
経済産業省は2026年10月21日、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)を買うときにもらえる国の補助金「CEV補助金」の金額を見直すと発表しました。2027年1月1日以降に新車として登録される車から、補助額はいまの約6割(軽EVの一部は約8割)に下がります。「今年のうちに買ったほうがいいの?」「契約したけど納車が来年になりそう」——そう思った人に向けて、公式の発表資料をもとに、決まったこと・まだ決まっていないこと、そして自分の場合にいくら変わるのかを整理します。
何が決まった? 補助の上限は、EVで125万円から75万円に
経済産業省が公表した資料「令和7年度補正クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の補助額の見直しについて」(2026年10月21日)で示された、いちばん上の段(得点の高い車)の金額を並べると、次のとおりです。
| 車の種類 | いま(2026年12月31日登録まで) | 見直し後(2027年1月1日登録から) | 下がる額 | 割合 |
|---|---|---|---|---|
| EV(普通車) | 125万円 | 75万円 | −50万円 | 6割 |
| 軽EV | 55万円 | 44万円 | −11万円 | 8割 |
| PHEV | 80万円 | 48万円 | −32万円 | 6割 |
| FCV(燃料電池車) | 145万円 | 87万円 | −58万円 | 6割 |
※経済産業省の資料(2026年10月21日)の「得点」がいちばん高い段の金額。日刊自動車新聞(同日配信)も同じ金額を伝えています。下がる額と割合は資料の金額から計算しました。このほかに、メーカーの鋼材の取り組み(GX)を評価する加算額があり、最大5万円から最大3万円に(軽EVは最大3万円から最大1.8万円に)下がります。
適用の線引きは、契約した日でも、申請した日でもありません。資料には「令和9年1月1日以降に新車として新規登録を受ける車両」と書かれています。
分かれ目になるのは「いつ買うか」ではなく、「いつ登録されるか」です。
年内に契約していても、納車と登録が年明けになれば、見直し後の金額になる、ということです。
「得点」で決まる仕組みは変わらない。全部の段で下がる
CEV補助金の額は、車ごとに一律ではありません。車の性能に加えて、充電の設備づくり、部品の安定した供給、整備の体制など、メーカーの取り組みを点数にして評価し、その得点の段に応じて金額が決まる仕組みです。今回の見直しでも、この決め方は「引き続き維持」とされています。
変わるのは、各段の金額です。資料の表を、EVとPHEVについて全部並べると次のようになります。
| 得点 | EV いま→見直し後 | 軽EV いま→見直し後 | PHEV いま→見直し後 |
|---|---|---|---|
| 130点〜 | 125万→75万円 | 55万→44万円 | 80万→48万円 |
| 115〜129点 | 95万→57万円 | ||
| 100〜114点 | 65万→39万円 | 55万→36万円 | 60万→36万円 |
| 85〜99点 | 45万→27万円 | 45万→27万円 | 45万→27万円 |
| 70〜84点 | 35万→21万円 | 35万→21万円 | 35万→21万円 |
| 55〜69点 | 25万→15万円 | 25万→15万円 | 25万→15万円 |
| 〜54点 | 15万→9万円 | 15万→9万円 | 15万→9万円 |
※経済産業省の資料(2026年10月21日)より。GXの加算額は含みません。FCVは、100点以上で145万→87万円、85〜99点で115万→69万円、70〜84点で85万→51万円、55〜69点で55万→33万円、54点以下で25万→14万円です。
報道で「軽EVは8割」と伝えられているのは、得点が115点以上の軽EVの話です。表を見ると、いままで同じ55万円だった軽EVのうち、100〜114点の段は36万円と、約65%まで下がります。同じ軽EVでも、得点の段によって下がり方が違います。自分が考えている車がどの段にいるかは、次世代自動車振興センター(補助金の窓口)が公表している車種ごとの一覧で確かめることになります。
EVが売れているのに、なぜ減らすの?
「国はEVを増やしたいはずなのに、補助を減らすのは逆では?」と感じる人もいると思います。
理由は、資料にはっきり書かれています。いまのCEV補助金は令和7年度の補正予算(報道では約1,100億円)でまかなわれていて、申請の受け付けは本来2027年2月12日まで続く予定でした。ところが申請が想定より多く、9月の時点で「12月上旬〜下旬にも予算が尽きる見込み」と公表されていました。報道では、テスラや国産EVの販売が好調だったことが理由に挙げられています。
そこで、残っているお金を、できるだけ長く、できるだけ多くの人に配るために、1台あたりの金額を下げる、というのが今回の見直しの考え方です。資料の言葉では「現行予算の範囲内で可能な限り長期間にわたり補助を継続するため」とされています。
数字にすると、違いが分かりやすくなります。
| 1億円の予算で補助できる台数 | 計算 | 台数 |
|---|---|---|
| いまの上限(125万円)のEV | 1億円 ÷ 125万円 | 80台 |
| 見直し後の上限(75万円)のEV | 1億円 ÷ 75万円 | 約133台 |
※すべての車が上限額を受け取ると仮定した単純な計算例です。実際の補助額は車ごとに違います。
同じお金で、補助を受けられる台数は約1.7倍になります。1台あたりは減りますが、補助がぷっつり途切れる期間をつくらないための調整だと読むと、「売れているのに減らす」理由がつながります。
流れを振り返ると、補助の上限は2026年に一度大きく上がっていました。報道では、2026年1月1日以降に登録したEVの上限は90万円から130万円(加算込み)に、PHEVは60万円から85万円に引き上げられたとされています。今年は「補助が手厚い年」で、それが1年で元に近い水準へ戻る、と見ることもできます。
