
「ジャガーって、もう普通の新車を売っていなかったんじゃないの?」――そのジャガーが、2026年10月6日(現地時間)、米国ニューヨークで新しい市販車「Type 01(タイプ ゼロワン)」を世界初公開しました。電気だけで走る4ドアのグランドツアラー(長距離を快適に走るための高級車)で、最高出力は1030PS。日本では2,188万円からと案内されています。ただし、注文の受け付けが始まるのは2027年です。今の時点で「決まったこと」と「まだ決まっていないこと」を分けて整理します。
まず結論:日本では2,188万円から、注文は2027年から
最初に、発表された内容を一覧にします。
| 項目 | 発表された内容 |
|---|---|
| 世界初公開 | 2026年10月6日(現地時間)、米国ニューヨーク |
| どんな車か | 新しく生まれ変わったジャガーの最初の市販車。電気自動車(EV)のラグジュアリー4ドアGT |
| 日本での価格 | 「Type 01 1030(テンサーティ)」2,188万円から/「Type 01 DESIGN VISION(デザインビジョン)」2,552万円から |
| 注文の受け付け | 2027年から |
| つくる場所 | 英国で設計・開発・製造 |
※価格・受注時期はCar Watch・くるまのニュース・Motor-Fanの報道で一致した内容です。くるまのニュースは「日本の公式サイトで案内されている」と伝えています。消費税の扱いや装備の細かな違いなど、販売条件の詳細は今後の正式な案内で確認が必要です。発表日は日本の報道で「10月6日」「10月7日」の両方が見られますが、現地時間では6日、日本時間では7日にあたります。
2つのグレードの差は364万円です。名前のとおり、「1030」は出力の1030PSから来ていて、「DESIGN VISION」はデザイン面に手を加えた上位の仕様と読めますが、両者の装備の違いは日本向けにはまだ詳しく示されていません。
今わかっているのは「いくらから」と「いつから注文できるか」まで。何がどう付いて、いつ届くのかは、まだこれからです。
なぜ「新生ジャガー初」なのか:2年近い空白の流れ
ジャガーといえば、セダンの「XJ」やスポーツカーの「Fタイプ」など、エンジン車の高級ブランドという印象を持つ人が多いはずです。その印象と今回のType 01の間には、大きな方針転換がありました。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2024年11月 | 新しいロゴと、車が一度も出てこない広告映像を公開し、ブランドの刷新を打ち出す。報道によると、この時期には従来モデルの新車生産が止まり、新しいEVブランドとして出直す準備期間に入っていた |
| 2024年12月 | 米国マイアミでコンセプトカー「TYPE 00」を世界初公開(市販車そのものではなく、デザインの方向性を示す車) |
| 2025年5月 | ジャガー・ランドローバー・ジャパンが今後の戦略を発表し、「TYPE 00」をアジアで初公開 |
| 2026年10月6日 | 市販車「Type 01」を世界初公開。日本向け価格も案内 |
| 2027年 | 注文の受け付け開始(予定) |
2024年の新しいロゴや広告は、昔からのファンを中心に強い反発も受けました。それでもジャガーは、「何もまねしない」という意味の「Copy Nothing(コピー・ナッシング)」を掲げ、Type 01の発表でも「A Copy of Nothing(白紙から設計した)」という言葉を使っています。
一方で、計画どおりに進んできたわけではありません。米国の自動車メディアは、発売までの日程がすでに1年以上遅れていると伝え、その理由としてEV市場の冷え込みと、親会社JLRが受けたサイバー攻撃を挙げています。日本の報道でも、2026年4月の時点では「9月に世界初公開」とされていたものが、実際には10月になりました。
数字で見るType 01
| 項目 | 発表された数値 |
|---|---|
| モーター | 3つ(前に1つ、後ろに2つ)の四輪駆動 |
| 最高出力 | 1030PS |
| 最大トルク | 1,365Nm(ジャガーの市販車で最強) |
| 0→100km/h加速 | 3.2秒 |
| バッテリー | 118kWh(使える容量)、850Vの高電圧システム |
| 航続距離(見込み) | WLTPモードで最大720km(450マイル)、米国EPA基準で最大約643km(400マイル) |
| 高速道路を一定速度で走った場合 | 時速120kmで最大約515km(320マイル) |
| 急速充電 | 最大350kW。13分で約321km(200マイル)分、10%→80%は約22分 |
