
「眠くなってきた。とりあえずガムをかんで、窓を開けて、次のコンビニでコーヒーを買おう」――長い運転で、多くの人が一度はやっている眠気対策です。では、これらは本当に効いているのでしょうか。海外の運転シミュレーター研究や、NEXCOなど国内の呼びかけを並べてみると、答えは「効く。ただし、効き方と使いどころがまったく違う」でした。この記事では、コーヒー・仮眠・ガム・窓・音楽を、どれくらい効くのか、どれくらい続くのかで整理します。
眠気対策の「効き方」を一覧で比べる
まず、よく使われる眠気対策を、研究や公的な呼びかけで言われていることをもとに並べます。
| 対策 | 言われている効き方 | この記事での位置づけ |
|---|---|---|
| コーヒー(カフェイン) | 運転のふらつきや眠気を抑えたという実験結果がある。ただし効き始めるまでに時間がかかる | 止まって飲むと効果を生かしやすい |
| 短い仮眠(15分前後) | 眠気そのものを減らす。長く寝すぎると、起きた直後にぼんやりしやすい | 眠気の「元」に効く対策 |
| コーヒーを飲んでから仮眠 | 海外の実験で、どちらか一方より運転のミスが少なかった | いちばん強い組み合わせ |
| ガムをかむ | かむことで脳の働きが高まる、眠気の上がり方が抑えられたという研究がある | 止まるまでのつなぎ |
| 窓を開ける・冷たい風 | 一時的に目が覚めた感じはするが、効果は短いとされる | 止まるまでのつなぎ |
| 音楽・ラジオ | 眠気の「感じ方」は少し下がるが、運転の乱れへの効果ははっきりしない | 止まるまでのつなぎ |
※各対策の評価は、下で紹介する研究や、NEXCO・警察などの呼びかけをもとに松ニュースが整理したものです。眠気の強さや体調によって効き方は変わります。
表を見ると、対策は大きく二つに分かれます。眠気の元を減らす「仮眠」と「カフェイン」、そして目を覚ました感じを一時的に作る「ガム・窓・音楽」です。
走りながらできる対策は、眠気を消すものではなく、次に止まれる場所までの「つなぎ」です。
コーヒーと仮眠は、どれくらい効く? 実験でわかっていること
運転中の眠気については、イギリスのラフバラー大学の睡眠研究のグループが、運転シミュレーターを使った実験を重ねてきました。
1997年に発表された実験では、前の晩の睡眠を5時間に減らした12人に、昼過ぎの単調な道路を想定したシミュレーターを運転してもらいました。途中の休憩で、カフェイン約150mgを含むコーヒーを飲んでから15分以内の仮眠をとった場合と、カフェインだけをとった場合などを比べています。車線からはみ出すような「危ない場面」の回数は、何もしない場合(カフェインを含まない飲み物)を100としたとき、次のようになったと報告されています。
| 休憩中にしたこと | 危ない場面の回数(何もしない場合=100) |
|---|---|
| カフェインを含まない飲み物(比較用) | 100 |
| カフェインだけ | 約34 |
| カフェインを飲んでから短い仮眠 | 約9 |
※Reyner & Horne(1997年)の実験結果を紹介した資料をもとに作成。少人数・シミュレーターでの結果で、実際の道路や人によって効き方は変わります。
同じグループは1999年の論文で、眠くなったドライバーにとって本当に頼れる対策は、車を止めて休むこと、とくに短い仮眠(15分未満)とコーヒー(カフェイン約150mg)であり、二つを組み合わせると特に効果が高いとまとめています。
眠くない人にも効果はあるのでしょうか。オランダの研究チームが2012年に発表した実験では、睡眠不足ではない24人が、高速道路を想定したシミュレーターを2時間運転し、15分の休憩でカフェイン80mg入りのコーヒーか、カフェインを抜いたコーヒーを飲んで、さらに2時間運転しました。カフェイン入りのコーヒーを飲んだときは、休憩後の2時間にわたって車線内のふらつきが小さくなり、本人が感じる眠気も下がったと報告されています。
国内でも、NEXCO中日本は、高速道路のように動作が少ない環境では睡眠不足でなくても2時間ごとに眠気がやってくるとして、「カフェインをとって10分から20分間仮眠すると効果的」と呼びかけています。
「コーヒーを飲んだのに、まだ眠い」のはなぜ?
