
家や職場で地震に遭ったときの動き方は、訓練で何度も練習してきた人が多いと思います。でも、運転中に大きな地震が来たらどうするか、具体的に思い浮かぶでしょうか。走っている車の中では揺れに気づきにくく、気づいたときには周りの車も混乱しています。この記事では、JAFや警察、高速道路会社が呼びかけている行動を、揺れ始めから車を離れるまでの順番に整理します。
揺れ始めから車を離れるまで、4つの段階
| 段階 | すること | しないこと |
|---|---|---|
| 1. 揺れに気づいたら | ハザードランプを点け、ゆっくり減速して道路の左側に止める | 急ブレーキ・急ハンドル |
| 2. 止まったら | エンジンを止め、揺れがおさまるまで車内で待つ | 慌てて車の外に飛び出す |
| 3. 揺れがおさまったら | ラジオやスマートフォンで地震・津波・道路の情報を確かめる | 情報を確かめずに走り出す |
| 4. 車を離れるなら | できれば道路の外へ。道路に置くなら左に寄せ、キーは車内に残し、窓を閉めてドアはロックしない | キーを持ち去る・ドアをロックする |
※警察庁「大地震発生時の運転者の措置」、JAF、NEXCO中日本の案内をもとに編集部が整理しました。
ひとつずつ見ると当たり前のことのようですが、実際の場面では「すぐ止まりたい」「早く外に出たい」「車にカギをかけたい」という気持ちと、ぶつかる行動ばかりです。なぜそうするのかを、順番に見ていきます。
走っていると、地震に気づきにくい
気象庁の「震度階級関連解説表」では、震度4で「自動車を運転していて、揺れに気付く人がいる」、震度5強で「自動車の運転が困難となり、停止する車もある」とされています。
つまり、震度3程度までの揺れは、走っている車の中ではほとんど感じません。車のタイヤやサスペンションは、もともと路面のでこぼこを吸収するように作られているからです。強い揺れでも、最初は「パンクしたかな」「横風かな」と感じ、地震だと気づくまでに少し時間がかかることがあります。
ハンドルが急に取られる、周りの車が一斉に減速する、電線や信号機が大きく揺れている——そんなときは、地震を疑ってください。カーナビやスマートフォンの緊急地震速報も、気づくきっかけになります。
止まるときは「急いで」ではなく「ゆっくり」
揺れに気づくと、反射的にブレーキを強く踏みたくなります。でも、警察庁もJAFも、急ブレーキや急ハンドルは避けるよう呼びかけています。後ろの車が地震に気づいていなければ、急に止まった車に追突してしまうおそれがあるからです。
ハザードランプを点けて「止まります」と周りに知らせながら、少しずつ速度を落とし、道路の左側に寄せて止めます。
走っている車は、思っているより長い距離を進みます。
| 速度 | 1秒で進む距離 | 迷っている2秒で進む距離 |
|---|---|---|
| 40km/h | 約11m | 約22m |
| 60km/h | 約17m | 約33m |
| 100km/h | 約28m | 約56m |
※仮定に基づく計算例です。速度を秒速に直しただけの数字で、ブレーキが効き始めてから止まるまでの距離は含みません。計算:40km/h=40,000m÷3,600秒≒11.1m、60km/h≒16.7m、100km/h≒27.8m。
60km/hなら、2秒迷うだけで約33m、大型バス3台分ほど進みます。「止まらなきゃ」と焦って急ブレーキを踏むより、まずハザードを点けて、アクセルを離す。それだけで、周りの車にも自分の車にも、止まるための距離と時間が生まれます。
止まる場所で避けたいところ
左に寄せる場所は、選べるなら次のような場所を避けます。
- トンネルの出入口付近、切り立った斜面の下:NEXCO中日本は、震度によっては上からの崩落のおそれがあるとして、極力避けて止めるよう呼びかけています。
- ブロック塀、古い建物、看板の近く:倒れたり落ちてきたりするおそれがあります。
