
「パンクしたら、とにかくすぐ止まらないと」——そう考える人は多いはずです。たしかに、パンクしたタイヤで走り続けるのは、メーカーもJAFも勧めていません。けれど、高速道路の路肩やカーブの先のように、止まった場所そのものが危ないこともあります。この記事では、JAFのロードサービスの統計と救援事例、NEXCOと自動車メーカーの案内をもとに、走行中にパンクに気づくサインと、気づいてからの操作、そしてどこに止まるかの考え方を整理します。
高速道路では、JAFの出動理由のいちばんがタイヤ
JAF Mateによると、2023年度のJAFのロードサービスは四輪・二輪合わせて226万8,868件。そのうち約20%にあたる45万3,172件が、パンクなどタイヤに関わるトラブルでした。出動理由としては、バッテリー上がりに次いで2番目に多いものです。
この割合は、走る道によって大きく変わります。一般道ではタイヤ関連が全体の約20%なのに対して、高速道路では約40%。高速道路では、タイヤのトラブルが最も多い出動理由になっています。
2023年度の約45万件を1日あたりにならすと、およそ1,240件です(45万3,172÷365の計算)。全国のどこかで、毎日1,000件を超えるタイヤのトラブルにJAFが呼ばれている計算になります。
また、JAFの隊員は、少し空気が抜けた程度ではパンクに気づかず、空気が完全に抜けてから救援を頼むケースが多いと話しています。特に後輪のパンクは気づかれにくく、釘などを踏んでも「踏んだ感覚がない」ことがほとんどで、数日たってからタイヤの異常で気づく例もあるそうです。
走行中に気づくサイン
パンクは、いつも「パン」と音がして一気に空気が抜けるわけではありません。今の乗用車に多いチューブレスタイヤは、空気がゆっくり抜けていくことが多く、走行中には気づきにくいと説明されています。そのため、走行中に出る小さな変化がサインになります。
| サイン | 起きていること | 気づきやすさ |
|---|---|---|
| ハンドルが片側に取られる | 空気の抜けたタイヤの側に車が引っぱられる | 前輪のパンクで出やすい |
| 「ガタガタ」「ゴロゴロ」という振動や音 | つぶれたタイヤが路面をたたいている | 後輪だと音と振動くらいしか手がかりがないことも |
| 空気圧の警告灯が点く | 車がタイヤの空気圧の低下を感じ取った | 装備している車に限られる |
| 車体が片側に傾いて見える | 1本だけ空気が抜けて車高が下がっている | 止まって外から見たときに分かる |
※JAF Mateの救援事例・自動車メーカーの取扱説明書・報道をもとに整理したもの。サインの出方は、タイヤの種類や空気の抜け方で変わります。
JAF Mateで紹介された救援事例では、走り出してほどなく運転者が「なんかガタガタする」と感じ、助手席の同乗者も違和感を覚えていました。調べると右の後輪に異物が刺さっていたものの、早めに異変に気づき長い距離を走らなかったため、応急修理で済んでいます。この事例でJAFの隊員は、前輪がパンクするとハンドルが取られ、事故につながる可能性が高いとも話しています。
前輪はハンドルで、後輪は音と振動で知らせてくる。いつもと違う感じがしたら、「気のせい」で片づけないことが最初の分かれ目です。
空気圧の警告灯がある車では、点き方にも意味があります。トヨタの取扱説明書(GR86)は、パンクが原因の場合はできる限り速やかに安全な場所に停車するよう書いています。ゆっくりした自然な空気の減りや、気温の変化でも点くことがあるので、止まってから空気圧とタイヤの状態を確かめます。
気づいた瞬間は、ハンドルを握って「ゆっくり」減らす
ホンダの取扱説明書は、走行中にパンクしたときは、ハンドルをしっかり握り、ブレーキを徐々にかけて減速し、安全な場所に停車するよう案内しています。トヨタの取扱説明書も、急ハンドルや急ブレーキを避けるよう書いています。
パンクしたタイヤは路面をつかむ力が落ちているので、強いブレーキや急なハンドル操作をすると、車の向きが乱れやすくなります。後ろの車から見れば、前の車が理由もなく急に減速することにもなります。ハザードランプを点けて「何か起きている」ことを知らせながら、速度を少しずつ落としていくのが基本です。
すぐ止まるべき? 少し走っていい?
