
「スライドドアの軽がほしい。でもタントやN-BOXだと少し高いし、背も高すぎる気がする」——そんな人の候補に入ってくるのが、ダイハツの「ムーヴ」です。2025年6月にフルモデルチェンジした7代目で、ムーヴとして初めて、後ろのドアを全グレードでスライドドアにしました。いちばん安いグレードは136万9,500円からです。ただ、安さの裏には、背の高い軽ワゴンと比べてあきらめている部分もあります。この記事では、ムーヴが何を残して何を削った車なのかを、ダイハツの発表と諸元の数字から整理し、グレードの選び方までまとめます。
ムーヴは「背の高さ」を削ったスライドドアの軽
まず基本の数字を、同じダイハツで背の高い軽ワゴンの「タント」と並べます。
| 項目 | ムーヴ | タント |
|---|---|---|
| 全長×全幅 | 3,395×1,475mm | 3,395×1,475mm |
| 全高(2WD/4WD) | 1,655mm/1,670mm | 1,755mm/1,775mm |
| ホイールベース | 2,460mm | 2,460mm |
| 室内長×室内幅×室内高 | 2,140×1,335×1,270mm | 2,125×1,350×1,370mm |
| 車両重量(2WD) | 860〜890kg | 880〜930kg |
| 後ろのドア | 両側スライドドア(全グレード) | 両側スライドドア。助手席側は前後ドアの間に柱のない「ミラクルオープンドア」 |
| いちばん安い価格 | 136万9,500円 | 149万6,000円 |
※寸法・重量はMotor-Fanの比較記事(ダイハツの発表値)、ムーヴの全長・全幅・全高はcar repoの諸元とも一致。価格はダイハツ公式サイトのメーカー希望小売価格(消費税込み)。
大きさの枠(長さと幅)は軽自動車の上限いっぱいで同じ、ホイールベースも同じです。違うのは高さで、ムーヴは外も中もタントより10cm低くなっています。
ムーヴは、スライドドアの便利さは残したまま、背の高さと「柱のないドア」をあきらめて、約13万円安くした軽ワゴンです。
※計算例:1,496,000−1,369,500=126,500円。最安グレードどうしの比較で、装備の内容は同じではありません。
背が低いのに、室内の長さはタントより長い
「背が10cm低いなら、そのぶん車内も狭いのでは?」
そう思いがちですが、数字を見ると狭くなっているのは「上」だけです。室内長はムーヴが2,140mmで、タントの2,125mmより15mm長くなっています。前の席と後ろの席の間隔(ヒップポイント間)も1,055mmあると、ダイハツは発表しています。座ったときの足元の広さは、背の高い軽ワゴンと大きくは変わりません。
差が出るのは、頭の上と、立てたまま積みたい荷物の高さです。室内高1,270mmは、子どもが車内で立ったまま着替えたり、背の高い観葉植物や自転車を立てて積んだりするには足りない場面があります。反対に、大人が座って移動するだけなら、天井の10cmの差を感じる場面は多くありません。
背が低いことには、外から見て分かりにくい利点もあります。同じ2WDどうしで比べると、車両重量はタントより20〜40kgほど軽くなっています。ダイハツはムーヴ専用のばねやダンパー、ハンドルの味付けをしていると説明しています。
グレードと価格:4つから選ぶ
ムーヴのグレードは4つです。2026年7月29日の一部改良で、価格は改定されています。
| グレード | エンジン | 2WD | 4WD | パワースライドドア |
|---|---|---|---|---|
| L | 自然吸気 | 136万9,500円 | 149万6,000円 | なし(手動) |
| X | 自然吸気 | 150万1,500円 | 162万8,000円 | 左側が標準(右側はオプション) |
| G | 自然吸気 | 176万5,500円 | 189万2,000円 | 左側が標準(右側はオプション) |
| RS | ターボ | 194万7,000円 | 207万3,500円 | 両側が標準 |
※メーカー希望小売価格(消費税込み)。価格はCar and Driverとcar repoの改良後価格(2026年7月29日発売分)で、ダイハツ公式サイトの「〜から」の価格とも一致。パワースライドドアの設定は2025年6月のダイハツの発表資料とくるまのニュースの報道による。
2026年7月の改良では、7インチの液晶を使ったデジタルメーターが採用され、運転支援の「スマートアシスト」が、横断する自転車や、交差点で右折するときの対向車、右左折するときの横断歩行者も検知するようになりました。値上げはLとXが1万1,000円、GとRSが4万9,500円です。
グレードの差をいちばん分かりやすく分けるのは、次の3つの装備です。
| 装備 | L | X | G | RS |
|---|---|---|---|---|
| パワースライドドア | - | 左側 | 左側 | 両側 |
| 電動パーキングブレーキ(オートブレーキホールド付) | - | - | ○ | ○ |
| 前の車についていくクルーズコントロール(ACC) | - | - | オプション | ○ |
※2025年6月のダイハツの発表資料による。細かい装備はグレードや年式で変わることがあるため、最新の装備表で確認してください。
どのグレードを選ぶかの分かれ目
LとXの差13万2,000円は、ほぼ「電動の左ドア」の値段
LからXに上げると、2WDどうしで13万2,000円高くなります。その差でいちばん大きいのは、助手席側の後ろのドアが電動になることです。子どもの手を引きながら、荷物を抱えながら、といった場面でボタン一つでドアが開くかどうかは、毎日の使い勝手を大きく変えます。後ろの席に人や荷物を載せる機会が多いなら、Xから考えるのが無難です。一人や二人で乗ることが多く、後ろのドアはたまに開けるだけなら、Lでも困ることは少ないでしょう。
