
駐車場から戻ったらドアに線が入っていた、バンパーの角を擦ってしまった。そんなとき最初に悩むのが、自分で直すか、お店に頼むかです。実は、この判断に必要な道具は自分の爪だけです。この記事では、傷の深さの見分け方から始めて、自分でできる範囲、タッチペンの失敗しやすい点、お店に頼んだときの費用、へこみに使えるデントリペアまで、順番に整理します。
まず爪で確かめる
洗車で汚れを落としたら、傷の上を爪でそっとなでてみます。複数の整備の解説や補修の記事が、最初の判断としてこの方法を挙げています。
| 傷やへこみの状態 | 考えられる深さ | 進め方の目安 |
|---|---|---|
| 爪が引っかからない、白っぽい線 | 塗装のいちばん上(クリア層)の浅い傷 | 極細のコンパウンドなら自分で試せる |
| 爪は引っかからないが、色の層まで削れて見える | 塗装の途中まで | タッチペンを試す範囲 |
| 爪が引っかかる、他の車の塗料が付いている | 深い傷、または付着 | お店に頼むのが安心 |
| 金属が見えている | 塗装の下まで届いた傷 | サビの原因になるので早めにお店へ |
| へこみがあり、塗装は割れていない | 金属の変形だけ | デントリペアが候補 |
| へこみがあり、塗装が割れている | 変形と塗装の損傷 | 板金塗装が基本 |
※くるまのニュース、カーセブン、MOTAの解説をもとに整理した目安です。色や塗装の種類によって見え方は変わります。
洗車を先にするのは、汚れを傷と見間違えないためです。擦った相手の塗料が付いているだけなら、見た目より傷が浅いこともあります。ただし、無理にこすって落とそうとすると、まわりの塗装まで傷めることがあります。
コンパウンドは「いちばん細かいもの」から
コンパウンドは、塗装の表面を薄く削って傷をなだらかにする研磨剤です。くるまのニュースの解説では、洗車のあとにパーツクリーナーなどで油分を落とし、いちばん細かいものから使い始めるように勧めています。最初から粗いものを使うと、必要以上に塗装を削ってしまうからです。
磨くときは、丸く円を描かず、縦または横にまっすぐ動かすのがコツとされています。力を入れすぎず、傷が消えたかどうかを布で拭いて確かめながら進めます。周りのライトや樹脂部分は、マスキングテープで保護しておくと安心です。
磨いて消えない傷は、コンパウンドの範囲を超えています。そこで粗いものに替えて削り続けるより、次の方法を考えたほうが安全です。
1,000円台のタッチペンが高くつくことがある
「ペンで塗るだけなら簡単そう」と思うかもしれません。タッチペンは1,000〜2,000円ほどで買えて、定番の色ならカー用品店やホームセンターにもあります。正確な色は、ドアの内側やエンジンルームに記されたカラーコードを控えて、ディーラーに注文する方法もあります。
ところが、うまく塗るのは意外に難しい作業です。付属の筆は傷より太いことが多く、塗料がまわりにはみ出します。塗料は乾くととても薄い膜になるため、一度塗っただけでは傷は埋まりません。ノリコネの解説は、一般の人が修理すると違和感が大きくなることがほとんどだと指摘しています。
タッチペンは「消す」道具ではなく、「隠す」道具です。
くるまのニュースで修理店の店主が紹介していた方法は、付属の筆をそのまま使わないやり方です。
- マイナスドライバーの先のような細い金属で、少量の塗料を取る
- 傷の中に押し込むように入れる
- 乾く前に、はみ出た分を紙のウエスで拭き取る
- 乾かして様子を見て、埋まるまで繰り返す
店主はマスキングテープも勧めていません。テープの下に塗料がしみて、塗らなくていい場所に広がることがあるからです。目立つ場所でいきなり試さず、見えにくい場所の小さな傷で手順に慣れておくと失敗を減らせます。
もう一つの判断軸は、完璧に戻したいかどうかです。遠目で目立たなくなればいい、サビを防げればいい、という目的ならタッチペンは十分に役に立ちます。近くで見ても分からない仕上がりを求めるなら、最初からお店に頼むほうが、結果として安く済むことがあります。
お店に頼むといくらかかるか
手のひらくらいまでの擦り傷を部分的に直す場合の、依頼先別の目安です。
| 依頼先 | ボディ | バンパー | ドアミラー |
|---|---|---|---|
| ディーラー | 2.5万〜4万円 | 1.5万〜3万円 | 5,000円〜1.5万円 |
| カー用品店 | 1万〜4万円 | 1万〜3万円 | 1万〜1.5万円 |
| 板金工場 | 1万〜4万円 | 1万〜3万円 | 5,000円〜1.5万円 |
| 整備工場 | 1.5万〜5万円 | 1万〜3.5万円 | 5,000円〜1.5万円 |
※ノリコネ(クルマ情報サイト)掲載の目安。車種・色・傷の大きさで大きく変わります。カーセブンの解説では、バンパーのキズは直径20cm以下で1万5,000円程度から、ヘコミ・歪みは3万円からが目安とされています。
範囲が広がると、金額の単位が変わります。ノリコネの目安では、ドアなどのパネルを1枚塗ると5万〜10万円、2枚で10万〜20万円です。ドアとフェンダーにまたがる擦り傷は、長さが短くても2枚分になることがあります。