「走り続けるとタイヤが傷むなら、その場ですぐ止まったほうがいいのでは?」
ここは迷いやすいところです。トヨタの取扱説明書は、パンクした状態で走行を続けないよう警告しています。JAFの隊員も、パンクしたまま走るとタイヤの内側がホイールと路面に挟まれて傷みやすく、応急修理ができなくなることがあると話しています。釘1本で済んだはずのパンクが、タイヤ交換になってしまうわけです。
一方で、止まる場所を選ばずにその場で止まると、今度は人と車が危険にさらされます。高速道路の狭い路肩や、見通しの悪いカーブの先で止まれば、後ろから来た車に追突されるおそれがあるからです。
走っていいのは「安全に止まれる場所まで」の短い距離だけ。タイヤを守ることより、止まる場所を選ぶことのほうが先です。
その「短い距離」がどれくらいかは、高速道路なら目安があります。NEXCO東日本の説明では、故障車などが止まるための非常駐車帯は、ふつうの区間(土工部・橋梁部)で約500mごと、トンネル内では約750mを目安に設けられています。速度を落として走ったときに、次の非常駐車帯まで何秒かかるかを計算すると、次のようになります。
| 次の非常駐車帯までの距離 | 時速60kmで走ると | 時速40kmで走ると |
|---|---|---|
| 500m(最大。ふつうの区間) | 約30秒 | 約45秒 |
| 750m(最大。トンネル内) | 約45秒 | 約68秒 |
※設置間隔の目安(約500m・約750m)をそのまま最大の距離とみなした計算例。実際の距離は場所によって違い、目の前にあることも、少し先のこともあります。時速60kmは秒速約16.7m、時速40kmは秒速約11.1mとして計算。
長くても1分ほど走れば、多くの場所で非常駐車帯に届く計算です。路肩が狭い場所や、トンネルの中では、ハザードランプを点けたまま次の非常駐車帯まで進むほうが、その場で止まるより安全なことが多いはずです。
なお、ランフラットタイヤは例外です。空気が抜けても側面の補強でしばらく車を支えられる構造で、ブリヂストンの海外の公式サイトでは、パンク後も時速80kmまでで最大80km走れると説明しています。ただしこれも「安全な場所まで行くための余裕」で、そのまま走り続けるためのものではありません。
止まる場所の選び方
ホンダの取扱説明書は、停車する場所として、地面が硬く平らで滑らない場所を選ぶよう書いています。そのうえで、後ろの車から早く見つけてもらえることが大切です。場面ごとに整理すると、次のようになります。
| 場面 | 選びたい場所 | できれば避けたい場所 |
|---|---|---|
| 高速道路の本線 | 非常駐車帯、または路肩のなるべく広いところ。サービスエリア・パーキングエリアが目の前ならそこまで | 路肩の狭いところ、カーブの先、合流・分岐の近く |
| 高速道路のトンネル内 | トンネル内の非常駐車帯。出口が近ければトンネルの外 | 非常駐車帯のない狭い路肩 |
| 一般道 | 道路の外の平らな場所(店の駐車場、広い待避所など)。なければ、見通しがよく道幅に余裕のある直線 | カーブの先、坂の途中、交差点や踏切の近く、交通量の多い片側1車線の道 |
※ホンダの取扱説明書、NEXCOの案内をもとに、「後ろから見つけてもらいやすいか」「作業や待機がしやすいか」の考え方で整理したもの。
坂の途中や柔らかい路肩を避けたいのは、あとでタイヤを替えたり修理したりするときにも関わるからです。傾いた場所や柔らかい地面では、ジャッキで車を持ち上げる作業が不安定になります。
高速道路で止まったら、車の中に残らない
NEXCO中日本は、高速道路で事故や故障で止まったときの手順を4つにまとめています。(1)絶対に歩き回らない、(2)ハザードランプ・発炎筒・三角表示板などで後続車に合図する、(3)運転者と同乗者全員が、自分の車より後ろで、ガードレールなどの外側の安全な場所に避難する、(4)避難してから110番、非常電話、道路緊急ダイヤル(#9910)で通報する、という流れです。
同社の案内には、「車内は安全地帯ではありません」とはっきり書かれています。NEXCO中日本の管理区間では、2025年に21件の死亡事故で22人が亡くなり、そのうち停止している車への衝突と単独事故が合わせて14件15人と、全体の約半数を占めました。止まった車と、その周りにいる人が巻き込まれる事故が、それだけ多いということです。
自分の車より「後ろ」に避難するのは、追突された車が前に押し出されてくることがあるからです。JAFの隊員も、救援を待つ間は車の後方に立ち、後ろから来る車がよく見える状態でいるよう勧めています。
そして、高速道路の上でのタイヤ交換や修理はしません。ホンダの交通安全の案内は、高速道路上でのパンク修理は非常に危険なので絶対に行わないよう呼びかけています。非常電話は路肩に約1kmごと、トンネル内では約200mごとに置かれていますが、携帯電話の#9910からでも通報できます。
止まったあとにできること
安全な場所に止まれたら、ハザードランプを点けたままパーキングブレーキをかけ、どのタイヤがどう傷んでいるかを見ます。ここで直せるかどうかが分かれます。
