
三菱自動車の「デリカD:5」は、2007年1月に発売されてから、一度もフルモデルチェンジをしていないミニバンです。ところが、発売から19年目の2025年度に、国内の年間販売台数が過去最高を記録しました。古い車がなぜ今いちばん売れているのか。その答えは、ほかのミニバンにはない「悪路に強い」という性格にあります。2026年1月の大幅改良後の最新の公式情報をもとに、デリカD:5がどんな車で、どんな人に合うのかを整理します。
ひとことで言うと「SUVの足を持つミニバン」
まず、今のデリカD:5の基本を表にまとめます。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| どんな車 | 3列シートのミニバン。三菱は「オールラウンドミニバン」と呼んでいる |
| 発売 | 2007年1月(大幅改良は2019年2月、2026年1月) |
| エンジン | 2.2L 直列4気筒クリーンディーゼルターボ(145PS/380N・m) |
| 変速機・駆動 | 8速AT・全車4WD |
| 大きさ | 全長4,800mm×全幅1,815mm×全高1,875mm |
| 最低地上高 | 185mm |
| 乗車定員 | 7人または8人 |
| 燃費(WLTCモード) | 12.9km/L |
| 価格 | 451万円〜494万4,500円(3グレード) |
※三菱自動車の公式サイトの主要諸元と、2025年12月18日のニュースリリースによる(2026年10月6日時点)。
見た目も中身もミニバンですが、足回りと駆動の考え方はSUVに近い車です。全車が4WDで、エンジンはディーゼルだけ。2WDやガソリン車、ハイブリッド車は選べません。
デリカD:5は、「ミニバンを選んだうえで、行ける場所を広げたい人」のための車です。
「19年目の車が、過去最高に売れている」のはなぜ?
普通、車はモデルチェンジから時間がたつほど売れなくなります。新しいライバルが出てきて、装備や燃費で見劣りしていくからです。
ところがデリカD:5は逆でした。三菱自動車によると、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の国内販売台数は26,379台。発売直後の2007年度の記録を超えて、過去最高になりました。2020年度以降は、毎年度販売台数を伸ばし続けているといいます。1か月あたりにすると、約2,200台です。
※26,379÷12≒2,198。月ごとの台数は実際には変動します。
「そんなに古い車が、今になって売れるものなの?」と思うのは自然です。この一見おかしな動きには、はっきりした理由があります。
- 2019年の大幅改良で「デリカらしさ」を取り戻した。三菱の広報は、発売当初のスタイリッシュな顔には「デリカらしくない」という声もあったと振り返っています。2019年2月の大幅改良で、押し出しの強い顔つき、上質な内装、改良したディーゼルエンジンと8速AT、予防安全装備を一気に取り入れ、評判が変わったと説明しています。
- アウトドアの流行と重なった。キャンプなどの人気が、悪路に強いミニバンという性格に合いました。
- 直接のライバルがいない。三菱の広報も、ほかに同じような車がない「独自性の強さ」を理由に挙げています。
- 弟分「デリカミニ」のヒット。2023年に出た軽自動車のデリカミニが人気になり、「デリカ」という名前そのものの価値が上がったとされています。
つまり、デリカD:5は古くなって売れなくなる車ではなく、「代わりがない車」として、時間がたつほど価値が知られていった車です。2026年1月の大幅改良も、その流れを後押ししたとみられています。
ミニバンなのに悪路に強い、3つの理由
デリカD:5のいちばんの特徴は、ミニバンとしてはめずらしく、雪道や砂利道、ぬかるんだ道に強いことです。理由は大きく三つあります。
1. 床下に余裕がある:最低地上高185mm
最低地上高は、地面から車体のいちばん低いところまでの高さです。デリカD:5は185mmあります。たとえば本格的なSUVのランドクルーザー250は215mm(グレードによる)なので、その差は30mm。ミニバンでありながら、SUVに近い高さを確保しています。
報道で紹介されている数値では、坂や段差に入るときの角度の余裕を示すアプローチアングルが21.0度、車体の中央が段差の頂点にこすらないかを示すランプブレークオーバーアングルが16.5度、坂から出るときのディパーチャーアングルが23.0度です。轍(わだち)の深い雪道や、キャンプ場の段差のある入口で、車体の下をこすりにくい形になっています。
2. 4WDと、それを賢く使う「S-AWC」