依頼先どうしの差は、思ったほど大きくありません。ディーラーがやや高めで、純正部品を使う安心感があります。整備工場や板金工場は費用を抑えやすい一方、品質や対応には差があります。カー用品店やガソリンスタンドの一部でも、小さな傷やへこみを受け付けています。金額が大きくなりそうなら、見積もりを2か所で取って比べるのがおすすめです。
バンパーのひと擦りが20万円を超えることも
小さな傷でも、高くつく例はあります。カービューの記事は、国産SUVのフロントバンパーに10cm四方ほどのスリキズを付けた例を紹介しています。正規販売店の見積もりは約23万円で、部品代が約16万円、工賃が約7万円でした。部品代のうちバンパー本体は約8万円です。
運転支援のセンサーやカメラが付いた車では、修理の内容が増えて見積もりが上がることがあります。傷の見た目が小さくても、新しい車ほど先に見積もりを取ってから決めましょう。バンパーは部分的な補修より交換のほうが安くきれいに仕上がる場合もあるので、両方の金額を聞いておくと判断しやすくなります。
へこみはデントリペアが使えるかどうか
ドアにできた小さなへこみなら、デントリペアという方法があります。専用の工具を裏側から当てて、金属を少しずつ押し戻す修理です。塗り直さないので、車の元の塗装が残り、費用も時間も抑えやすいとされています。
使えるかどうかの分かれ目は、塗装の状態です。くるまのニュースで千葉県の整備工場は、塗装にひびが入っているかどうかが境目になると説明しています。工具がへこみの裏側に届くことも条件で、角がくっきりしたへこみや、プレスラインにかかったへこみは難しい場合があります。
料金は店ごとに違います。例として、神戸市のある専門店は、1か所で1cmまで8,000円から、2cmまで1万2,000円から、3cmまで1万6,000円から、3〜5cmで1万8,000円からと案内しています。ノリコネは、ルーフのデントリペアを1か所あたり約2万円としています。市販のへこみ修理キットもありますが、引き出す作業は失敗すると塗装を傷めるおそれがあるので、塗装の状態と場所をよく見てから判断してください。
放っておいてもいい傷、急いだほうがいい傷
金属が見えている傷は、そのままにしないほうが安心です。塗装がなくなった部分に水分が入ると、サビが出てまわりに広がることがあります。サビが進んでから自分で塗っても、下に残ったサビで塗装が浮いてくるので、落としてからでないと意味がありません。
一方、爪が引っかからない浅い傷は、見た目の問題が中心です。急がないなら、次の洗車のときや、別の修理と一緒に見積もりを取るタイミングまで待っても大きな問題にはなりにくいでしょう。
車両保険を使うかどうかは、自己負担額と、使ったあとの保険料の増え方を比べて考えます。数万円の修理では、自己負担額を引くと保険金がほとんど残らないこともありますし、等級が下がれば翌年以降の保険料が上がります。契約のタイプによっては自分でぶつけた傷が対象外の場合もあるので、保険証券で確かめてください(車両保険の記事)。
もうすぐ売るつもりの車なら、直す前に立ち止まりましょう。カーセブンの解説では、傷を直しても査定額が上がるとは限らないとされています。修理代が減額を上回ることもあるので、まずそのままで査定額を聞いてみるのも一つの方法です。
場面別の考え方
洗車中に細い線を見つけた
爪が引っかからなければ、極細のコンパウンドで試す範囲です。同じような線が増えているなら、洗い方を見直すほうが先かもしれません(洗車機と手洗いの記事)。
駐車場でドアに小さなへこみができていた
塗装が割れていなければ、デントリペアの店に写真を見せて相談してみましょう。ぶつけた相手が分かっている場合は、自分で直す前に写真を残しておくことも大切です。
バンパーの角を擦って、色が削れた
バンパーは比較的安く直しやすい部位ですが、センサー付きの車は別です。部分補修と交換の両方の見積もりを取って比べます。
古い車で、見た目にはこだわらない
金属が見える部分だけタッチペンで保護し、サビを防ぐという考え方もあります。きれいに直すことと、車を傷めないように守ることは、別の目的です。
直すかどうかより先に、爪と見積もり
小さな傷は、見た瞬間の気持ちほどには深くないことも、逆に見た目より高くつくこともあります。まず爪で深さを確かめ、自分で触っていい範囲かどうかを決める。迷ったら、塗る前に写真を持って見積もりを取る。その順番さえ守れば、1,000円のペンで数万円の修理を増やす失敗は避けられます。
情報源
- くるまのニュース「車の傷は『タッチアップペイント』じゃ直せない!? プロが教える正しい補修術」 kuruma-news.jp
- くるまのニュース(デントリペアと小さな傷の直し方の解説) kuruma-news.jp
- ノリコネ「車の傷・へこみの修理費用の相場」 221616.com
- カーセブン「バンパーの傷・へこみの修理費用」 carseven.co.jp
- MOTA「車の傷消しと、自分で傷の補修を行う方法」 autoc-one.jp
- カービュー「バンパーひと擦りで20万円超え!?」 carview.yahoo.co.jp
- CREX「車の傷の修理は売却前に必要か」 crexgroup.com
- ライフハッカー(へこみ修理キットの解説) lifehacker.jp
- デントリペア専門店の料金表(神戸市の店舗の例) page.line.me

