わります。JAF Mateでは、10〜15分程度の短い休憩でも、体と頭をリフレッシュさせればその後の安全運転につながるとして、次のような過ごし方を勧めています。
- 車を降りて、5〜10分歩く:同じ姿勢で固まった体を動かし、血の巡りをよくします。
- 背伸びや軽いストレッチをする:首・肩・腰・ふくらはぎなど、座りっぱなしで縮こまっていた部分を伸ばします。
- 水分をとる:エアコンの効いた車内は乾燥しやすく、気づかないうちに水分が不足しがちです。
- 同乗者も一緒に体を動かす:運転していない人も長時間座っているのは同じです。
同じ記事では、目と脳も休ませるために、休憩中はできるだけスマートフォンを見ないことも勧めています。車内に座ったままスマートフォンで次の目的地を調べていると、止まってはいても、頭は運転中とあまり変わらない状態が続いてしまいます。
JAF Mateが行った別の検証(約400kmを2人のモニターが運転し、同じ回数・同じ時間の休憩を取って休憩中の過ごし方だけを変えたもの)でも、体を動かしたり食事の内容に気を配ったりしたモニターのほうが、到着時の自律神経の活動量が高い状態を保っていたと紹介されています。モニター2人の比較なので一般化はできませんが、「止まるだけでなく、どう過ごすか」が大事だという考え方を裏づける一例です。
眠気を感じたときは「20分の仮眠」
すでに眠気を感じている場合は、歩いたりコーヒーを飲んだりするだけでなく、短い仮眠がいちばん確実な対策です。JAFは、20分程度の仮眠を勧めています。深く眠ってしまうと目が覚めるまでに時間がかかるため、短めに抑えるのがポイントです。
カフェインとの組み合わせも効果的とされています。高速道路調査会の研究では、カフェインの摂取と10〜20分程度の短い仮眠を組み合わせる方法が、居眠り運転の対策として有効だとまとめられています。カフェインは飲んでから効き始めるまでに少し時間がかかるため、仮眠の直前にコーヒーなどを飲んでおくと、目が覚めるころに効き始める、という考え方です。JAFも、仮眠前のカフェインとの組み合わせで相乗効果が期待できるとしています。
仮眠から起きたら、すぐに走り出さず、軽く体を動かしたり顔を洗ったりして、眠気をしっかり覚ましてから運転を再開します。
片道400kmなら、休憩で増えるのは30分
「休憩を増やすと、到着が遅くなる」——休憩を先延ばしにする人の多くは、そう感じています。では実際、どれくらい遅くなるのでしょうか。高速道路が中心の片道400kmのドライブを例に、計算してみます。
| 走り方 | 運転している時間 | 休憩の合計 | 到着までの時間 |
|---|---|---|---|
| 休憩なしで走り切る | 5時間 | 0分 | 5時間 |
| 2時間ごとに15分休憩(2回) | 5時間 | 30分 | 5時間30分 |
| 2回の休憩のうち1回を20分の仮眠つき(計35分)に | 5時間 | 50分 | 5時間50分 |
※平均時速80kmで走り続け(400÷80=5時間)、出発から2時間後(約160km地点)と4時間後(約320km地点)に休憩すると仮定した編集部の計算例です。3行目は、2回目の休憩を「15分の休憩+20分の仮眠」の35分とした場合(15+35=50分)。実際の所要時間は、渋滞・速度・休憩場所の混雑などの条件で大きく変わります。
2時間ごとにきちんと休んでも、休憩なしと比べて増えるのは30分です。仮眠をはさんでも50分ほど。最後の1時間を眠気と戦いながら走ることと比べたら、この30分は高い出費ではないはずです。
しかも、休憩なしで5時間という走り方は、いま見たように、途中で必ず眠気の波をまたぐことになります。到着時間を正確に読みたいなら、むしろ休憩を最初から予定に組み込んでおくほうが、「どこかで突然止まらざるを得なくなる」よりも計画どおりに進みやすくなります。
自分のドライブに当てはめると