| 空気抵抗係数(Cd値) | 0.23(ジャガーの市販車で最も良い値) |
| 大きさ | 全長約5.2m、全高約1.46m、23インチホイール |
※出力・トルク・加速・バッテリー・航続・充電はCar Watch・くるまのニュース・Motor-Fan・AUTOCAR JAPANの報道で一致した内容です(WLTPの換算値は媒体により720km/724kmと表記が分かれます)。大きさは米国メディアのインチ表記(全長204インチ、全高57.5インチ)を編集部で換算し、AUTOCAR JAPANの「全長5.2m」とも整合することを確認しました。全幅・車両重量は今回確認した資料では公表値を確認できませんでした。いずれもメーカーの見込み値で、実際の航続距離は速度・気温・ホイールの大きさなどで変わります。
前のモーター1つが260kW(約354PS)、後ろのモーター2つがそれぞれ310kW(約422PS)とされています。後ろの2つは左右の車輪を別々に制御でき、曲がるときに外側と内側の力の配分を変えられます。また、高速道路を一定の速さで走るときは前のモーターだけを使い、電気を節約する仕組みも説明されています。
1030PSの車なのに、いちばん大事な数字は「515km」
カタログで目を引くのは、1030PSや0→100km/h 3.2秒という数字です。ただ、2,000万円を超える長距離用の高級車として実際に効いてくるのは、むしろ「時速120kmで約515km」という、目立たない数字のほうです。
WLTPの720kmと比べると、515kmは約7割にあたります(515÷720≒0.72)。EVは速度が上がるほど空気の抵抗で電気を多く使うため、高速道路を同じ速さで走り続けると、カタログの距離より短くなるのがふつうです。メーカー自身がこの「高速での現実的な距離」を出しているのは、長い距離を走るGTとしては誠実な見せ方です。
この車の性格は、速さそのものより「高速道路で一気に500km走れて、13分の休憩でまた300km走れる」ことにあります。
13分で約321kmということは、1分あたりおよそ25km分の電気を入れられる計算です(321÷13≒24.7)。10%から80%まで約22分なので、その間の平均の充電の速さはおよそ225kW(118kWh×70%≒82.6kWh、÷22分×60)になります。ただし、これは350kWに対応する充電器を使った場合の話です。日本の急速充電器は50kW前後のものも多く、その場合は入る量がずっと少なくなります。充電器の出力と車の受け入れ能力の関係は、EVの急速充電と普通充電、何が違う?で詳しく整理しています。
リアガラスがない? 4ドアGTの変わったつくり
写真を見て多くの人が驚くのが、車の後ろに窓がないことです。Type 01は、ふつうのリアウインドウを持たない「ガラスレスのテールゲート」を採用しています。
「後ろが見えなくて大丈夫なの?」
後方はカメラで確認する仕組みで、カメラ式の後方表示「ClearSight(クリアサイト)」を採用していると報じられています。窓をなくしたことで、屋根を後ろまで低く伸ばす独特の形がつくれた、というのがデザイン上の狙いです。
車内にも特徴があります。
- 4つに分かれた座席空間:前から後ろまで車の中央を貫く「セントラルスパイン」と呼ばれる構造で、4人それぞれの空間を独立させています。
- 大きなガラスのディスプレイ:ダッシュボードの正面に24インチの一体型ガラスOLED(有機EL)ディスプレイ、運転席と助手席の間に7インチのタッチスクリーンがあります。
- 音を体で感じるシート:車内の幅いっぱいに広がるサウンドバーと、音に合わせて振動するシートが用意されています。
- 曲がりやすさの工夫:四輪操舵(後ろのタイヤも向きを変える仕組み)とエアサスペンションを備え、全長約5.2mでも、小回りはコンパクトカーのフォルクスワーゲン・ゴルフと同じくらいと説明されています。
バッテリーは床下全体に平らに敷くのではなく、前と後ろに分けて配置し、座る位置を低くしています。ジャガーによれば、一般的な平らな配置にすると、車の高さが約20cm高くなってしまうといいます。低く長いGTの形を守るための選択です。
2,000万円の車でも、電気代は「1kmあたり5〜7円」くらい
車両価格は2,000万円を超えますが、走るためのエネルギー代は、どれくらいになるのでしょうか。自宅で充電したと仮定して計算してみます。
| 走り方の前提 | 満充電(118kWh)で走れる距離 | 1kmあたりの電気代 | 年1万km走った場合 |
|---|---|---|---|
| カタログ(WLTP)どおり | 720km | 約5.1円 | 約5万1,000円 |
| 高速道路を時速120kmで一定 | 約515km | 約7.1円 | 約7万1,000円 |
