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台風・大雨の前に、車はどこに停めておく? 地下・機械式・屋上、それぞれの落とし穴

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台風・大雨の前に車はどこに停めておく? 水より高く、風から隠れる場所へ
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台風の進路予想に自分の住む地域が入ってきたとき、家の備えと同じくらい悩ましいのが「車をどこに置いておくか」です。家は動かせませんが、車は動かせます。ただ、ふだん使っている地下駐車場やマンションの機械式駐車場、見晴らしのいい立体駐車場の屋上には、それぞれ別の落とし穴があります。保険金の統計や実際の被害、自治体の車両避難の仕組みをもとに、台風・大雨の前に車を置く場所の考え方を整理します。

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台風が車を傷める道は「下からの水」と「横からの風」

台風で車が被害を受けるパターンは、大きく二つに分かれます。一つは、大雨や川の氾濫、高潮で車が水に浸かる「水」の被害。もう一つは、飛んできた看板や瓦、折れた枝がぶつかる「風」の被害です。

この二つは、同じ台風でも比べものにならないほど重さが違うことがあります。日本損害保険協会がまとめた2019年の二つの台風の車両保険の支払いを見てみます。

台風(2019年) 車両保険の支払件数 支払保険金 1件あたり(計算値)
台風15号(房総半島台風) 36,733件 約241億円 約66万円
台風19号(東日本台風) 47,928件 約636億円 約133万円

※日本損害保険協会「令和元年台風15号、台風19号および10月25日の大雨による災害に係る各種損害保険の支払件数・支払保険金(見込含む)等について」(2020年3月9日時点の調査)より。1件あたりの金額は、支払保険金÷支払件数で編集部が計算した平均値です。

房総半島台風は千葉県を中心とした記録的な暴風が、東日本台風は東日本の広い範囲での河川の氾濫が大きな特徴だった台風です。1件あたりの支払いを平均すると、東日本台風のほうが約2倍になっています。どちらの台風にも風と水の両方の被害が混ざっているので、この差がすべて被害の種類で説明できるわけではありません。それでも、へこみやガラスの割れなら修理で済むことが多いのに対し、エンジンや電装品まで水に浸かった車は修理より買い替えになりやすいとされていて、水の被害が車にとってどれほど重いかがうかがえる数字です。

だから、置き場所を考える順番ははっきりしています。

台風の前に車を移す先は、「水より高く、風から隠れる場所」。まず水から逃がし、そのうえで風をよける、の順番です。

ふだんの駐車場、台風のときはどこが弱い?

ふだん何気なく使っている駐車場も、「水」と「風」の二つの目で見ると、弱いところがまったく違います。

置き場所 水(大雨・氾濫・高潮) 風(飛来物・倒木) ひとこと
地下駐車場 弱い 強い 水は低いところに一気に集まる
機械式駐車場の地下段(ピット) 弱い やや強い 排水が追いつかないと、車ごと水槽の底になる
低い土地・川沿いの平面駐車場(自宅を含む) 弱い 弱い ハザードマップで浸水の深さを確認したい
海沿いの駐車場 弱い(高潮) 弱い 海水は真水より車へのダメージが大きい
木・看板・電柱のそば 場所による 弱い 折れた枝や外れた看板の通り道
立体駐車場の屋上 強い 弱い 水は来ないが、風はまともに受ける
立体駐車場の上のほうの階(建物の内側) 強い 比較的強い 水と風の両方をよけやすい

※「強い/弱い」は、各種の解説や実際の被害事例をもとに編集部が整理した一般的な傾向です。実際の危険度は、その土地の高さ、建物の構造、排水設備、台風の進路などで大きく変わります。

地下駐車場:止水板があっても間に合わないことがある

2025年9月12日の夜、三重県四日市市では1時間に123.5mmという観測史上最大の雨が降りました。近鉄四日市駅近くの地下駐車場「くすの木パーキング」には大量の雨水が流れ込み、駐車していた274台が水に浸かりました。

国土交通省の発表によると、車の出入口3か所のうち国道側の2か所は止水板が故障していて、残る1か所も急激な浸水で操作が間に合いませんでした。歩行者用の出入口7か所も、止水板の設置が間に合わなかったとされています。

設備の不備が重なった例ではありますが、見方を変えると、「止水板があるから大丈夫」は、設備が完璧に動き、人が間に合ったときだけの話だということです。短時間に激しい雨が降ると、地下は周りの水を集める受け皿になります。台風や大雨の予報が出ているときに、地下に車を置いたままにしない、というのが一般的な考え方です。

機械式駐車場:いちばん下の段は「ピット」の底

マンションなどに多い機械式駐車場のうち、地面より下に車を収める「地下ピット」があるタイプは、排水が追いつかないとピットに水がたまり、下の段の車が水没するおそれがあります。