- 交差点の中や、その近く:後で救急車や消防車が通る妨げになりやすい場所です。
渋滞中に揺れたときは、無理に車線を変えて左へ寄ろうとせず、その場でゆっくり速度を落とします。高速道路のトンネル内で止まった場合は、揺れがおさまったら速やかにトンネルの外へ避難することが大切だとされています。
「外のほうが安全では?」車内で待つ理由
止まったあと、こう思う人もいるかもしれません。
「揺れている間に車に閉じこもっていて大丈夫? すぐ外に出たほうが安全なのでは?」
JAFや警察は、揺れがおさまるまでは車内で待つよう呼びかけています。理由は2つあります。
ひとつは、外にいる車です。震度5強になると、運転が難しくなり止まる車もある一方で、地震に気づかず走り続ける車や、ハンドルを取られてふらつく車もあります。慌ててドアを開けて降りると、そうした車にぶつかるおそれがあります。
もうひとつは、落ちてくるものです。揺れている間は、建物の窓ガラスや看板、瓦などが落ちてくることがあります。車の屋根と柱は、そうした落下物から体を守る役目も果たします。
揺れている間の車は、逃げ出す場所ではなく、身を守る場所です。
エンジンを止め、ラジオやスマートフォンで地震の規模と、津波の情報を確かめます。揺れがおさまってから、周りの安全を確認して次の行動を決めます。
車を離れるとき、キーを残す理由
周りの状況によっては、車を置いて歩いて避難したほうがいい場面があります。警察庁の案内では、できるだけ道路の外に車を移し、やむを得ず道路に置くときは、左に寄せてエンジンを止め、キーは付けたままか車内の見やすい場所に置き、窓を閉めて、ドアはロックしないこととしています。
ここで、多くの人が引っかかるはずです。
キーを置いてドアを開けたまま離れたら、盗まれてしまうのでは——。それでもキーを残すよう呼びかけられているのは、過去の大きな地震で、道路の上の車が救助の妨げになったからです。1995年の阪神・淡路大震災では、震災直後の道路が渋滞し、消防車や救急車が立ち往生して、初動の活動が遅れたことが教訓として残されています。
カギのかかった車が道をふさいでいると、救助に向かう車は、その車を動かすことができません。キーが車内にあれば、警察や救助の担当者が車を移動させて、道を空けることができます。
大きな地震のあとの道路では、自分の車を守ることより、誰かの命を運ぶ車を通すことが優先されます。
スマートキーの車なら、キーを車内の見やすい場所(メーターの近くなど)に置きます。そのうえで、スマートフォン、財布、身分証、常備薬など、避難先で必要なものは忘れずに持って出ます。
津波のおそれがあるとき:半数以上が車で避難し、3割が渋滞に
海の近くを走っているときは、津波の情報が何より優先です。警察庁の案内でも、避難のために車を使わないことを基本としながら、「津波から避難するためやむを得ない場合を除き」とただし書きを付けています。
ただ、現実には車で逃げる人が多数派になります。内閣府の調査によると、東日本大震災で避難した人のうち、車を使った人は57%で、徒歩の43%を上回りました。そして車で避難した人が困ったこととして最も多く挙げたのが「渋滞していた」で、32.6%。道路の陥没や段差、信号が消えていたことも、それぞれ21.8%が挙げています。
みんなが「車のほうが速い」と考えて同じ道に集まると、車は思ったように進まなくなります。津波のおそれがある場所で、渋滞に巻き込まれて動けなくなったら、車を道路の端に寄せ、キーを残して、高い場所へ歩いて逃げることも考えてください。ふだんから、通勤路やよく行く海沿いの道の近くに、高台や津波避難ビルがどこにあるかを地図で確かめておくと、いざというときの判断が速くなります。
高速道路を走っているときは
NEXCO中日本は、高速道路で地震に遭ったときの行動として、次のように案内しています。
- 急ブレーキや急ハンドルをせず、ゆっくり減速して左側の路肩に止め、エンジンを止める
