
メルセデスAMGは現地時間2026年10月17日、ドイツ・シュトゥットガルトで電気自動車の新型SUV「メルセデスAMG GT SUV」を世界初公開しました。AMGが専用に作ったEVの車台「AMG.EA」を使うSUVで、グレードはGT 53・GT 55・GT 63の3つ。最上位のGT 63は最高出力1,169PSです。ただ、日本での価格や発売の時期はまだ発表されていません。この記事では、国内外の報道を突き合わせて、数字の中身と、5月に出た4ドアクーペとの違い、日本の人がいま知っておけることを整理します。
3つのグレードの数字
| 項目 | GT 53 | GT 55 | GT 63 |
|---|---|---|---|
| 最高出力 | 544PS(400kW) | 816PS(600kW) | 1,169PS(860kW) |
| モーター | 2つ(前後に1つずつ) | 3つ(後ろに2つ・前に1つ) | 3つ(後ろに2つ・前に1つ) |
| 電池の容量 | 106kWh | 128kWh | 128kWh |
| 急速充電の最大出力 | 600kW | 710kW | 710kW |
| 0-100km/h加速 | 報道で確認できる数字なし(本文参照) | 2.7秒 | |
| 最高速度 | ― | 270km/h | |
| 航続距離(WLTP) | 最大約700km(128kWhの電池の場合) | ||
| 荷室 | 後ろ607L(後席を倒すと最大1,740L)+前に78L | ||
| 定員 | 5人 | ||
※出力・電池・充電はAutocar India・AutoGuide・DM Newsの報道(いずれも2026年10月17日)で一致。海外の記事では「1,153hp」「805hp」「536hp」とも書かれていますが、馬力の単位(PSとhp)の違いで、860kW・600kW・400kWに換算すると同じ値になります。GT 63の0-100km/h加速2.7秒はLE VOLANT WEBとAutocar India、最高速度270km/hはAutocar India(ドライバーズパッケージ装着時)とAutoGuide(168mph)、航続距離の最大約700kmはAutocar IndiaとDM News(435マイル)で一致。荷室はLE VOLANT WEBとAutocar Indiaで一致。GT 63の最大トルクは約2,000Nmと複数の報道が伝えています。GT 53・GT 55の加速や航続距離の細かい数字は1つの報道でしか確認できなかったため、ここでは載せていません。
いちばん下のGT 53でも544PSあります。数字だけを見るとGT 63ばかりが目立ちますが、3つのグレードは電池の大きさから違い、GT 53は2モーター・106kWh、GT 55とGT 63は3モーター・128kWhという分け方です。
GT 53と、GT 55・GT 63とでは、電池もモーターの数も違う「2種類の車」と考えたほうが分かりやすい構成です。
売り出す順番も分かれていて、海外の報道では、まずGT 53が先に発売され、GT 55とGT 63は2027年の春に続くとされています。
「10分で約450km分」を、もう少し身近な数字にすると
今回の発表で、出力の次に目を引くのが充電の速さです。報道によると、GT 55とGT 63は最大710kWの急速充電に対応し、10分の充電で最大約450km分(WLTP基準)の航続距離を足せるとされています。電池の残りが10%から80%になるまでは約12分という数字も示されています(メーカーは暫定値としています)。
| 見方 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 10分で入る距離は、満充電の何割? | 450km ÷ 700km | 約64% |
| 10%→80%で入る電気の量 | 128kWh × 70% | 約90kWh |
| それを12分で入れると、平均の出力は? | 約90kWh ÷ 0.2時間 | 約450kW |
| 100kmあたりに使う電気(WLTPの最大値で単純に割った場合) | 128kWh ÷ 700km × 100 | 約18kWh |
※報道された数字をもとにした単純な計算例です。128kWhを全部使える容量とみなして計算しています。実際に入る量や速さは、電池の温度や残量、つなぐ充電器の出力によって大きく変わります。
平均で約450kWというのは、充電の途中もかなり高い出力を保ち続けるという意味です。ただし、この速さは710kWまで出せる充電器につないだときの話です。充電器の出力が小さければ、車の側がいくら受け入れられても、その分しか入りません。
30分で入る量が「充電器」よりも「車」と「電池の残量」で決まる仕組みは、EVの急速充電と普通充電の記事で詳しく整理しています。GT SUVは、その「車の側」の上限を大きく引き上げた車だと言えます。
先に出た4ドアクーペと、何が違う?