駐車設備メーカーの解説では、台風のときは機械式駐車場を使わないこと、大雨や洪水が予想されるなら車を別の安全な場所へ移しておくことが勧められています。管理者の側には、浸水のおそれがあるときに車を上の位置まで上げておく対応もありますが、これは強い風が吹いていないときに限る、という条件つきです。台風が近づいて風が強くなってからでは、動かせる手段が少なくなります。自分の車が下の段にあるなら、風が強まる前に動くのが基本です。

海沿い:高潮の海水は、車を燃やすことがある

2018年9月の台風21号では、大阪湾沿岸で記録的な高潮が起きました。兵庫県西宮市の甲子園浜では、海水に漬かった中古車オークション会場の車が次々に燃える被害があり、海水で電気系統がショートしたことが原因とみられると報じられています。

国土交通省も、浸水・冠水した車は見た目に問題がなさそうでも、電気系統のショートなどで車両火災が起きるおそれがあると注意を呼びかけています。海沿いの駐車場は、高潮の予報が出たら内陸の高い場所へ、が一つの目安になります。

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「屋上なら水は来ないから、一番安全でしょ?」

水の被害が重いなら、いちばん高い屋上に停めればいい。そう考えるのは自然です。実際、水についてはそのとおりで、立体駐車場の屋上まで水が上がってくることはまずありません。

ところが、風については話が逆になります。屋上は、周りに風をさえぎるものがありません。気象庁の「風の強さと吹き方」の表では、平均風速15m/s以上で看板やトタン板が外れ始め、20m/s以上になると看板が落下・飛散し、飛んできたものでけがをするおそれがあるとされています。

しかも、天気予報で聞く「風速」は10分間の平均です。気象庁によると、瞬間風速は平均風速の1.5倍程度になることが多く、大気の状態が不安定なときは3倍以上になることもあります。平均20m/sの予報なら、瞬間的には30m/s前後の風が吹く計算で、これは時速にすると約108km。高速道路を走る車と同じくらいの速さで、瓦や枝が飛んでくるかもしれない、ということです。

※瞬間風速=平均風速×1.5倍、30m/s×3.6=時速約108kmは、気象庁の目安をもとにした編集部の計算例です。実際の風の強さは、地形や周りの建物によって大きく変わります。

つまり、高さは水には効くけれど、風には効かない。「一番高い場所」と「一番安全な場所」は、台風のときは別物です。

車の置き場所の解説では、屋上よりも、建物の内側に空きがあればそちらを選ぶほうが無難とされています。風雨が吹き込みやすい出入口や外に面した区画を避け、想定される浸水の深さより高い階の、建物の内側。これが、水と風の両方から隠れやすい場所です。

もう一つ見落としやすいのが、建物そのものではなく「入口」の高さです。立体駐車場が高い建物でも、周りが低い土地にあれば、入口の道路が先に冠水して出入りできなくなることがあります。移す先を選ぶときは、そこまでの道がどれくらい低い場所を通るかも一緒に見ておきたいところです。

自治体が「車の避難場所」を用意していることもある

自宅の周りに適当な場所がない場合、自治体の制度が使えることがあります。

たとえば静岡市は、台風の接近などで市内に相当程度の浸水被害が想定される場合に限り、車を一時的に置ける場所を案内しています。公共の駐車場が3施設で計1,030台分、民間事業者の協力による駐車場が13施設で計2,501台分、合わせて3,531台分で、民間の駐車場は立体駐車場の上の階が中心です。千葉県流山市も、水害による車の浸水を防ぐため、総合運動公園の駐車場を車の避難場所として開放していて、2026年9月の台風25号の際にも開放していました。

こうした制度には、共通する注意点があります。

  • 守ってくれるのは「場所」だけ。静岡市の案内では、市の職員は配置されず、浸水などの被害が出ても市や事業者は責任を負えないとされています。流山市も、事故・盗難・損傷について市は責任を負えないとしています。
  • 開いている時間や使える条件が決まっている。静岡市の民間駐車場の中には、営業時間外はエレベーターが使えない施設や、利用できる時間が限られている施設があります。
  • 終わったらすぐ動かす。静岡市は大雨警報が解除されたら速やかに移動すること、流山市は浸水のおそれがなくなったらできるだけ速やかに移動することを求めています。

こうした制度があるかどうかは自治体によって違います。「お住まいの市区町村名+車両避難」などで調べると、案内のページが見つかることがあります。制度のない地域で、商業施設などの駐車場に長時間車を置くのは、その施設のルールに反する場合もあるので、事前に確認しておくのが安心です。

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動かすなら「雨が強まる前」、強まったら人が優先

置き場所と同じくらい大事なのが、動かすタイミングです。流山市の案内にも、雨が強まってからの移動は道路の冠水などで危険を伴う場合がある、と書かれています。

JAFのテストでは、水深30cmの道でも時速30kmで走るとエンジンルームに水が入り、水深60cmでは時速10kmのゆっくりした速度でもエンジンが止まりました。車を守るために動かしたはずが、途中で水に捕まってしまえば元も子もありません。