全車が4WDです。さらに2026年1月の大幅改良で、三菱独自の車両運動統合制御システム「S-AWC」が新たに付きました。四つのタイヤそれぞれの駆動力やブレーキを車が自動で調整して、滑りやすい道での安定や、思ったとおりに曲がる操縦性を高める仕組みです。報道では、電子制御の4WD、左右のタイヤのブレーキ制御(AYC)、横滑りを抑える制御などを一つにまとめて制御すると説明されています。
あわせて、路面に合わせて選ぶドライブモード(NORMAL、ECO、GRAVEL=砂利、SNOW=雪)と、急な下り坂で車がゆっくりした速度を保ってくれるヒルディセントコントロールも付きました。
3. 低い回転から力が出るディーゼル
2.2Lディーゼルの最大トルク380N・mは、2,000回転という低めの回転数で出ます。重い車をゆっくり確実に動かしたい悪路や、人と荷物をたくさん載せた坂道では、この「低い回転からの力」が効きます。車両重量は約2トンありますが、それを動かすためのエンジンです。
なお、このエンジンは2019年の改良で主要な部品の約半分を見直したものを、2026年の改良でもそのまま使っています。排ガスをきれいにするために尿素水(AdBlue)を使う仕組みで、定期的な補充が必要です。
2026年1月の大幅改良で変わったこと
2026年1月9日に発売された改良型のおもな変更点です。
| 分野 | おもな変更点 |
|---|---|
| 走り | S-AWCを採用、4つのドライブモード、ヒルディセントコントロール |
| 外観 | フロントグリルと前後バンパーのデザインを変更、ホイールアーチモールを追加、18インチアルミホイール、テールランプの間に「DELICA」の文字 |
| 内装 | 8インチのカラー液晶メーター、金属調のアクセントを使ったインパネ、USB Type-Cの追加 |
| 安全 | 衝突被害軽減ブレーキが自転車も検知するように。後退時の誤発進抑制も |
グレードと価格は次のとおりです。いずれも7人乗りと8人乗りを選べます。
| グレード | 価格(税込) | Gとの差 |
|---|---|---|
| G | 451万円 | - |
| G-Power package | 474万6,500円 | +23万6,500円 |
| P | 494万4,500円 | +43万4,500円 |
※差は編集部の計算です。グレードごとの装備の違いは、三菱自動車の公式サイトや販売店で確認してください。
見た目は大きく変わりましたが、エンジンと車の骨格は従来のままです。「新型」と呼ばれていても、フルモデルチェンジではなく大幅改良である点は押さえておきましょう。
燃料代と航続距離を、実感できる数字にすると
WLTCモード燃費は12.9km/Lです。約2トンの4WDミニバンとしては、ディーゼルらしく悪くない数字ですが、実際の暮らしではどれくらいかかるのでしょうか。
| 年間走行距離 | 使う軽油の量 | 燃料代の目安 |
|---|---|---|
| 5,000km | 約388L | 約6.2万円 |
| 10,000km | 約775L | 約12.4万円 |
| 15,000km | 約1,163L | 約18.5万円 |
※WLTCモード燃費12.9km/Lで走り、軽油を1Lあたり159.5円(資源エネルギー庁の調査による2026年9月上旬の全国平均)で買ったと仮定した計算例です。実際の燃費は運転のしかた、乗る人数や荷物、季節、道路状況で変わり、燃料価格も変動します。
燃料タンクは64Lです。同じくWLTCモード燃費で計算すると、満タンから空になるまでに約826km走れる計算になります。東京から片道400km程度の行き先なら、計算上は往復できる距離です。実際にはタンクを空になるまで使うことはないので、「遠出の途中で給油を気にする回数が少ない車」くらいに考えておくとよいでしょう。
※64×12.9=825.6km。あくまで計算上の値です。
買う前に知っておきたい割り切り
デリカD:5は、何でもできる万能の車ではありません。悪路への強さと引きかえに、割り切っている部分もあります。
- 背が高い:全高は1,875mmあります。マンションの機械式駐車場や、一部の立体駐車場には高さの制限で入らないことがあります。買う前に、ふだん使う駐車場の制限を確認しておきましょう。
- 重い:車両重量は約2トン。軽快に走る車ではなく、どっしりと安定して走る車です。
- 選べる仕様が少ない:ディーゼルの4WDだけで、ハイブリッドや2WDの安い仕様はありません。いちばん安いグレードでも451万円です。
- 中身の基本設計は2007年のまま:改良を重ねていますが、車の骨格は発売当時からのものです。最新の設計のミニバンと比べると、室内の使い勝手や静かさで差を感じる人もいます。
- 尿素水の補充:ディーゼルの排ガス処理に使う尿素水(AdBlue)を、定期的に補充する必要があります。
逆に言えば、ここに書いた点が気にならないなら、ほかのミニバンにはない価値を持った車です。
あなたはどのタイプ?