実験ではよく効いたコーヒーですが、実際には「飲んだのに全然目が覚めない」と感じた経験のある人も多いはずです。これには、主に三つの理由が考えられます。
一つめは、効き始めるまでの時間です。カフェインは飲んだ瞬間に効くわけではありません。北海道警察は、カフェインをとったら眠気を抑える効果が表れ始める15分後に運転を再開するよう呼びかけています。体の中で濃度が最も高くなるまでには、30分以上かかるとする解説もあります。コンビニでコーヒーを買ってすぐに走り出すと、いちばん眠い時間帯を、まだカフェインが効いていない状態で走ることになります。
二つめは、眠気の深さです。カフェインは眠気を「感じにくくする」ことはできても、睡眠不足そのものを取り戻すわけではありません。前の晩にほとんど寝ていない、深夜で体が眠る時間に入っている、といった状況では、カフェインだけでは追いつかないことがあります。先ほどの実験でも、カフェインだけの場合は危ない場面が0にはならず、仮眠を組み合わせた場合に大きく減っています。
三つめは、量と飲み方の個人差です。普段からコーヒーをよく飲む人と、ほとんど飲まない人では、同じ1杯でも感じ方が違うと言われます。かといって、効かないからと何杯も重ねるのは別の問題を生みます。食品安全委員会はカフェインのとりすぎに注意を呼びかけており、エナジードリンクのように1本あたりの量が多い商品もあります。
コーヒーは「飲めば目が覚める薬」ではなく、「止まって休む時間を、より効く休憩に変える道具」と考えると、使い方を間違えにくくなります。
コーヒー1杯は、実験の何杯分?
実験に出てくる「カフェイン150mg」「80mg」は、ふだんの飲み物でどれくらいになるのでしょうか。食品安全委員会の資料では、レギュラーコーヒー(粉10gを熱湯150mLで入れたもの)のカフェインは100mLあたり約60mgとされています。これをもとに計算すると、次のようになります。
| カフェインの量 | レギュラーコーヒーに直すと | 出てくる場面 |
|---|---|---|
| 約80mg | 約130mL(小さめのカップ1杯ほど) | 2012年の実験(眠くない人) |
| 約90mg | 150mL(一般的なカップ1杯) | - |
| 約150mg | 約250mL(カップ1杯半〜大きめのマグ1杯) | 1997年・1999年の研究(眠い人) |
※100mLあたり約60mgという値に基づく計算例です(150mg÷0.6=250mLなど)。実際のカフェイン量は豆の種類・入れ方・商品によって大きく変わります。缶コーヒーやエナジードリンクは、商品ごとの表示を確認してください。研究で使われた量を紹介するもので、飲む量をすすめるものではありません。
大きめのカップのコーヒー1杯で、実験で使われた量に近いということになります。何杯も飲まなければ効かない、というものではないわけです。
仮眠は「15分前後」がいい理由
仮眠は長ければ長いほどいい、というものではありません。眠りが深くなってから起きると、起きた直後に頭がぼんやりし、かえって運転に戻りにくくなることがあります。
短い昼寝の研究で知られる広島大学の林光緒教授の研究では、15分以内の仮眠であれば深い眠り(徐波睡眠)が現れにくいことが示されています。NEXCO中日本の「10分から20分」、ラフバラー大学の研究の「15分未満」、北海道警察の「15分〜30分以内」と、呼びかけによって幅はありますが、どれも「長くても30分まで」という点は共通しています。
ここで、コーヒーの「効き始めるまで15分ほどかかる」という弱点が、逆に生きてきます。先にコーヒーを飲んでから15分ほど目を閉じると、目が覚める頃にちょうどカフェインが効き始めます。これが、コーヒーと仮眠を組み合わせると効果が高いとされる理由です。
うまく眠れなくても、目を閉じて静かに座っているだけで休憩にはなります。「眠れなかったから意味がない」と考えずに、時間を決めて体を休めることが大切です。
ガム・窓・音楽は効かないの?
では、走りながらできるガム・窓・音楽は意味がないのでしょうか。そうではありません。
ガム:ものをかむと脳の働きが活発になることは、自然科学研究機構・生理学研究所の研究チームが脳波を使った実験で確かめています。2026年には、ガムメーカーと大学発の企業の共同研究として、自動運転を想定した環境で清涼感の強いガムをかんだ人は、眠気の上がり方が抑えられたという結果も発表されました(20〜60歳の22人、本人が答える眠気の指標などで評価)。かむことは、眠気の上がり方をゆるやかにする手段にはなりそうです。
窓・冷たい風、音楽・ラジオ:ラフバラー大学のグループは1998年、睡眠を5時間に減らした16人で、エアコンの冷たい風とラジオを試しています。研究グループはその後、冷たい風やカーラジオは「効くとしても短い時間だけ」だとまとめています。音楽は眠気の感じ方を少し下げても、運転の乱れを改善する効果ははっきりしなかったとされます。NEXCO各社も、窓を開けての深呼吸などを眠気を防ぐ方法として紹介していますが、あわせて2時間ごとの休憩を呼びかけています。
ここで気をつけたいのは、「目が覚めた感じ」と「実際に安全に運転できている」は別だということです。窓を開けて冷たい風に当たると、そのときはシャキッとした気がします。けれど、眠気の元が残ったままなら、しばらくすると同じ眠気が戻ってきます。
ガムや窓は、「眠くなってきた」と気づいてから、次のサービスエリアやパーキングエリアにたどり着くまでの数分〜数十分を支えるもの、と割り切って使うのが現実的です。
一瞬のうとうとで、車はどれだけ進む?
