
大雨や台風のとき、道路の冠水は身近な危険です。とくにアンダーパス(鉄道や道路の下をくぐる低い道)は水が集まりやすく、毎年のように水没事故が起きています。「入らない判断」と、万一クルマが水に浸かって動けなくなったときの脱出を、JAFなどの情報をもとに整理します。
まず「入らない」:水深の目安
普通の乗用車が安全に走れるのは、ドアの下端くらいまで(床が水につからない程度)とされています。それを超えると、
- マフラーから水が入ってエンジンが止まる
- 電装品がショートして、パワーウインドウやドアロックが効かなくなる
- 床上まで来ると車体が浮いて、流される
冠水した道は深さが見た目では分かりません。アンダーパスや立体交差の下、周りより低い道は、水がたまっていたら引き返して迂回するのが原則です。どうしても迂回できない、通行が必要という場面でも、無理に進入するのは避けるべきです。次の見出しで触れる「道路冠水情報提供装置」などの表示が「通行止め」になっていれば絶対に進入しないこと、それが基本の判断です。
浸かってしまったら:ドアは「早いうちに」
JAFのテストでは、水がドアの半分(およそ50cm)まで来ると、水圧でドアはほとんど開かなくなります。浸水に気づいたら、まだ水位が低いうちに、ためらわずドアを開けて外へ出ることが大事です。
車内に水が入ってきて水位が外とそろってくると、水圧の差が減ってドアが開きやすくなります。ただしそこまで待つのは危険。順番としては、
- ① シートベルトを外す
- ② 窓が水面より上なら、窓を開けて外へ(屋根の上に上がる)
- ③ ドアが開かず窓も動かないなら、緊急脱出用ハンマーでサイドの窓の角を割る(フロントガラスは割れにくい)
脱出用ハンマーは、運転席から手が届く場所に固定しておきます。
なぜ最近、冠水事故が増えているのか
1時間に50mm以上降る「非常に激しい雨」は、40年前と比べて約1.5倍に増えています。気候変動によってゲリラ豪雨や線状降水帯による豪雨が激しくなっていることで、これまで大丈夫だった場所でも冠水するリスクが顕在化しています。全国には3,800カ所以上のアンダーパスがあり、対策が急務とされている一方、国土交通省は大雨が予想される場合に早い段階で通行止めにする予防的な措置を、一部地域で新たに始めています。実際に2026年8月には千葉県で豪雨によりアンダーパスが冠水し、水没した車に乗っていた人が死亡する事故が相次いで発生しました。「今までは平気だった道」という認識自体が、豪雨が激化する時代には通用しなくなってきている、というのが最近の傾向です。
アンダーパスはなぜ危険なのか、標識や表示はどう見るか
アンダーパスは道路と鉄道等の立体交差箇所で、地表より低い位置に掘り下げて作られた構造の道路です。周囲より低いために雨水が集まりやすく、豪雨時にはブレーキが利きにくくなるうえ視界も悪化します。手前側からは冠水状況そのものが見えにくいという点も、被害が広がりやすい理由の一つです。対策として、多くのアンダーパスには注意喚起の標識に加えて、水位計と連動した「道路冠水情報提供装置」(電光掲示板)や監視カメラが設置されています。水深が一定の高さに達すると「通行注意」「通行止め」の表示が出る仕組みになっているため、大雨の中で通行する際はこうした表示を必ず確認し、表示が出ている場合は絶対に進入しないことが基本です。全国のアンダーパスの冠水注意箇所は、国土交通省の地方整備局や都道府県が地図で公開していることもあり、よく通る道にアンダーパスがある場合は、事前に確認しておくといざというときの判断が早くなります。
「SUVは冠水に強い」は本当か
SUVの最低地上高はおおむね180〜200mm、セダンは130〜150mm程度で、その差は50mmほどです。JAFが日産エクストレイル(SUV)とトヨタマークII(セダン)で行ったテストでは、水深30cmまでは速度に関わらずどちらも通過できましたが、水深60cmになると、時速10kmというごく低速でもSUVは通過できた一方、セダンは通過できませんでした。つまり、水深が深くなるほどSUVとセダンの差がはっきり出てくるということです。ただし、これは「SUVなら安心」という意味ではありません。ひと口にSUVといっても最低地上高や悪路走破性は車種によって大きく異なり、クロスオーバー系の乗用SUVは本格的なオフロード車ほどの走破性を持たないこともあります。水深が見た目で判断できない以上、車種を問わず「冠水した道には入らない」が原則であることに変わりはありません。
水が引いたあと:エンジンをかけない
一度水に浸かったクルマは、エンジンをかけたり動かしたりしないでください。水を吸った状態で始動すると、エンジンが致命的に壊れることがあります。まずJAFやディーラーに連絡し、指示を仰ぎます。
車両保険は冠水被害に使えるか
台風・竜巻・洪水・高潮といった水害による冠水被害は、一般タイプ・エコノミー(限定)タイプいずれの車両保険でも補償されるのが一般的です。ただし、地震や噴火を原因とする津波による水没は車両保険の補償対象外となる点には注意が必要です(地震保険とは別枠の話です)。また、エンジンまで水に浸かった場合はほぼ「全損」扱いになることが多く、修理よりも買い替えが前提になるケースも珍しくありません。補償の適用条件は保険会社・契約内容によって異なるため、加入している保険会社に事前に確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
覚えておきたい3つの場面
ここまでの内容は、起きる順番で整理すると3つの場面に分かれます。①入る前(水がたまっていたら迂回する)②浸かってしまった直後(ためらわずシートベルトを外し、窓かドアから早く出る)③水が引いたあと(エンジンをかけず、まず連絡する)。とっさの場面では冷静な判断がしにくくなるからこそ、この3つの区切りだけでも覚えておくと、いざというときの行動が早くなります。
背景
アンダーパスの水没が多いのは、構造的に周りより低く、水が高いところから低いところへ流れ込むためです。短時間の強い雨(ゲリラ豪雨)では、数分で膝の高さまで水が来ることもあります。
自治体はハザードマップで浸水しやすい場所を公開しています。よく通る道が該当していないか、大雨シーズンの前に一度確認しておくと、いざというとき迂回の判断が早くなります。
情報源
- JAF「自動車が水没したときの対処と脱出方法とは?」 jaf.or.jp
- JAF ユーザーテスト「水深何cmまでドアは開くのか?」 jaf.or.jp
- 各都道府県警察・自治体の水没対処ガイド(例:長野県警察) pref.nagano.lg.jp
- 新潟日報「【アンダーパス冠水】気候変動でリスク顕在化 全国に所在、対策急務」 niigata-nippo.co.jp
- 日経クロステック「千葉豪雨、アンダーパス冠水の死亡事故 専門家『ハード対策不足は酷』」 xtech.nikkei.com
- 東京海上ダイレクト「車が水没したら自動車保険で補償される?」 e-design.net
- 国土交通省 関東地方整備局「関東甲信地域における道路冠水注意箇所マップ」 ktr.mlit.go.jp
- くるまのニュース「SUVは冠水路に強いは本当? どれくらいの地上高があると安心なのか」 kuruma-news.jp