雪の多い地域に住んでいる、スキー・スノーボードに行く人
デリカD:5がいちばん力を発揮する使い方です。全車4WDで、地上高があり、雪道向けのSNOWモードもあります。家族と荷物を載せて雪道を走る機会が多いなら、ミニバンの中では第一候補になるでしょう。ただし、どんな4WDでも冬はタイヤが重要です。雪道を走るなら、冬タイヤの準備は欠かせません。
キャンプや釣りなど、アウトドアによく行く人
キャンプ場の砂利道や未舗装の林道、河原への道など、普通のミニバンでは底をこすらないか気になる場所でも、気持ちに余裕を持って走れます。3列シートで人も道具も載せられるのが、SUVとの違いです。車中泊を考えている人は、車中泊はどこで寝る?もあわせて読んでおくと、場所選びで迷いにくくなります。
街乗りが中心で、たまに家族で遠出する人
正直に言うと、この使い方ならほかのミニバンのほうが合っている場合が多いです。街中では、背の高さや重さ、燃料代が気になる場面があります。それでも「見た目が好き」「いざというときに安心したい」という理由で選ぶのは十分ありです。その場合は、ハイブリッドのミニバンと燃料代や価格を比べたうえで、その差を「安心料」として納得できるかで決めるとよいでしょう。
本格SUVとどちらにするか迷っている人
同じ三菱の新型パジェロや、トヨタのランドクルーザー250のような本格SUVと迷う人もいるでしょう。悪路を走る力そのものを重視するならSUVのほうが上ですが、デリカD:5には両側スライドドアと3列シートの使いやすさがあります。「家族の乗り降りのしやすさ」と「どこまでの悪路に行くか」の二つを天秤にかけると、答えが出やすくなります。ランドクルーザー250とはどんな車か、新型パジェロの記事も比べる材料になります。
古いのではなく、代わりがない
デリカD:5は、19年前に生まれた車です。それでも今、過去でいちばん売れています。
それは、時代遅れの車が安さで売れているのではなく、ほかのどのミニバンも引き受けなかった役割を、ずっと引き受けてきたからです。
雪の朝も、砂利のキャンプ場も、家族全員で。その「行けるかな」を「行ける」に変えたい人にとって、デリカD:5はまだ、代わりのいない一台です。
情報源
- 三菱自動車「三菱自動車、走行性能を進化させた新型『デリカD:5』を2026年1月9日に発売」(2025年12月18日) mitsubishi-motors.com
- 三菱自動車「三菱自動車、『デリカD:5』の2025年度販売台数が過去最高を記録」(2026年4月16日) mitsubishi-motors.com
- 三菱自動車「デリカD:5 主要諸元」 mitsubishi-motors.co.jp
- Car Watch「三菱自動車、大幅改良した新型『デリカD:5』発表」(2025年12月18日) car.watch.impress.co.jp
- 乗りものニュース「『19年目の車』がなぜいま爆売れ!? まさかの過去最多販売を更新 三菱デリカD:5『転機は7年前でした』」(2026年4月20日) trafficnews.jp
- ベストカーWeb「デリカD:5の最低地上高185mmは本当に武器なのか?」(2026年5月18日) bestcarweb.jp
- ベストカーWeb「新型なのにエンジンは継続!! デリカD:5の2.2Lディーゼルはまだ古くないのか!?」 bestcarweb.jp
- WEB CARTOP「世界中を見渡してもライバル不在! デリカD:5にあって他のミニバンにないものとは」 webcartop.jp
- くるまのニュース「三菱の『“新型”デリカD:5』に反響殺到!」 kuruma-news.jp
- 熊本日日新聞/LOGISTICS TODAY(資源エネルギー庁の石油製品価格調査、2026年9月上旬の軽油全国平均)