- 釘やネジが刺さっている:トヨタの取扱説明書は、釘やネジなどが刺さっている場合に限って、応急修理キットで修理するよう書いています。刺さったものは抜かないのが基本です。修理後は、時速80km以下・約100km以内で販売店まで慎重に走るよう案内されています。
- タイヤの側面が切れた・破裂した(バースト):応急修理キットでは直せないことがあります。スペアタイヤがあれば交換、なければロードサービスを呼びます。JAFは、会員向けに無料でタイヤを貸し出すサービスも行っています。
- 作業に自信がない・場所が危ない:無理に作業せず、ロードサービスを頼みます。JAFも、安全な場所を確保できないときは無理をしないよう呼びかけています。
応急修理キットとスペアタイヤのどちらが安心かは、スペアタイヤとパンク修理キットの記事で、JAFと自動車保険のロードサービスの違いはロードサービスの記事で比べています。
走る前にできること
JAFの隊員は、乗る前の点検として、タイヤの残り溝・空気圧・ヒビ割れの3つを見ることが最も効果的だとしています。溝が十分に残っていても、紫外線などでゴムが劣化してヒビが出ることがあり、高速走行中のバーストにつながるおそれがあるからです。空気圧をこまめに測っていれば、1本だけ減りが早いことに気づけて、走行中のパンクになる前に見つけられることもあります。
2021年10月の1か月間だけで、釘やネジを踏んだことが原因と分かっているパンク・バーストへのJAFの出動は、全国で8,754件ありました。走行中は異物をなるべく踏まないよう気をつけること、左の前輪は縁石にこすってパンクすることが多いことも、JAFは注意点として挙げています。タイヤそのものの替え時は、タイヤの交換時期の記事で整理しています。
場面別の動き方
高速道路で、急にハンドルが取られた
前輪のパンクが疑われる場面です。ハンドルをしっかり握り、ハザードランプを点けて、ブレーキは少しずつ。路肩が狭ければ、次の非常駐車帯やパーキングエリアまで速度を落として進みます。止まったら全員でガードレールの外へ出て、車より後ろで#9910に通報し、タイヤには手を付けません。
一般道で、後ろから「ゴトゴト」音がする
後輪のパンクは、ハンドルにはあまり出ず、音と振動だけのことがあります。「気のせいかな」と走り続けず、近くの店の駐車場など、道路の外の平らな場所に入って外から見てみます。傾いていたり、釘が見えたりしたら、それ以上走らずに修理かロードサービスに切り替えます。
空気圧の警告灯だけが点いた
パンクとは限りませんが、パンクの可能性もあります。急な操作を避けながら、安全に止まれる場所まで行き、タイヤの見た目を確かめます。ガソリンスタンドなどで空気圧を測って、決められた値に合わせても警告灯が消えない、1本だけまた減っている、というときはパンクを疑い、修理を頼みます。
トンネルの中でパンクした
トンネルの路肩は狭く、その場で止まると後ろの車との距離が取りにくくなります。ハザードランプを点け、速度を落として、トンネル内の非常駐車帯か、近ければ出口の先まで進みます。止まったら外の明るい道路より見つけてもらいにくいことを意識して、車から離れ、非常電話か#9910で通報します。
直すのは、止まってから
走行中のパンクで本当に怖いのは、タイヤが傷むことより、危ない場所で止まってしまうことです。タイヤは替えられても、追突された車の後ろにいた人は元に戻りません。いつもと違う振動やハンドルの重さを感じたら、ハザードランプを点けて、ゆっくり速度を落とし、安全に止まれる場所まで進む。直すのは止まってから、止まるのは安全な場所に着いてから。その順番だけは、覚えておきたいところです。
情報源
- JAF Mate「ゴールデンウィークの高速道路は要注意! タイヤのパンクは意外に気づかない!?」(2025年3月30日) jafmate.jp
- JAF Mate「走行中のガタガタはトラブルの合図!? 異物を踏んで後輪がパンク…」(2023年12月7日) jafmate.jp
- NEXCO中日本「事故・故障が起きたら」 c-nexco.co.jp
- NEXCO中日本「高速道路の交通事故」 c-nexco.co.jp
- NEXCO東日本「非常用施設(非常駐車帯・非常電話)」 e-nexco.co.jp
- ホンダ「N-VAN 取扱説明書:パンクしたタイヤの交換」 honda.co.jp
- ホンダ「Hondaの交通安全:行楽Q&A Q7」 global.honda
- トヨタ「アクア 取扱説明書:タイヤパンク応急修理キット」 manual.toyota.jp
- トヨタ「GR86 取扱説明書:警告灯がついたときは」 manual.toyota.jp
- くるまのニュース「月に約9000件も!? 意外と多い『タイヤのパンク』トラブル時にはどうすべき?」(2022年9月20日) kuruma-news.jp
- Bridgestone「Run-Flat Tyres」(マレーシア公式) bridgestonetyre.com.my