- ハザードランプを点け、停止表示板を後ろから来る車に見えやすい位置に置く
- 車内や路肩には残らず、非常駐車帯やガードレールの外など安全な場所に避難する
- 車を離れるときは、ドアをロックせず、キーは付けたままにしておく
- 警察や高速道路会社の指示、ラジオなどの情報に従って行動し、沿岸部では津波の情報を集める
一般道と大きく違うのは、「車内で待つ」より「車から離れて安全な場所へ」が優先される点です。速度の速い車が後ろから来る高速道路の路肩は、揺れがおさまったあとも危険な場所だからです。
揺れがおさまって、走り出すとき
周りの状況を確かめて走り出す場合も、ふだんの道とは別の道だと考えて運転します。東日本大震災の調査で挙げられていたように、道路に段差や陥没ができていたり、停電で信号が消えていたりすることがあります。
信号が消えた交差点では、お互いに譲り合いながら、いつでも止まれる速度で通ります。余震が続くことも多いので、橋や高架、トンネルではいつも以上に周りの様子に気を配りましょう。ガソリンが少ないと、その後の移動や車内での待機に困ることがあります。燃料の残し方はガソリンは半分になったら入れる?で整理しています。
あなたが走っているのは、どんな道?
街なかの一般道
ハザードを点けてゆっくり左へ。止まったらエンジンを止めて、揺れがおさまるまで車内で待ちます。ブロック塀や古い建物の近くなら、揺れがおさまったあと、少し離れた場所へ移るか、車を置いて歩いて避難するかを判断します。
高速道路
ゆっくり減速して左の路肩へ。ハザードと停止表示板で後ろに知らせ、揺れがおさまったら、ガードレールの外など安全な場所へ離れます。トンネルの出入口や斜面の下は、できるだけ避けて止めます。
海の近く
揺れがおさまったら、真っ先に津波の情報を確かめます。津波のおそれがあれば、とにかく高い場所へ。車で動き出しても渋滞で進めなくなったら、車を端に寄せ、キーを残して歩いて逃げることも選択肢です。
家族を乗せている
揺れている間は、全員で車内で待ちます。車を離れるときは、子どもの手を離さず、後ろから来る車に注意して歩道側から降ります。車に防災用品を積んでおくと、そのあとの数時間が大きく変わります。何から積むかは車に積んでおきたい防災グッズを参考にしてください。
覚えておく順番は3つ
運転中の地震で大事なことは、多くありません。ハザードを点けてゆっくり左へ。揺れている間は車の中で待つ。離れるなら、キーは車内に。
そのどれもが、「早く止まりたい」「早く逃げたい」「車を守りたい」という、とっさの気持ちとは逆の動きです。だからこそ、揺れる前に一度だけ、頭の中で順番をなぞっておく価値があります。
情報源
- 警察庁「大地震発生時の運転者の措置」 npa.go.jp
- JAF Mate Online「運転中に大地震が発生したら、どうすればいい?」(2023年5月18日) jafmate.jp
- NEXCO中日本 ドライバーズサイト「地震が起きたら」 c-nexco.co.jp
- 気象庁「気象庁震度階級関連解説表」 jma.go.jp
- 内閣府(防災情報)「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」 bousai.go.jp
- 現代ビジネス 山村武彦「南海トラフ巨大地震と車避難」(2025年10月22日、内閣府調査の紹介) gendai.media
- くるまのニュース「運転中に大きな地震が起きたらどうすべき? 覚えておきたい『3つ』の対処法とは」(2024年8月9日) kuruma-news.jp
- デイリースポーツ「路上に駐車して避難する場合、『キー』は持って行く?置いて行く?」(2025年1月18日) daily.co.jp
- ベストカーWeb「運転中に大地震発生!! 急ブレーキは絶対ダメ…クルマを置いて避難するなら『キーを残す』理由」(2026年9月3日) bestcarweb.jp

