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親の運転が心配なときに家族ができること まず助手席で様子を見て、「やめて」の前に代わりの足を一緒に考える

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親の運転が心配なときに家族ができること まず助手席で様子を見る
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「最近、父の車に新しいこすり傷が増えた」「母がよく通る道で迷ったらしい」。帰省のたびに親の運転が気になっても、どう切り出せばいいか分からず、そのままにしている人は多いはずです。この記事では、警察庁の統計や警視庁が紹介しているチェックリスト、警察の相談窓口などの公開情報をもとに、家族が気づけるサイン、責めずに話を始める順番、「運転をやめる」以外の選択肢を整理します。

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心配は、気のせいではない

まず、数字から見ておきます。警察庁の公表資料をもとにした報道によると、2026年上半期(1〜6月)に75歳以上のドライバーが第1当事者となった死亡事故は202件で、前年同期の177件から25件(約14%)増え、2年連続の増加でした。

2026年上半期の死亡事故 75歳以上 75歳未満
免許を持つ人10万人あたり 2.4件 1.1件
そのうち車1台だけの事故(車両単独)の割合 42.1% 24.0%

※ベストカーWeb(2026年10月2日)が警察庁交通局「令和8年上半期における交通事故の発生状況」等をもとにまとめた数字。件数(202件)は警察庁資料の抜粋でも確認。75歳以上の死亡事故が免許保有者あたりで75歳未満の約2倍という傾向は、2025年の数字を伝えた別の報道とも一致しています。

免許を持つ人の数をそろえて比べても、75歳以上の死亡事故は75歳未満の約2倍です。また、相手のいない単独の事故が4割を超えています。ガードレールや電柱にぶつかる、道路から外れるといった、運転の操作そのものがうまくいかなかった事故が多いことがうかがえます。警察庁の統計でも、75歳以上の死亡事故の原因(人的要因)で最も多いのは、ハンドルやブレーキの「操作不適」だとされています。

もちろん、75歳を過ぎた人がみんな危ないわけではありません。ただ、年齢とともに起きる変化は、本人よりも周りが先に気づくことが多い。家族の「なんとなく心配」は、無視しなくていい感覚です。

本人は「まだ大丈夫」と思っている

家族が心配する一方で、本人の受け止め方は違います。弁護士ドットコムが2024年8〜9月に一般会員1,055人に行った調査では、60代以上(290人)のうち、免許を「返納していない(予定もない)」人が82.1%でした。その理由で最も多かったのは「運転能力に問題ないと思っているから」(58.0%)です。

家族は危ないと感じ、本人は問題ないと感じている。どちらかがうそをついているわけではありません。

運転の衰えは、ある日突然ではなく、少しずつ進みます。昨日の自分と今日の自分の差は小さいので、本人は変化に気づきにくい。一方、たまに会う家族は、半年前や1年前と比べるので差がはっきり見えます。同じ変化でも、毎日見ている人には見えにくく、間をあけて見る人には見えやすいのです。

だから、「危ないよ」と結論だけを伝えても、本人には実感がありません。話し合いの前に、まず家族が具体的な様子をつかんでおくことが大切です。

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最初にすること:助手席に乗って、車の周りを一周する

警視庁などが紹介している「運転時認知障害早期発見チェックリスト30」(特定非営利活動法人 高齢者安全運転支援研究会、監修:浦上克哉氏・日本認知症予防学会理事長)は、日常生活では気づきにくい初期の衰えが、運転中には比較的表れやすいという考えでまとめられています。項目の全文は警視庁や自治体のページで見られますが、傾向をまとめると、家族が気づけるのは次のような場面です。

どこで気づくか 見ておきたいこと
車の外側 こすり傷やへこみが増えていないか。本人が「いつ付いたか覚えていない」傷はないか
乗る前・降りた後 キーを探し回る、駐車場で自分の車の場所が分からなくなる、といったことが増えていないか
運転中(操作) 車間距離が詰まりがち、ウインカーが遅い・出し忘れる、ブレーキが急になった、車線の中でふらつく
運転中(判断) 右折や合流をとても怖がる、または逆に強引になった。よく知っている道で迷う
機械の操作 ナビやエアコンの操作に手間取るようになった