※電気代を1kWh=31円(全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価)と仮定し、118kWhを使い切ったと考えた編集部の単純な計算例です(118×31=3,658円。3,658÷720≒5.1円、3,658÷515≒7.1円)。充電時のロスは含めていません。実際の電気代は、契約している料金プラン・充電する時間帯・季節・走り方で大きく変わり、外出先の急速充電を使うと1kWhあたりの料金はもっと高くなります。
年に1万km走っても、自宅充電中心なら電気代は年5万〜7万円程度という計算になります。もちろん、この車を選ぶ人にとって燃料代は大きな判断材料ではないかもしれません。ただ、「1030PSの車でも、走るためのお金はふつうのEVと桁が変わらない」というのは、EVならではの面白いところです。自宅と外出先での電気代の差は、EVの充電、自宅と外出先でいくら違う?で比べています。
日本で買うまでに、まだ決まっていないこと
2026年10月9日時点で、日本向けにはまだはっきりしていないことが多くあります。
- 納車の時期:米国のメディアは、受注が2027年初めに始まり、最初の納車は2027年後半になる見込みと伝えています。日本での納車時期は示されていません。
- 日本仕様の装備と2グレードの違い:「1030」と「DESIGN VISION」の364万円の差で何が変わるのかは、日本向けにはまだ詳しく案内されていません。
- 補助金:国のEV向け補助金(CEV補助金)の対象になるか、なるならいくらかは、発売前のため決まっていません。補助金をあてにした予算の組み方は、今の時点では予想にすぎません。
- 全幅と駐車場:全長約5.2mの大きな車ですが、日本の駐車場で大事な全幅の公表値は、今回確認した資料には見当たりませんでした。
- 日程がさらに動く可能性:すでに1年以上遅れたと報じられている計画です。「2027年」という予定も、変わる可能性があると考えておくのが現実的です。
同じように「決まったこと」と「まだのこと」を分けて読む必要がある輸入車として、ジープ新型コンパスも整理しています。こちらはすでに日本で発売され、価格も装備も出そろっています。
このニュース、誰がどう受け止める?
本気で購入を考えている人
注文できるのは2027年からなので、今すぐ動けることは多くありません。まずは日本の公式サイトで案内が更新されるのを待ち、販売店で「受注開始の連絡をもらえるか」を聞いておくのが現実的です。自宅に充電設備を付けられるか、全幅が分かったら駐車場に入るかも、先に確かめておきたいところです。
昔からのジャガーのファン
エンジンの音や、伝統的なジャガーの顔つきを愛してきた人には、受け入れにくい変化かもしれません。それでも、長いボンネットと低い屋根の「グランドツアラー」という骨格は、E-TYPEやXJSから続くものだとジャガーは説明しています。形は変わっても、何を受け継いだと言っているのかを確かめながら見ると、評価しやすくなります。
EVの流れとして見ている人
EV市場が伸び悩む中で、超高級・高性能のEVに絞って出直すという、思い切った選択です。発表後の受注の動きや、予定どおり2027年に量産が始まるかは、高級車ブランドがEVでどこまで勝負できるかを測る一つの目安になります。
エンジン車をやめ、ロゴを変え、後ろの窓までなくしたジャガー。1030PSという派手な数字の裏で、メーカーが本当に見せたかったのは「高速道路で500km走れるGT」という、昔からのジャガーらしい使い道かもしれません。答え合わせができるのは、2027年に最初の1台が道を走り始めてからです。
情報源
- Car Watch「ジャガー、新生後初の市販モデル『Type 01』世界初公開」(2026年10月7日) car.watch.impress.co.jp
- くるまのニュース「日本では2188万円! 新型『“高級”4ドアGT』世界初公開! ジャガー『TYPE 01』米国で披露」 kuruma-news.jp
- Motor-Fan「新生ジャガー初の市販モデル『タイプ01』がワールドプレミア」 motor-fan.jp
- AUTOCAR JAPAN「ジャガー新型『タイプ01』発表(後編) 来年受注開始、日本価格は2188万円からを予定」 autocar.jp
- The Truth About Cars「Jaguar’s $160K Type 01 Finally Goes on Sale In 2027」 thetruthaboutcars.com
- くるまのニュース「『新生ジャガー』ついに始動へ『TYPE 00』登場」(2024年12月) kuruma-news.jp
- ベストカーWeb「ええええ、ジャガーなの!? 新世代ジャガーが衝撃すぎな件」 bestcarweb.jp