同じ「長距離ドライブ」でも、どこで休むのがいいかは、距離や出発時間、一緒に乗る人によって変わります。よくある4つのパターンで考えてみます。
片道2〜3時間の日帰り行楽
行きは順調なら2時間前後で着いてしまうので、「休憩なしで行けそう」と感じやすい距離です。ただ、連休の行楽地周辺は渋滞で時間が読めず、気づけば2時間を超えていることがよくあります。行きは1時間〜1時間半あたりで一度止まるつもりでいると余裕が生まれます。気をつけたいのは帰り道です。遊んで疲れた体で、昼過ぎから夕方にかけて走ることが多く、午後2時〜4時ごろの眠気の山や、日が傾く時間帯とも重なります。帰りは行き以上に、早めの休憩を意識しておきたいところです。
片道4〜6時間の帰省・遠出
上の計算例がそのまま当てはまるパターンです。出発前に、2時間を超えない位置でSAかPAを2〜3か所選んでおき、「ここで止まる」と決めておくのがおすすめです。家族で出かけるなら、休憩のたびに全員で車を降りて歩く習慣にしておくと、運転する人だけでなく、子どもや年配の家族の体の負担も軽くなります。
渋滞を避けて、深夜・早朝に出発する
道は空いていて走りやすい反面、眠気の面ではいちばん条件が厳しいパターンです。体内時計の上で眠気が強い時間帯に、空いた直線を一定の速度で走る。高速道路調査会の調査で眠気によるヒヤリが多かった「空いているとき」「直線区間」とも重なります。前の晩にしっかり眠ってから出発する、2時間を待たずに1時間〜1時間半で一度止まる、眠気を感じたら迷わず仮眠をとる。この3つを最初から決めておくと安心です。
運転を交代できる同乗者がいる
運転を交代できるのは、長距離ドライブではとても心強いことです。ただ、交代したから休憩はいらない、というわけではありません。運転を代わった人も、それまで助手席で長く座っていたことに変わりはないからです。交代するときは必ずSA・PAに入って、2人とも一度車を降り、歩いたり体を伸ばしたりしてから出発する、という形にしておくと、交代そのものが休憩の役割も果たしてくれます。
休憩は「疲れたら」ではなく「予定」に入れる
「2時間に1回」という数字は、守ればそれで安心という合格ラインではありません。眠気の波は、走った時間にも、時刻にも、前の晩の睡眠にも左右されます。そして、空いていて順調なときほど、眠気は静かにやってきます。
だからこそ、休憩は疲れてから考えるものではなく、出発前に地図を見ながら「ここで止まる」と予定に書き込んでおくもの。その30分が、遠出の一日を最後まで楽しいものにしてくれます。
情報源
- JAF Mate Online「長距離ドライブの休憩術6選|SA・PAで疲れをためないコツ」 jafmate.jp
- JAF「高速道路での居眠り運転を防止するための対策とは?」 jaf.or.jp
- JAF Mate Online「休憩中の行動で長距離運転時の疲労度が変わるのか調査」 jafmate.jp
- NEXCO東日本 ドラぷら「STOP!! 居眠り運転」 driveplaza.com
- NEXCO東日本 ドラぷら「サービスエリアとパーキングエリアの違いって何?」 driveplaza.com
- 公益財団法人高速道路調査会「高速道路での居眠り運転防止に向けた効果的な対策に関する調査研究(最終報告)」 express-highway.or.jp
- 東京海上日動スマートモビリティ「運転中に眠くなる原因と対策|居眠り運転を防止するためのポイント」 tokiomarine-smartmobility.co.jp
- 栗山あずさ・大谷亮「居眠り運転に関する交通事故統計データの分析」JARI Research Journal(2023年) jstage.jst.go.jp
- ナショナル ジオグラフィック日本版 三島和夫「居眠り運転をしやすい“魔の時間帯”」 natgeo.nikkeibp.co.jp