AMG.EAを使った車は、2026年5月に発表された「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」が先です。最上位どうしを並べると、次のようになります。
| 項目 | GT 63 4ドアクーペ(2026年5月発表) | GT 63 SUV(2026年10月発表) |
|---|---|---|
| 最高出力 | 1,169PS(860kW) | 1,169PS(860kW) |
| 0-100km/h加速 | 2.4秒(走り出しの約30cmを除く測り方では2.1秒) | 2.7秒 |
| 最高速度 | 300km/h(ドライバーズパッケージ装着時) | 270km/h(同) |
| 急速充電の最大出力 | 600kW | 710kW |
| 航続距離(WLTP) | 596〜696km | 最大約700km |
※4ドアクーペはcarview!(LE VOLANT web編集部、2026年6月6日)、Automotive World、Driven(ニュージーランド)の報道による。0-100km/hの2.1秒は、走り出しの1フィート(約30cm)を計測に含めない方式の数字で、一般的な測り方では2.4秒と報じられています。
「同じ1,169PSなのに、SUVは遅いのでは?」と思うかもしれません。
出力が同じでも、加速と最高速度は車の重さと形で変わります。SUVは背が高く、前から受ける風の面積が大きい形です。メーカーは理由を説明していませんが、車重はまだ発表されておらず、低いクーペより不利な条件で同じ出力を使っている、と考えると数字の差は自然です。それでも0-100km/hで2.7秒は、ほとんどのスポーツカーより速い数字です。
一方で、充電の最大出力と航続距離はSUVのほうが上回っています。電池を大きくした(128kWh)ことで、たくさんの電気を一気に受け入れられ、遠くまで走れるようになった、という並びです。
SUVは「最高速の数字」をクーペに譲り、その代わりに「充電の速さ」と「荷室」を手に入れた車です。
数字以外の、新しいところ
- 後輪も向きを変える。後輪操舵が標準で、低い速度では前輪と逆向きに最大6度切れます。長さのある大きなSUVでも、小回りがききやすくなる仕組みです。
- 車体の傾きを油圧で抑える。新しい「AMG ACTIVE RIDE CONTROL+」は、ふつうの車にある横揺れ止めの棒(スタビライザー)の代わりに、油圧の仕組みで車体の傾きを抑えます。エアサスペンションと組み合わせ、速度に応じて車高も下げます。
- V8の「鼓動」を音と振動で再現する。EVなのでエンジンはありませんが、V8を積む「AMG GT R」から16本のマイクで録った音を使い、シートの振動や変速の感覚と合わせて再現するモードがあると報じられています。
- 画面は3枚まで。10.2インチのメーター、14インチの中央の画面、助手席用の14インチの画面(オプション)を組み合わせられます。
※後輪操舵の角度はLE VOLANT WEBとAutoGuide、AMG ACTIVE RIDE CONTROL+はLE VOLANT WEBとAutoGuide、画面の大きさはAutocar IndiaとAutoGuideで一致。音の再現の仕組み(16本のマイク)はAutoGuideの報道によります。
日本で買えるのはいつ? いくら?
