
日本で輸入車のミドルサイズSUVとしていちばん売れているメルセデス・ベンツ「GLC」に、電気自動車(EV)が加わりました。メルセデス・ベンツ日本は2026年10月28日に「electric GLC(エレクトリックGLC)」を発表し、同じ日から全国の販売店で予約注文を受け付けています。価格は後輪駆動の「GLC 250 electric」が913万円、四輪駆動の「GLC 300 4MATIC electric」が957万円です。国の補助金は250で98万円ですが、これは2026年のうちに登録した場合の金額で、年が明けると下がります。一方、納車がいつ始まるかは示されていません。買う判断に関わる数字を、決まっていることと、まだ分からないことに分けて整理します。
2つのグレードの価格と性能
| 項目 | GLC 250 electric | GLC 300 4MATIC electric |
|---|---|---|
| 駆動方式 | 後輪駆動 | 四輪駆動 |
| 価格(税込) | 913万円 | 957万円 |
| 国のCEV補助金(2026年登録の額) | 98万円 | 78万4,000円 |
| 補助金を引いた額 | 815万円 | 878万6,000円 |
| 最高出力 | 260kW(354PS) | 310kW(421PS) |
| 最大トルク | 505N・m | 800N・m |
| 電池の容量 | 85.5kWh | |
| 航続距離(WLTC) | 642km | 618km |
| 急速充電 | CHAdeMO・最大100kW。残量10%から80%まで45分 | |
| 普通充電 | 最大6.0kW | |
※Car Watch、マイナビニュース、ル・ボラン、Roadly(いずれも発表内容の報道)で照合。補助金を引いた額は編集部の計算で、都道府県や市区町村の補助金は含みません。充電時間は気温26℃の屋外でのメーカーの検証値とされています。
全長は4,845mm、全幅は1,890mm、全高は1,650mm、ホイールベースは2,970mmです(GLC 250の数値、AUTOCAR JAPANによる)。名前は同じGLCですが、エンジン車の部品を流用したのではなく、中型EV専用の新しい車台「MB.EA-M」を初めて使っています。エンジン車より全長は120mm、ホイールベースは84mm長く、後席の足元は47mm広くなりました。
GLCの名前を受け継いだ別の車、と考えたほうが中身をつかみやすい1台です。
「44万円差」のはずが、補助金を引くと63.6万円差に
表を見て、不思議に思う人がいるかもしれません。上のグレードのほうが高いのに、もらえる補助金は19万6,000円少ないのです。
理由として考えられるのが、CEV補助金の価格の線引きです。経済産業省の概要資料には、メーカー希望小売価格(税抜)が840万円以上の車は、算定した補助額に0.8を掛けると書かれています。
| グレード | 税込価格 | 税抜に直すと | 840万円の線 | 補助金 |
|---|---|---|---|---|
| GLC 250 electric | 913万円 | 830万円 | 下回る | 98万円 |
| GLC 300 4MATIC electric | 957万円 | 870万円 | 上回る | 78万4,000円(98万円×0.8と同じ額) |
※税抜は消費税10%で割り戻した編集部の計算です。0.8が掛かった結果かどうかは金額からの推定で、メーカーや窓口が個別に説明したものではありません。
税抜で見ると、250は線の10万円下、300は30万円上にいます。この線をまたぐことで、カタログ上の差44万円が、補助金を引いたあとは63万6,000円差に広がります。
四輪駆動を選ぶ人にとっては、値札より大きな差になります。その差で何が増えるかといえば、最高出力が61PS、最大トルクが295N・m上がり、雪道や雨の日の発進に効く前輪のモーターが加わる一方、航続距離は24km短くなります。
補助金は登録日で変わる。年明けなら約4割減の見込み
経済産業省は10月21日、CEV補助金を見直すと発表しました。2027年1月1日以降に新車として登録する車は、補助額がいまの約6割になります。線引きになるのは契約した日ではなく、登録した日です。くわしい仕組みはCEV補助金の見直しの記事で整理しています。
electric GLCの2027年の補助額はまだ確認できていないため、「いまの金額の6割」をそのまま当てはめた計算例を示します。
| グレード | 2026年12月31日までの登録 | 2027年1月以降の登録(計算例) | 差 | 補助金を引いた額(計算例) |
|---|---|---|---|---|
| GLC 250 electric | 98万円 | 約58.8万円 | 約39.2万円 | 約854万円 |
| GLC 300 4MATIC electric | 78.4万円 | 約47万円 | 約31.4万円 | 約910万円 |
※98万円×0.6、78.4万円×0.6とした、見直し後も同じ割合で下がるという仮定に基づく計算例です。実際の額は、見直し後の車種別の一覧で確かめる必要があります。
ここで問題になるのが、納車の時期です。発表を伝えた各媒体を見ても、納車の開始時期は書かれていません。予約はできても、年内に登録できるかどうかは、今の時点では分かりません。
補助金は先着で、9月の時点で「12月上旬〜下旬にも予算が尽きる見込み」と公表されていました。年内に登録できても、予算が残っているとは限らない点にも注意が必要です。販売店で最初に聞くべきことは、値引きよりも「自分の注文はいつ登録できそうか」でしょう。
エンジン車のGLCと比べると?