自分の場合はいくら変わる? 3つの計算例
実際にいくら変わるかは、車ごとの得点で決まります。ここでは、得点の段がいまと変わらず、GXの加算もいまと同じく最大まで付く、という仮定に基づく計算例を示します。実際の金額は、見直し後の車種ごとの一覧で必ず確かめてください。
| 例 | いま(加算込み) | 2027年1月以降(加算込み) | 差 |
|---|---|---|---|
| いちばん上の段のEV | 125万+5万=130万円 | 75万+3万=78万円 | −52万円 |
| いちばん上の段の軽EV | 55万+3万=58万円 | 44万+1.8万=45.8万円 | −12.2万円 |
| いちばん上の段のPHEV | 80万+5万=85万円 | 48万+3万=51万円 | −34万円 |
※経済産業省の資料の金額を使った計算例です。たとえばトヨタbZ4Xはいま130万円の補助が出ていると報じられており、見直し後は78万円になる見通しと伝えられています。
差が52万円というのは、たとえば5年のローンで考えると、月に約8,700円の違いです(52万円÷60か月)。軽EVの12.2万円なら、月に約2,000円です。
PHEVも影響は小さくありません。たとえば、トヨタRAV4のPHEV(Z、600万円)は、いまの85万円の補助を引くと515万円で、ハイブリッドのZ(490万円)との差は25万円です(RAV4の記事)。補助が51万円になったと仮定すると549万円で、差は59万円に広がります。補助金を引くと「PHEVのほうが割安」になっていた車では、その逆転が起きにくくなります(PHEVとHEVの選び方の記事)。
決まったこと・まだ決まっていないこと
| 項目 | いまの状況 |
|---|---|
| 見直し後の補助額(得点の段ごと) | 決定(経済産業省の資料) |
| 適用の線引き | 決定:2027年1月1日以降に新車として登録した車 |
| GXの加算額 | 決定:最大5万→3万円(軽EVは3万→1.8万円) |
| いまの予算が尽きる時期 | 見込みのみ:12月上旬〜下旬(9月の公表)。日付は未定 |
| 1月以降の申請の受け付けと、お金が振り込まれる時期 | 報道のみ:1月以降も申請を受け付け、振り込みは来年度の予算が成立してから、と日刊自動車新聞が報道 |
| 車種ごとの見直し後の金額 | 補助金の窓口の一覧で確認(得点の段で決まる) |
もう一つ知っておきたいのは、申請が到着した順の先着だという点です。予算の上限に達した時点で受け付けは締め切られます。12月の登録で間に合うかどうかは、その時点の予算の残りしだいで、いまの段階では誰にも断言できません。また申請には、登録日から数えた期限が決まっています(原則1か月以内とされています)。
どう動けばいい? 4つのケース
すでに契約していて、年内に納車・登録できそうな人
登録の日付がそろえば、いまの金額の対象です。ただ、予算は先着順で、12月のうちに尽きる見込みが示されています。登録が済んだら、申請を後回しにしないことがいちばん大事です。申請を販売店に任せる場合も、いつ出すのかを確かめておくと安心です。
契約したけれど、納車が来年になりそうな人
このままでは、見直し後の金額になる可能性が高い人です。販売店に「年内に登録できる見込みはあるか」を一度聞いてみる価値はあります。ただ、無理に年内登録を急いでも、予算が先に尽きれば意味がありません。差額がいくらになりそうかを先に計算し、「その差で買う車を変えるか」を考えておくほうが現実的です。
これから選ぶ人(軽EV)
軽EVは、得点がいちばん上の段なら下がり方が小さく(計算例で約12万円)、もともと価格も補助額も小さいため、影響は相対的に軽めです。スズキの軽EV「e SKY」のように新しく出てくる車もあるので(e SKYの記事)、補助金のために選択肢を狭めるより、使い方に合う車を選ぶほうが後悔は少ないはずです。ただし、100〜114点の段の車は約19万円下がるので、どの段かは確かめておきましょう。
これから選ぶ人(EV・PHEVの普通車)
いちばん影響が大きいグループです。上限の段のEVなら約50万円、PHEVなら約30万円の差が出ます。PHEVとハイブリッドで迷っている人は、補助金が減った後の価格で比べ直してみてください。それでも「家で充電できて、ふだんの距離を電気でまかなえる」なら、PHEVやEVの燃料代の安さは変わりません(自宅と外出先の充電代の記事)。補助金は買うときに一度きり、燃料代の差は乗っているあいだずっと続きます。
補助金は「いつまで」より「いつ登録か」で考える
今回の見直しで、EVの補助は「たくさん出る年」から「長く続ける年」へ切り替わります。1台あたりの金額は下がりますが、補助そのものが年明けで終わるわけではありません。
迷ったときに見るべき日付は、カレンダーの12月31日ではなく、自分の車の登録日です。そこから逆算すれば、いま動くべきか、来年の金額で考え直すべきかが見えてきます。
情報源
- 経済産業省(令和7年度補正クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の補助額の見直しについて、2026年10月21日) meti.go.jp
- 日刊自動車新聞(経産省、2027年1月からのCEV補助金の見直しを発表 補助額は現在の6~8割に引き下げ、2026年10月21日) carview.yahoo.co.jp
- 日刊自動車新聞(EVなどのCEV補助金、2027年1月以降も継続へ 補助額は6~8割ほどに抑制、2026年10月20日) news.yahoo.co.jp
- ベストカーWeb(4月1日からCEV補助金が激変、2026年4月1日) bestcarweb.jp
- おとなの自動車保険(新車購入の補助金はいくら?) sompo-direct.co.jp
- 次世代自動車振興センター(CEV補助金) cev-pc.or.jp

