
「テスラが値引きを始めたらしい。今が買いどき?」——テスラの日本法人は2026年10月23日、セダンの「モデル3」とSUVの「モデルY」を一部改良して発売しました。車の電気を家電に使える外部給電(V2L)に対応し、あわせて台数限定の値引きも始めています。ただ、いま買うかどうかを考えるうえでいちばん大きいのは、値引きではありません。国の補助金が、2027年1月に登録する車から大きく下がる見込みだからです。この記事では、今回決まったことと、値引き・補助金を足し引きした実際の金額、外部給電で「まだできないこと」を整理します。
今回決まったこと
日本経済新聞、日刊自動車新聞、Impress Watch、EV Cafeの報道で確認できた内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表・発売 | 2026年10月23日に一部改良を発表し、同日発売 |
| 外部給電(V2L) | 新しいモデル3・新しいモデルY・モデルY Lが対応。使うには別売の「給電アダプター」(1万5,000円、2027年1月発売予定)が必要 |
| モデル3の主な変更 | 前席のセンターディスプレイを16インチに大型化、天井(ヘッドライナー)をブラックに |
| モデルYの変更 | 外部給電への対応(EV Cafeによると、変更点はこれのみ) |
| 車両価格 | 据え置き。モデル3は531万3,000円から、モデルYは558万7,000円から |
| 値引き(充電サポートプログラム) | モデル3は先着1,500台で26万4,000円、モデルYは先着3,500台で8万8,000円。合わせて5,000台限定。モデルY Lは対象外 |
| 同時に発表 | 新しい急速充電アダプター(CHAdeMO用、9万5,900円、2027年1月発売予定) |
※価格は消費税込み。値引きの実施期限は、確認できた報道には書かれていません。
注意したいのは、外部給電に対応したのは10月23日に発売された新しい車だということです。EV Cafeによると、すでに乗っているモデル3・モデルYは対象に含まれていません。
値引きと補助金を引くと、いくらになるか
EVには国のCEV補助金があり、テスラのモデル3・モデルY・モデルY Lは、2026年12月31日までに登録すれば127万円です。ところが経済産業省は10月21日、2027年1月1日以降に登録する車の補助額を引き下げると発表しました。見直し後の対象車両一覧をもとにした報道によると、テスラの3車種は76万2,000円になります。
| 車種 | 車両価格 | 値引き後 | 年内登録(補助127万円) | 1月以降の登録(補助76.2万円) |
|---|---|---|---|---|
| モデル3 | 531.3万円 | 504.9万円 | 377.9万円 | 428.7万円 |
| モデルY | 558.7万円 | 549.9万円 | 422.9万円 | 473.7万円 |
| モデルY L | 749万円 | (対象外) | 622万円 | 672.8万円 |
※計算例:531.3−26.4=504.9、504.9−127=377.9、504.9−76.2=428.7。558.7−8.8=549.9、549.9−127=422.9、549.9−76.2=473.7。749−127=622、749−76.2=672.8(いずれも万円)。値引きの台数が残っていることを前提にした計算で、オプション・登録諸費用・自治体の補助金は含めていません。「年内登録」の価格は日経の報道の金額と一致しています。1月以降の補助額は報道ベースの金額で、正式な額は次世代自動車振興センターの公表資料で確認してください。
東京都のように、自治体が独自にEVの補助金を出している地域では、さらに負担が下がる場合があります(日経によると東京都は70万円から)。
値引きより大きいのは「登録が年内に間に合うか」
「8万8,000円も値引きしてくれるなら、急いで決めたほうがいい?」
そう感じた人ほど、補助金の差を先に見てください。年内に登録した場合と1月以降に登録した場合の補助金の差は、127万円−76万2,000円=50万8,000円です。
| 車種 | 今回の値引き | 補助金の差(年内と1月以降) | 補助金の差は値引きの何倍か |
|---|---|---|---|
| モデル3 | 26.4万円 | 50.8万円 | 約1.9倍 |
| モデルY | 8.8万円 | 50.8万円 | 約5.8倍 |
※計算例:50.8÷26.4≒1.92、50.8÷8.8≒5.77。
モデルYの場合、補助金の差は値引きの6倍近くあります。値引きがあるかどうかより、登録が12月中に間に合うかどうかのほうが、支払う金額への影響ははるかに大きいのです。
補助金の基準になるのは、契約した日でも納車の日でもなく、新車として登録された日です。12月は登録の手続きが混み合いやすい時期でもあります。さらに、現行の予算は年内に受付を終える見込みと報じられており、申請が届く前に予算がなくなれば、年内に登録していても今の額で受け取れないおそれがあります。補助金の見直しの中身は、EVの補助金、2027年1月登録分から上限125万円→75万円にで詳しく整理しています。
注文を考えているなら、最初に確かめたいのは値引きの残り台数ではなく、「自分が選ぶ仕様の登録はいつになるか」です。