「EVは高い」という印象があるかもしれません。ただ、GLCについては少し事情が違います。
| 車 | 価格(税込) | 駆動方式 |
|---|---|---|
| GLCの価格帯の入り口(エンジン車) | 839万円 | 四輪駆動 |
| GLC 220 d 4MATIC スポーツ | 920万円 | 四輪駆動 |
| GLC 250 electric | 913万円 | 後輪駆動 |
| GLC 250 electric(補助金98万円を引いた額) | 815万円 | 後輪駆動 |
※エンジン車の金額は、くるまのニュースに掲載された価格帯と、2026年3月30日の追加グレードの発表内容による。価格は変更されることがあり、装備も違うため、単純な優劣を示すものではありません。
補助金を満額受けられれば、electric GLCの250はエンジン車の入り口より安く買える計算です。もちろん駆動方式も装備も同じではなく、比べる相手として完全には揃っていません。それでも、「EVだから100万円以上高い」という見方は、この車には当てはまりません。
もう一つ知っておきたいのは、エンジン車のGLCも新しくなる予定があることです。Car Watchによると、新しいエンジン車のGLCは2027年以降に導入されます。今のエンジン車を選ぶか、EVを選ぶか、次のエンジン車を待つかという、3つの道があることになります。
800Vなのに急速充電は45分?
electric GLCのシステム電圧は800Vです。800Vと聞くと、とても短い時間で充電できそうに思えます。ところが、日本で発表された急速充電の数字は、CHAdeMOで最大100kW、10%から80%まで45分です。
電池の70%分は約60kWhです。45分で入れると、充電の出力は平均で約80kWの計算になります。航続642kmの7割を単純に当てはめると、約450km分です。
※85.5kWh×0.7≒59.9kWh、59.9÷0.75時間≒80kW、642km×0.7≒449km。カタログの航続距離をそのまま使った計算例で、実際の距離は気温や速度で変わります。
つまり、日本での使い方は「数分で満タンの車」ではなく、「大きな電池に、長めの休憩でしっかり入れる車」と考えるのが現実に近いでしょう。45分の数字は150kWタイプの充電器を使った場合とされているので、出力の小さい充電器ならもっと時間がかかります。冬に充電が遅くなる理由は冬の急速充電の記事で説明しています。
家で充電する場合、普通充電の上限は6.0kWです。10%から80%までを同じ電力で入れ続けたとすると、約10時間です。帰宅して翌朝まで、という使い方にちょうど収まります。
※59.9kWh÷6kW≒10時間。損失や、設備の出力の違いは含めていない計算例です。
外部に電気を取り出すV2Lにも対応しており、給電は電池の残量が20〜50%の範囲で、10%刻みで止める設定ができるとされています。また、提携充電器が約2万6,900口ある「Mercedes-Benz Charge」は、申し込みから1年間、月額基本料金と充電料金が無料です。
広さと装備で見ておきたいところ
- 荷室:後席を使う状態で520L、後席をたたむと最大1,690L。ボンネットの下にも128Lの収納があります。
- 画面:標準は10.3インチのメーターに14インチの画面2枚。横幅39.1インチの「MBUXハイパースクリーン」はオプションです。
- 小回り:後輪が最大4.5度曲がり、ドライバーズパッケージを選んだ場合の最小回転半径は約5.2mです。
- 足回り:電子制御のエアサスペンション「AIRMATIC」はオプションです。
- 天井:透明度を区画ごとに変えられるパノラミックルーフが標準装備です。