「ほんの一瞬、目を閉じただけ」でも、車は進み続けます。速度ごとに、目を閉じていた時間の間に進む距離を計算してみます。
| 速度 | 1秒 | 2秒 | 3秒 |
|---|---|---|---|
| 時速60km | 約17m | 約33m | 約50m |
| 時速80km | 約22m | 約44m | 約67m |
| 時速100km | 約28m | 約56m | 約83m |
※時速を秒速に直した単純な計算です(時速100km=秒速約27.8m、など)。
時速100kmで3秒うとうとすると、約83m、大型バス7台分ほどを、前を見ないまま進むことになります。高速道路の事故で多いのは、前方の不注意による追突とされています。NEXCO中日本の調べとして、管内の高速道路の死亡事故のうち、2022年は33件中15件、2023年は34件中16件が深夜帯に起きていたことも報じられています。
「まだ大丈夫」と思えるうちに止まる理由は、この数字にあります。うとうとし始めてから止まる場所を探すのでは、その間に何度も「数秒」が訪れるかもしれないからです。休憩の間隔の考え方は、長距離ドライブは何時間おきに休憩する?の記事で詳しく整理しています。
状況別:どの対策をどう組み合わせる?
- 連休の長距離ドライブ(昼間):眠くなる前から2時間ごとの休憩を予定に入れ、休憩のたびにコーヒーを飲む、少し歩くなどして体を動かします。昼食のあとは眠くなりやすい時間帯なので、食後すぐの休憩で15分ほど目を閉じておくと、午後の運転が楽になります。
- 仕事帰りや深夜の帰り道:体が眠る時間に入っているので、ガムや窓だけでしのぐのは避けたい場面です。眠気を感じたら、コンビニやパーキングエリアで止まり、コーヒーを飲んでから15分ほど目を閉じる。それでも眠いなら、運転を続けるかどうかを考え直します。
- 次の休憩場所まで距離があるとき:ガムをかむ、窓を少し開ける、会話をするなどで、止まれる場所までつなぎます。このとき「目が覚めたからもう少し先まで行こう」と予定を延ばさないことが大切です。道の駅で休むときの選び方はこちらの記事でまとめています。
- 普段からコーヒーをよく飲む人:いつもの1杯では眠気覚ましとしての手応えが小さいかもしれません。量を増やすより、仮眠と組み合わせる、休憩の間隔を短くするなど、カフェイン以外の対策を厚くするほうが確実です。
眠気に一番効くのは、ガムでも窓でもなく、車を止めている15分です。コーヒーは、その15分を「よく効く15分」に変えてくれます。
参考にした情報
- Horne J, Reyner L. “Vehicle accidents related to sleep: a review.” Occupational and Environmental Medicine, 1999;56(5):289-294 pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Reyner LA, Horne JA. “Suppression of sleepiness in drivers: combination of caffeine with a short nap.” Psychophysiology, 1997 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Reyner LA, Horne JA. “Evaluation of ‘in-car’ countermeasures to sleepiness: cold air and radio.” Sleep, 1998;21:46-50 ncbi.nlm.nih.gov
- Mets MAJ, et al. “Effects of coffee on driving performance during prolonged simulated highway driving.” Psychopharmacology, 2012;222(2):337-342 pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- くるまのニュース「NEXCOが衝撃映像…なぜ『運転中眠くなる?』」(2025年5月5日、NEXCO中日本の呼びかけを紹介) kuruma-news.jp
- くるまのニュース「運転中の『眠気』どう対処する? 『高速道路催眠現象』とも呼ばれる眠くなる理由とは」(2019年1月26日) kuruma-news.jp
- 北海道警察 交通安全情報(眠気対策・カフェイン摂取後15分) police.pref.hokkaido.lg.jp
- 食品安全委員会 カフェインに関する資料(コーヒー浸出液100mLあたり約60mg) fsc.go.jp
- 科学技術振興機構 サイエンスポータル「かむと脳の働き活発に」(生理学研究所の研究) scienceportal.jst.go.jp
- ロッテ ニュースリリース(高清涼感ガムと自動運転を想定した環境での眠気の研究、2026年4月22日) lotte.co.jp
- LOGISTICS TODAY(NEXCO中日本管内の深夜帯の死亡事故件数) logi-today.com
- 科学研究費助成事業データベース(林光緒 短時間仮眠に関する研究) kaken.nii.ac.jp