外部給電は「対応」でも、買ってすぐには使えない
今回の改良の目玉は外部給電です。日経は、災害の多い日本で停電時の非常用電源としてEVへの需要が高まっていることを背景に挙げています。ただし、使い始められる時期には注意が必要です。
| わかっていること | まだわからないこと |
|---|---|
| 充電口に専用の給電アダプター(1万5,000円)を差し込んで使う | 日本仕様のアダプターの出力(何Wまでの家電を使えるか) |
| アダプターの発売は2027年1月の予定 | アダプター以外に必要な手続き・設定の詳細 |
| 使い道の例は、停電時の照明、電気ケトル、キャンプでのホットプレートや電気毛布 | すでに乗っている車が将来対応するかどうか |
つまり、年内の登録をめざして11月や12月に納車されても、外部給電を使えるのはアダプターが発売される1月以降になります。この冬の停電への備えとして考えている人は、この「すき間」を頭に入れておいてください。
どれくらいの電気をためられるかについて、テスラはモデルY Lの電池で一般家庭の約8日分(1日10kWhを使う仮定)、スマートフォンの充電なら4,000回以上という目安を示しています。機器の変換効率は含まない試算です。なお、韓国で売られているアダプターは最大3.5kWと報じられていますが、日本版の出力は発表資料に書かれておらず、同じとは限りません。
停電のときに車の電気を使う考え方や、排気ガスへの注意などの一般的な話は、停電したら車を電源に使える?の記事にまとめています。
CHAdeMOアダプターで、充電できる場所が増える
同じ日に発表された新しい急速充電アダプターは、日本で主流の急速充電の規格「CHAdeMO(チャデモ)」の充電器でテスラ車を充電するためのものです。テスラは独自の規格(NACS)を採用しています。
テスラ専用のスーパーチャージャーは全国156か所・768基です。一方、CHAdeMOの急速充電器はコンビニや道の駅、高速道路のサービスエリアなどに約1万4,000基あります。数で比べると、使える急速充電器はおよそ18倍に増える計算です。
※計算例:14,000÷768≒18.2。基数は報道の数字で、充電器の出力や営業時間は場所によって違います。
スーパーチャージャーが近くにない地方に住んでいる人や、遠出の多い人にとっては、外部給電より、こちらのほうが日々の使い勝手に効く変更かもしれません。こちらも発売は2027年1月の予定で、価格は9万5,900円です。
あなたの場合はどう考える?
モデル3を買うつもりだった
値引き26万4,000円は、補助金と合わせると大きな額です。年内に登録できれば、値引きと補助金を引いた金額は377万9,000円からになります。16インチのディスプレイなど内装の変更もあるので、改良後の車を選ぶ理由は十分にあります。あとは先着1,500台の枠と、登録が年内に間に合うかどうかを販売窓口で確かめるのが先です。
モデルYを買うつもりだった
値引きは8万8,000円と、モデル3より小さめです。それよりも、登録が年内か1月以降かで変わる50万8,000円のほうがずっと大きな差です。仕様や色を迷って注文が遅れると、値引きよりはるかに大きい額を失うことがある、と考えておくと判断を誤りにくくなります。
停電のときの電源として期待している
外部給電はアダプターが出る1月以降の話で、日本版の出力もまだわかっていません。電気ケトルのような消費電力の大きい家電を使いたいなら、アダプターの仕様が発表されてから判断しても遅くはありません。ただしその場合、補助金は下がった後になる可能性が高い、という引き換えがあります。
すでにモデル3・モデルYに乗っている
今回の外部給電の対象には、既存の車は含まれていません。一方、CHAdeMOアダプターは「テスラ車を充電するためのもの」として発表されているので、自分の車で使えるかどうかは、発売前に公式の案内で確かめるとよいでしょう。
見るべきは値引きの額より、登録の日付
今回の改良は、外部給電と値引きという目立つ話題が二つ並びました。けれども支払う金額をいちばん大きく動かすのは、そのどちらでもなく、補助金が下がる「1月1日」をまたぐかどうかです。テスラを検討しているなら、値引きの残り台数より先に、自分の車の登録日がいつになるかを聞いてください。
情報源
- 日本経済新聞「テスラ、『モデルY』など一部改良で車両から給電 台数限定で値引き」 nikkei.com
- 日刊自動車新聞「テスラジャパン、モデル3とモデルYが外部給電に対応 台数限定の値引きプログラムも」(carview配信) carview.yahoo.co.jp
- Impress Watch「テスラ、国内向けModel 3とModel Yが家電の『給電』に対応」 watch.impress.co.jp
- EV Cafe「テスラ、V2L対応の新しいモデル3・モデルYを日本で発売。CHAdeMOアダプターも刷新」 evcafe.jp
- 日刊自動車新聞「経産省、2027年1月からのCEV補助金の見直しを発表 補助額は現在の6~8割に引き下げ」(carview配信) carview.yahoo.co.jp
- テスラの「127万円」は年内登録が最後〜1月からは76.2万円へ(次世代自動車振興センターの補助対象車両一覧をもとにした記事) touchlab.jp