※チェックリスト30の傾向を、家族が見る場面に分けて整理したものです(項目そのものではありません)。警視庁のページでは、30項目のうち5項目以上が当てはまる場合は要注意で、専門機関に相談する目安として使うよう案内しています。チェックリストは目安であり、病気かどうかを判断するものではありません。

いちばん自然なのは、「乗せて」と頼んで助手席に乗ることです。買い物や墓参りなど、ふだん本人が運転している道を一緒に走ると、いつもの運転が見えます。帰省の初日に車の周りをぐるっと一周して、傷が増えていないかを見ておくのも、本人に気づかれずにできる確認です。

話し合いの材料は、「心配」という気持ちではなく、「この前、ここでこうだった」という具体的な場面です。

切り出すときは、結論から言わない

様子が分かったら、話をします。親の運転について家族が書いた記事や体験談でよく出てくるのは、「免許を返して」と最初に言った結果、「年寄り扱いするな」と怒らせてしまい、それきり話ができなくなった、という失敗です。

運転は、本人にとって買い物や通院の足であり、「自分のことは自分でできる」という自信そのものでもあります。そこへいきなり「やめて」と言われると、生活と誇りの両方を取り上げられる気持ちになります。

うまくいきやすいとされる順番は、おおむね次のとおりです。

  1. 心配していることを、自分の気持ちとして伝える。「危ない」と評価するのではなく、「この前の傷を見て、ちょっと心配になった」と、自分を主語にします。
  2. 本人の考えを先に聞く。「最近、運転していて疲れることある?」「夜は見えにくくない?」と聞くと、本人も気になっていたことを話してくれることがあります。
  3. 「やめる」の前に「減らす」を相談する。夜は運転しない、雨の日は控える、遠出は家族が運転する、など。いきなりゼロにするより受け入れやすい話です。
  4. 家族以外の人の意見を借りる。かかりつけの医師や、後で紹介する警察の相談窓口など、第三者の言葉のほうが素直に聞ける人もいます。
  5. 一度で決めようとしない。今日は「気にかけている」ことが伝われば十分、くらいの気持ちで始めます。

兄弟姉妹がいるなら、先に家族の中で話をそろえておくと、本人が「誰の言うことを聞けばいいのか」と迷わずに済みます。

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家族だけで抱えなくていい:安全運転相談窓口「#8080」

各都道府県の警察(公安委員会)は、運転に不安がある高齢の人や、病気などで運転が心配な人、その家族からの相談を受ける「安全運転相談窓口」を設けています。全国共通の電話番号は「#8080」(シャープ・ハレバレ)で、かけると住んでいる地域の窓口につながります。

相談の内容は、運転を続けるうえでの助言、免許を自主的に返す場合の説明、医師の診断を受けることの勧めなどです。都道府県によっては、看護師などの医療系の専門職員が対応することもあり、茨城県警のように、本人が来られない場合は家族だけでも相談を受け付けると案内しているところもあります。受付時間や予約が必要かどうかは都道府県ごとに違うので、住んでいる地域の警察のページで確かめてから連絡します。

「警察に相談するのは大げさでは」と感じるかもしれません。でも、家族の中だけで言い合いになるより、専門の窓口の人から話を聞くほうが、本人も家族も落ち着いて考えられることがあります。

「やめる」以外にもできること

運転をすぐにやめるのが難しい場合でも、危ない場面を減らす方法はあります。

運転する場面をしぼる

夜、雨の日、高速道路、知らない道、混む時間帯。苦手な場面を避けるだけでも、運転の負担は大きく変わります。夕暮れや夜は、年齢にかかわらず見えにくくなる時間帯です。慣れた道を、明るい時間に、短い距離だけ。本人が「これならできる」と思える線を一緒に決めます。

車の安全装備を見直す

衝突被害軽減ブレーキや、ペダルの踏み間違い時に急に発進しないよう抑える装置が付いた車(サポカー)への乗り換えも選択肢です。今の車に乗り続けるなら、後から取り付ける踏み間違いの急発進抑制装置もあります。国土交通省は2020年から、こうした後付け装置の性能を認定する制度を設けていて、認定された製品は国交省のホームページで公表されています。

ただし、装置ごとに取り付けられる車種が決まっていて、年式の古い車には付けられない場合があります。また、どの装置もすべての事故を防げるわけではありません。「付けたから安心」ではなく、「間違えたときの被害を小さくする備え」と考えるのが現実的です。自治体によっては、高齢の人が後付け装置を付ける費用を補助しているところもあるので、住んでいる市区町村の案内を確かめてみてください。

