
「燃費のいい運転って、結局どれが一番効くの?」――ふんわりアクセル、空気圧、荷物、アイドリングと、節約のコツはたくさん紹介されていますが、どれも同じくらい大事そうに見えて、何から始めればいいのか分かりにくいものです。警察庁・経済産業省・国土交通省・環境省でつくる「エコドライブ普及連絡会」の「エコドライブ10のすすめ」に載っている数字を、年間のガソリン代に置き換えて、効果の大きい順に並べ直しました。
年間の金額にすると、こうなる
「エコドライブ10のすすめ」は2003年に作られ、2020年1月に最新の見直しが行われた国の指針です。燃費が何%変わるかが書かれている項目について、同じ物差しで比べられるよう、次の条件で年間のガソリン代に換算しました。
- 年に1万km走る、ふだんの燃費が15km/Lの車
- レギュラーガソリン1L=170.1円(経済産業省発表、2026年10月13日時点の全国平均)
- その項目の状態が、1年間ずっと続いたと仮定
| 項目 | 指針の数字 | 年間のガソリン代の差(計算例) |
|---|---|---|
| エアコンを必要ないのにONのまま | 燃費が約12%悪化 | 約1万5,500円 |
| ふんわりアクセル(やさしい発進) | 燃費が約10%改善 | 約1万300円 |
| 車間距離が短く、加速・減速が多い | 郊外で約6%、市街地で約2%悪化 | 約7,200円(郊外) |
| タイヤの空気圧が50kPa不足 | 郊外で約4%、市街地で約2%悪化 | 約4,700円(郊外) |
| 100kgの荷物を積みっぱなし | 燃費が約3%悪化 | 約3,500円 |
| 減速時、早めにアクセルを離す | 燃費が約2%改善 | 約2,200円 |
※エコドライブ10のすすめ(岐阜県・福島県の掲載ページで数値を照合)をもとにした筆者の計算例です。1万km÷15km/L≒666.7L(約11万3,400円)を基準に、燃費が変わった場合の燃料の量との差を出しています(例:燃費10%改善→16.5km/L→約606.1L、差約60.6L×170.1円≒1万310円)。実際の金額は車・道路・季節・走り方で変わります。
運転の仕方そのものでいちばん大きいのは、発進のときの「ふんわりアクセル」です。エアコンは数字こそ大きいものの、条件付きの話なので後で詳しく見ます。
ガソリン代を減らす運転で最初に変えるべきなのは、走っている最中ではなく、止まった状態から動き出す最初の5秒です。
「全部やれば4割安くなる」わけではない
表の数字を見て、「全部足せば40%以上も燃費が良くなる」と考えた人もいるかもしれません。残念ながら、そうはなりません。
理由は、数字ごとに前提がまったく違うからです。空気圧の4%は「適正値より50kPa少ない状態」と比べた数字で、もともと空気圧をきちんと管理している人には伸びしろがありません。荷物の3%も、100kgの不要な荷物を積んでいる人だけの話です。車間距離の6%は郊外の道での数字で、信号の多い街中では約2%に下がります。
つまり、この表は「足し算の表」ではなく、「自分に当てはまる項目を探す表」です。空気圧を毎月見ている人が空気圧を見直しても、ガソリン代はほとんど変わりません。逆に、トランクにゴルフバッグや冬用タイヤを積みっぱなしの人は、荷物を下ろすだけで効果が出ます。
もうひとつ、数字の読み方で気をつけたいことがあります。「燃費が10%改善」と「燃費が10%悪化」は、ガソリン代で見ると同じ額になりません。燃費15km/Lの車なら、10%改善(16.5km/L)で減るのは約60L、10%悪化(13.5km/L)で増えるのは約74Lです。悪化のほうが、同じ%でも財布への影響が大きくなります。
※計算例:10,000÷16.5≒606.1L(666.7Lとの差約60.6L)、10,000÷13.5≒740.7L(差約74.1L)。
いちばん効く「発進の5秒」
指針が示す目安は、「最初の5秒で時速20km程度」です。これで燃費が約10%改善するとしています。
5秒で時速20kmと言われてもピンとこないかもしれません。時速20kmは秒速に直すと約5.6mです。5秒かけてゆっくりそこまで上げると、その間に進むのはおよそ14m。乗用車3台分くらいの距離を使って、じわっと速度を乗せていくイメージです。
※20km÷3,600秒×1,000≒5.6m/秒。一定の割合で加速した場合、5秒間の移動距離は5.6×5÷2≒14m(計算例)。
信号の多い街中では、発進は1日に何十回も繰り返されます。1回ごとの差は小さくても、回数が多いぶん積み重なりやすいのが、発進が上位に来る理由です。