結論から言うと、日本での価格・発売時期・導入するかどうかは、まだ発表されていません。これまでの流れを並べると、次のとおりです。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2026年5月 | GT 4ドアクーペ(EV)を発表。ドイツでは5月27日に価格を発表し、注文の受け付けを始める |
| 2026年6月 | 4ドアクーペの日本導入は「未定」と報道 |
| 2026年10月17日 | GT SUVを世界初公開 |
| これから | GT 53が先に発売。GT 55・GT 63は2027年春(海外の報道)。米国の販売店に並ぶのは2027年夏(AutoGuide) |
| 日本 | 未発表 |
価格の手がかりになるのは、先に出た4ドアクーペのドイツでの価格です。GT 55が15万4,700ユーロ(約2,876万円)から、GT 63が19万6,350ユーロ(約3,650万円)からと報じられています(ドイツの付加価値税19%込み、円は当時の報道による参考の換算)。
ただ、これをそのまま日本のSUVの値段と考えるのは早すぎます。SUVはまだどの国でも価格が出ていませんし、輸入車の日本での価格は、為替や日本向けの装備でも変わります。いまの段階で言えるのは、「同じ車台を使う兄弟車は、ドイツで3,000万円前後の価格帯だった」ということまでです。
日本で実際に使うときの航続距離も、冬は短くなります。気温0℃前後で2割ほど減ると考えると、700km×0.8で約560kmです(報道された最大値と一般的な冬の減り方を組み合わせた計算例で、実際は乗り方や気温で変わります)。
このニュース、誰にとって大事?
高性能なEVのSUVを探している人
選択肢がまた1つ増えました。ただ、日本の情報が出るまでは比べようがありません。いま決める必要はなく、メルセデス・ベンツ日本の発表を待つのが近道です。日本で価格が出ている高性能EVとしては、ジャガーの4ドアGT「Type 01」が2,188万円からと発表されています(Type 01の記事)。
今のAMGのSUVに乗っていて、次を考えている人
GT SUVは、AMGのEV専用の車台を使う、まったく新しい系統の車です。エンジン車のSUVとは、給油と充電、音の出し方まで性格が違います。上位のGT 55・GT 63が出そろうのは2027年春とされているので、海外の試乗記や日本の発表が出てから、自分の使い方(自宅で充電できるか、遠出がどれくらいあるか)と照らし合わせても遅くはありません。
EVの技術の流れを知りたい人
注目点は出力より充電です。710kWという受け入れの速さは、EVの「待ち時間」という弱点に、高級車の側から答えを出そうとする動きです。これからの普通のEVが、どこまでこの速さに近づくかを見ていくと面白いニュースです。テスラのロードスター(ロードスターの記事)が「いちばん速い瞬間」を売りにしたのとは、向いている方向が違います。
速さの次に競うのは、止まっている時間
1,169PSという数字は、もう驚くほど珍しいものではなくなりつつあります。GT SUVがほかと違うのは、その力を、大人5人と荷物を載せられる車に入れ、しかも10分ほどの充電で旅を続けられるようにしようとしている点です。
日本で買えるかどうかは、まだ分かりません。それでも、高性能なEVが「どれだけ速く走るか」から「どれだけ短く止まるか」で競い始めたことは、この発表からはっきり読み取れます。
情報源
- LE VOLANT WEB(新型「メルセデスAMG GT SUV」が登場、2026年10月18日) levolant.jp
- Autocar India(Mercedes-AMG GT SUV revealed, makes up to 1,169hp、2026年10月17日) autocarindia.com
- AutoGuide(Mercedes-AMG Unveils 1,153-HP Electric AMG GT SUV、2026年10月17日) autoguide.com
- DM News(Mercedes-AMG Reveals Electric GT SUV With Up to 1,153bhp、2026年10月) dmnews.co.uk
- carview!(LE VOLANT web編集部、メルセデスAMG 新型「GT 4ドアクーペ」が本国で受注開始、2026年6月6日) carview.yahoo.co.jp
- Automotive World(Mercedes-AMG launches electric GT 4-Door Coupé) automotiveworld.com
- Driven(Mercedes-AMG GT 4-Door Coupé goes electric with 860kW punch) drivencarguide.co.nz