ドライブレコーダーで「振り返り」をする

ドライブレコーダーの映像を一緒に見ると、「ここでふらついていたね」と、気持ちではなく事実で話ができます。ただ、映像を「証拠」として突きつけると逆効果になりかねません。本人が自分で見て気づけるように使うのがよさそうです。

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話し合いの前に、「代わりの足」を一緒に考える

本人が運転をやめたがらない理由の2番目は、さきほどの調査で「代わりの移動手段に乏しく生活に困るから」(32.8%)でした。運転をやめた後の生活が想像できないうちは、「やめる」という話には乗れません。

そこで役に立つのが、車にかかっているお金を、ほかの移動に置きかえて考えてみることです。

年間の車の維持費(仮定) タクシー1往復を3,000円とすると 週に換算すると
年20万円 約67往復 週1回強
年30万円 100往復 週2回弱
年40万円 約133往復 週2〜3回

※仮定に基づく単純な計算例です(30万円÷3,000円=100往復、100÷52週=約1.9回)。維持費には税金・保険・点検整備・燃料・駐車場代などが含まれ、車や地域、走る距離によって大きく変わります。タクシー代も距離や地域で変わります。車を売ったお金は含めていません。

あくまで計算例ですが、車をやめた分のお金で、週に1〜2回の通院や買い物ならタクシーで行ける、という家庭もあるはずです。ほかにも、ネットスーパーや生協の宅配、家族の送迎、自治体のコミュニティバスやデマンド交通(予約して乗る乗り合いの車)など、地域によって使えるものは違います。本人と一緒に調べて、「車がなくても、このくらいは暮らせそうだ」という見通しを先に作っておくと、話が前に進みやすくなります。

家族の状況別に考える

離れて暮らしていて、帰省のときしか会えない

短い帰省の間に結論を出そうとすると、言い合いで終わりがちです。今回は助手席に乗って様子を見るだけにして、気になったことを電話で少しずつ話す。近所に住む親戚や、親の友人に様子を聞いておくのも手です。

同居していて、毎日の運転を見ている

毎日見ていると、かえって変化に気づきにくくなります。月に一度くらい、車の傷や、チェックリストの傾向に当てはまることがないかを意識して確かめる日を決めておくと、変化を見落としにくくなります。

地方に住んでいて、車がないと生活できない

いきなり「やめる」は現実的ではありません。運転する場面をしぼる、安全装備を見直す、家族の送迎を少しずつ増やす、と段階を踏みます。地域のデマンド交通や買い物支援の有無は、市区町村の窓口で聞けます。

話をすると、本人が怒ってしまう

怒るのは、それだけ運転が本人にとって大事だということでもあります。一度引いて、家族以外の人(かかりつけ医や#8080の窓口)の力を借りることを考えます。家族が先に窓口に相談して、話し方の助言をもらうこともできます。

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運転の話は、暮らしの話

親の運転の心配は、突きつめると「この先、親がどう暮らしていくか」という話です。運転をやめるかどうかは、その答えの一部でしかありません。

だからこそ、最初の一歩は説得ではなく、助手席に乗ってみることです。どこへ、どんな道を、どんなふうに走っているのか。それが分かれば、次に話すことも見えてきます。

情報源

  • ベストカーWeb(高齢ドライバーの死亡事故がまた増えた!! 75歳以上は「車両単独」が4割超、2026年10月2日。警察庁交通局「令和8年上半期における交通事故の発生状況」等をもとにした記事) bestcarweb.jp
  • 警察庁(令和8年上半期の交通事故の発生状況) npa.go.jp
  • 警視庁(運転時認知障害早期発見チェックリスト30) keishicho.metro.tokyo.lg.jp
  • 弁護士ドットコムニュース(免許返納に関するアンケート、2024年9月28日) bengo4.com
  • DIME(弁護士ドットコム調査の紹介) dime.jp
  • 茨城県警察(安全運転相談〈認知症・高齢者〉) pref.ibaraki.jp
  • 鹿児島県警察(安全運転相談窓口) pref.kagoshima.jp
  • JAF Mate Online(後付けのペダル踏み間違い急発進抑制装置について、2022年10月20日) jafmate.jp
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