- 顔つき:フロントグリルに942個の光るドットが並びます。
- 保証:車両は5年または10万km。高電圧バッテリーは8年または16万kmで、残りの容量が70%を下回った場合も対象です。
気をつけたいのは大きさです。全幅1,890mm、全高1,650mmは、古い機械式駐車場などの「幅1,850mm・高さ1,550mmまで」という制限に収まりません。マンションの駐車場を使っている人は、価格より先に確かめておきたいところです。
まだ分からないこと
| 項目 | 今の状況 |
|---|---|
| 納車の開始時期 | 発表の報道には記載なし |
| 2027年1月以降の補助額 | 全体の見直しは決定。この車の金額は未確認 |
| 新しいエンジン車のGLC | 2027年以降に導入。価格は未確認 |
| GLBのEV | 年内に登場予定。価格などは未確認 |
同じメルセデスのEVでは、GLBも年内に出る予定です。もう少し小さいSUVを考えている人は、そちらの発表を待ってから比べる選択肢もあります。
どんな人が、どう考えるとよいか
いまエンジン車のGLCを検討している人
見積もりを取るなら、electric GLCも並べて見る価値があります。補助金が満額出るかどうかで、差は大きく変わります。「補助金なし」「年明けの金額」「満額」の3通りで比べておくと、納車の時期が分かったときにすぐ判断できます。
四輪駆動を選びたい人
補助金を引くと差は約64万円です。雪の多い地域なら、その価値はあるでしょう。一方、雪道をほとんど走らない人は、航続距離が長く、補助金も多い250のほうが、数字の上では無理のない選択です。
家で充電できない人
45分の急速充電を、ふだんの充電にするのは負担が大きくなります。無料期間のある充電サービスも、1年を過ぎてからの費用まで考えておきましょう。職場や近所で普通充電が使えるかどうかが、買う前の確認事項になります。
補助金が目当てで急ぎたい人
40万円近い差は小さくありません。ただ、登録の時期と予算の残りは、自分では決められません。「年内に間に合えばうれしい」くらいに考え、年明けの金額でも買うかどうかで決めておくと、納車が遅れても後悔せずに済みます。
値札の次に、登録の日を聞く
913万円という数字は、エンジン車のGLCのすぐ隣にあります。ただ、この車の本当の値段は、いつ登録できるかで約40万円動きます。
販売店で最初に確かめるのは、値引きの額ではなく、カレンダーの日付です。
情報源
- Car Watch(メルセデス・ベンツの新型EV「エレクトリックGLC」日本初公開、2026年10月30日) car.watch.impress.co.jp
- マイナビニュース(GLCがEVに! メルセデス・ベンツ日本社長、2026年10月28日) news.mynavi.jp
- AUTOCAR JAPAN(日本で最も売れているメルセデス・ベンツ『GLC』にEV登場) autocar.jp
- ル・ボラン(メルセデス・ベンツ「エレクトリックGLC」待望の日本上陸、2026年10月30日) levolant.jp
- Roadly(GLC初のEV「electric GLC」2026年国内発表) roadly.jp
- WEB CARTOP(carview!掲載、最新「electric GLC」は913万円から日本上陸) carview.yahoo.co.jp
- 経済産業省(令和7年度補正CEV補助金の概要) meti.go.jp
- 経済産業省(CEV補助金の補助額の見直しについて、2026年10月21日) meti.go.jp
- くるまのニュース(GLC 220d 4MATIC スポーツの発売、価格帯の掲載) kuruma-news.jp