時間の流れで整理すると、次のようになります。

いつ やっておきたいこと
台風シーズンに入る前・進路予想が出たころ 自宅や職場の駐車場をハザードマップ(洪水・高潮・土砂災害)で確認。移す先の候補と、そこまでの道を決めておく。自治体の車両避難の制度があるか調べる
接近の前日〜雨や風が強まる前(できれば明るいうち) 車を移動する。機械式の下の段や地下にある車は特に早めに。移した先からの帰り道(歩き・公共交通)も考えておく
雨や風が強まってから 車は動かさず、自分と家族の安全を優先する
過ぎ去ったあと 車が水に浸かっていたら、エンジンをかけない。販売店や整備工場に相談する

最後の行は特に大事です。国土交通省は、浸水・冠水した車について、自分でエンジンをかけないこと、発火を防ぐためにバッテリーのマイナス側のターミナルを外すこと、高電圧のバッテリーを積んだハイブリッド車や電気自動車にはむやみに触らないことを呼びかけています。水が引いて見た目がきれいでも、中の電気系統が無事とは限りません。水没したときの判断や脱出、保険の考え方はクルマが冠水したら 水没を避ける判断と、閉じ込められたときの脱出で詳しくまとめています。

自分の駐車場に当てはめてみる

同じ台風でも、どこに住んでいて、ふだんどこに停めているかで、やるべきことは変わります。代表的なパターンに分けておきます。

川の近く・低い土地の一戸建てに住んでいる人

家の前の駐車場は、水にも風にも弱い場所になりがちです。ハザードマップで自宅の浸水の深さを見て、床下程度でも浸水の想定があるなら、近くの高台や立体駐車場の上の階を候補にしておくと動きやすくなります。車を移したあとは歩いて戻ることになるので、明るいうちに動けるかどうかも判断の分かれ目です。

マンションの地下駐車場・機械式の下の段を使っている人

いちばん先に動いたほうがいいパターンです。機械式は風が強くなると動かせなくなることがあり、地下は一度水が入り始めると短い時間で状況が変わります。管理組合や管理会社が、台風のときの対応(車の移動の呼びかけや、機械の停止)を決めていることもあるので、シーズン前に確認しておくと安心です。

海の近くに住んでいる人

雨の量だけでなく、高潮の予報にも目を向けたいところです。海水に浸かった車は火災のおそれもあるため、「少しなら大丈夫」と考えず、内陸の高い場所へ離しておくのが一般的な考え方です。海沿いは風も強くなりやすいので、移した先でも木や看板のそばは避けます。

高台に住んでいて、心配なのは主に風という人

水の心配が小さいなら、風への備えが中心です。屋外に停めるしかない場合は、木や看板、電柱、物置など、倒れたり飛んだりしそうなもののそばから離し、建物の陰になる場所を選ぶ、というのが一般的な考え方です。家の周りの植木鉢や自転車など、車に向かって飛んでいきそうなものを片づけておくことも、車を守ることにつながります。

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家は動かせない。でも、車は先に逃がせる

台風の備えというと、窓の養生や食料の準備が先に浮かびます。けれど、家財の中で車だけは、被害が出る前に「安全な場所へ移す」ことができます。

ただし、それができるのは雨や風が強まる前だけです。強まってから車のために外へ出るのは、守るものの順番が逆になります。

次の台風の進路予想が出たら、まず一度、自分の駐車場をハザードマップで見てみてください。水より高く、風から隠れる場所がどこにあるか。それを晴れているうちに決めておくことが、いちばんの備えです。

情報源

  • 日本損害保険協会「令和元年台風15号、台風19号および10月25日の大雨による災害に係る各種損害保険の支払件数・支払保険金(見込含む)等について」 sonpo.or.jp
  • 国土交通省「短時間の記録的な大雨によって冠水したくすの木パーキングに関する対応について」(2025年9月19日) mlit.go.jp
  • メ〜テレ(名古屋テレビ)「地下駐車場の浸水『大いに反省すべき』最終報告書が指摘」 nagoyatv.com
  • 日経クロステック「地下駐車場で車274台が水没」 xtech.nikkei.com
  • 日本経済新聞「兵庫で中古車100台炎上 冠水車両、発火の恐れ」 nikkei.com
  • 気象庁「台風第21号による暴風・高潮等(平成30年9月3日〜5日)」 data.jma.go.jp
  • 気象庁「風の強さと吹き方」 jma.go.jp
  • 国土交通省「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」 mlit.go.jp
  • JAF「台風・大雨時のクルマに関する注意点」 jaf.or.jp
  • 静岡市「水害時における車両の避難場所のご案内」 city.shizuoka.lg.jp
  • 流山市「水害時の車両避難場所」 city.nagareyama.chiba.jp
  • 豊国ファシリティーズ「台風時、機械式駐車場はどうなる?対応と対策について解説!」 hokoku-f.co.jp
  • KINTO「台風接近!車はどこに停めるのが安全? 立体駐車場は本当に安心なのか」 kinto-jp.com
  • 東京海上ダイレクト「車が水没したら自動車保険で補償される?」 e-design.net
  • 国土地理院「ハザードマップポータルサイト」 disaportal.gsi.go.jp
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