XとGの差26万4,000円は「楽に走るための装備」
Gになると、電動パーキングブレーキとオートブレーキホールド(信号待ちでブレーキから足を離しても止まったままになる機能)が付き、ACCをオプションで選べるようになります。高速道路や渋滞の多い道をよく走る人ほど、この差が効いてきます。近所の買い物や送り迎えが中心なら、Xで十分と考える人も多いはずです。
RSを選ぶ理由は、ターボと「両側電動ドア」
ターボエンジンを選べるのはRSだけです。自然吸気の52PSに対して64PS、トルクは6.1kgmから10.2kgmへと大きく増えます。坂道の多い地域や、高速道路で合流・追い越しをする機会が多い人には、この差は分かりやすく出ます。
燃費はほとんど変わりません。WLTCモードでX・Gは22.6km/L、RSは21.5km/L(いずれも2WD)です。年に8,000km走り、ガソリンが1Lあたり170円だとすると、年間の燃料代の差は3,000円ほどです。
| グレード(2WD) | WLTC燃費 | 年間の給油量 | 年間の燃料代 |
|---|---|---|---|
| X・G(自然吸気) | 22.6km/L | 約354L | 約60,200円 |
| RS(ターボ) | 21.5km/L | 約372L | 約63,300円 |
※年間8,000km・1Lあたり170円という仮定に基づく計算例。8,000÷22.6≒354.0L×170≒60,177円、8,000÷21.5≒372.1L×170≒63,256円、差は約3,079円。実際の燃費は走り方や季節で変わります。4WDのWLTC燃費は、X・Gが20.6km/L、RSが19.9km/Lです。
つまり、RSとGの差18万1,500円は、燃料代ではなく、ターボの余裕と両側の電動ドア、標準のACCに払うお金です。
月6,000台の目標を大きく上回る売れ方
ダイハツが発表時に掲げたムーヴの月の販売目標は6,000台でした。全国軽自動車協会連合会の統計では、2026年4〜9月の半年間のムーヴの販売は53,142台で、軽自動車の中で上位に入っています。1か月あたりに直すと約8,900台で、目標の1.5倍ほどです。
※計算例:53,142÷6≒8,857台、8,857÷6,000≒1.48。前年の同じ時期(新型の発売直後を含む)と比べると87.8%でした。
同じ期間のタントは55,607台で、ムーヴとほぼ並んでいます。背の高い軽ワゴンと「少し低いスライドドアの軽」が、同じくらい選ばれていることになります。
買う前に知っておきたい割り切り
- 天井はタントより10cm低い:車内で立って着替える、背の高い荷物を立てて積む、といった使い方には向きません。
- 柱のないドアはない:タントのミラクルオープンドアのように、前後のドアを開けると大きな開口になる仕組みはありません。
- Lには電動ドアがない:XとGも電動は左側だけで、運転席側の電動はオプションです。両側が電動なのはRSだけです。
- ターボはRSだけ:「装備はXで十分だけどターボがほしい」という選び方はできません。
- ACCはGのオプションかRS:L・Xには設定がないため、高速道路をよく走るなら最初からGかRSで考える必要があります。
- 全高1,655mm:背の高い軽ワゴンよりは低いものの、高さ制限が1,550mmの機械式駐車場には入りません。駐車場の制限は事前に確かめてください。
あなたの場合はどう考える?
子どもの送り迎えが中心で、チャイルドシートを使う
後ろのドアを開ける回数が多いので、左側が電動になるX以上が候補です。ただ、子どもを車内で立たせて着替えさせたい、ベビーカーを畳まずに積みたい、という場合は、天井の高いタントやN-BOXと実車で比べてからでも遅くありません。
一人か二人での通勤・買い物が中心
後ろのドアを開ける機会が少ないなら、いちばん安いLでもスライドドアの恩恵は受けられます。駐車場が狭くて隣の車との間があまりない人には、手動でもスライドドアであること自体が助かる場面があります。
親の通院や送迎で、後ろに人を乗せることが多い
乗り降りのたびに開け閉めするので、電動ドアのあるX以上を選ぶと楽です。天井の高さよりも、座ったときの足元の広さが大事なら、ムーヴの室内長は十分な数字です。
高速道路や坂道をよく走る
ACCが標準でターボのRSか、ACCをオプションで付けたGが候補です。ターボで燃料代が大きく増えるわけではないので、走る道の条件で決めて問題ありません。
「どれだけ高い天井が必要か」で決める
ムーヴを選ぶかどうかは、スライドドアがほしいかどうかではなく、その先の「どれだけ高い天井が必要か」で決まります。座って移動するのが中心なら、10cm低い天井と引き換えに約13万円安くなる選び方は、十分に筋が通っています。軽のスライドドア車の比べ方は、N-BOXとはどんな車かや、スペーシアの記事も参考にしてください。
情報源
- ダイハツ工業 ニュースリリース「新型『ムーヴ』を発売」(2025年6月5日) daihatsu.com
- ダイハツ ムーヴ 公式サイト(価格・燃費) daihatsu.co.jp
- ダイハツ タント 公式サイト(価格) daihatsu.co.jp
- Motor-Fan「新型ムーヴとタントを画像と数値で比べてみる!」 motor-fan.jp
- CAR and DRIVER「ダイハツ・ムーヴ/ムーヴ キャンバスがマイナーチェンジ」 caranddriver.co.jp
- car repo「ダイハツ 新型 ムーヴ 一部改良 2026年7月29日発売」 car-repo.jp
- くるまのニュース「135万円から! ダイハツ新型『ムーヴ』発表!」 kuruma-news.jp
- 全国軽自動車協会連合会「軽四輪車 通称名別 新車販売速報」 zenkeijikyo.or.jp