ただし、後ろの車との流れを無視して極端にゆっくり発進すると、かえって周りの車の加速・減速を増やすことになります。「急がない」と「遅すぎない」の間を探すのがコツです。
止まるときは、ブレーキより先にアクセルを離す
発進の次に意識したいのが、走っている最中の加速と減速です。指針では、車間距離が短いと加速・減速が増え、市街地で約2%、郊外で約6%燃費が悪くなるとしています。また、前の信号が赤だと分かった時点で早めにアクセルを離すと、エンジンブレーキが働いて約2%改善するとしています。
この2つはつながっています。車間距離に余裕があれば、前の車がブレーキを踏んでもアクセルを離すだけで速度を合わせられ、ブレーキからの再加速が減ります。郊外の道で数字が大きくなるのは、速度が高いぶん、一度落とした速度を取り戻すのに多くの燃料を使うためと考えられます。
車間距離をあけることは、燃費だけでなく、急ブレーキを踏む場面を減らすことにもつながります。
エアコンは「暖房だけならA/Cを切る」
表でいちばん数字が大きかったエアコンは、条件をよく読む必要があります。指針の12%は、「車内の温度設定が外気と同じ25℃でも、エアコンをONのままにした場合」の数字です。暑い日に車内を冷やすこと自体をやめよう、という話ではありません。
これからの季節に関係するのは、もうひとつの呼びかけのほうです。指針は、暖房だけを使うときはエアコンのスイッチ(A/C)を切るよう勧めています。暖房の熱はエンジンの熱を使うので、A/Cを入れなくても車内は暖まります。
一方で、冬に窓が曇ったときは、A/Cの除湿が役に立ちます。ずっと入れっぱなしにはせず、曇ったときだけ使う、という使い分けが現実的です。曇りの取り方は冬の窓の曇りの記事で詳しく整理しています。視界を確保するのは燃費より優先です。
アイドリングと「道に迷う」は、%ではなく量で見る
%で書かれていない項目もあります。数字の形が違うので、別に見ておきます。
| 項目 | 指針の数字 | 身近な量に直すと(計算例) |
|---|---|---|
| アイドリング | 10分間で約130cc(エアコンOFF) | 毎日5分なら年に約24L、約4,000円 |
| 道に迷う | 1時間のドライブで10分余計に走ると、燃料が約17%増える | 1時間の運転で使う燃料のおよそ6分の1が余計にかかる |
※アイドリング:130cc÷2=65cc×365日≒23.7L×170.1円≒4,040円(計算例)。
アイドリングは、コンビニの駐車場での待ち時間や、送り迎えの待機で知らないうちに積み重なります。また、指針は今の乗用車について、極端に寒い地域を除けば暖機運転は基本的に必要ないとしています。冬の朝の考え方は暖気運転の記事にまとめています。
「道に迷う」の17%は、1回の外出ごとの数字です。出かける前にルートと渋滞情報を確かめておくのは、時間の節約であると同時に、ガソリン代の節約でもあります。
空気圧と荷物は「一度やれば続く」節約
運転のコツは毎回意識しないと続きませんが、空気圧と荷物は、一度見直せばしばらく効果が続くのが利点です。
空気圧は乗っていなくても少しずつ抜けていき、気温が下がる秋から冬は、冷えるぶんさらに下がりやすくなります。月に1回の点検と、測り方のコツはタイヤの空気圧の記事で紹介しています。
荷物は、指針では100kgで約3%悪化としています。100kgはなかなかの量ですが、キャンプ道具、ゴルフバッグ、子どもの部活の道具、使わないときの冬用タイヤなどを足していくと、意外と近づくことがあります。指針は、スキーキャリアなどの外付けの装備も、使わないときは外すよう勧めています。
まず「自分の燃費」を知る
2020年の見直しで、「自分の燃費を把握しよう」は10項目の最後から1番目に移されました。燃費を把握することが、エコドライブを始めたり続けたりするきっかけになる、という理由です。
車の燃費計を見る、給油のたびに走った距離と給油量を記録する、といった方法があります。記録しておくと、発進を変えた週、荷物を下ろした月で数字がどう動いたかが分かり、自分にとってどの項目が効くのかがはっきりします。
あなたが最初に試すなら
信号の多い街中を毎日走る人
発進の5秒がいちばん効きます。次に、赤信号が見えたら早めにアクセルを離すこと。郊外向けの数字が大きい項目より、回数の多い発進と停止に集中したほうが結果につながります。
郊外の道やバイパスをよく走る人
車間距離に余裕を持ち、加速と減速を減らすことが効きます(郊外で約6%)。空気圧の不足も郊外のほうが影響が大きい(約4%)ので、月1回の点検とセットで見直しましょう。
トランクに荷物を積みっぱなしの人
運転を変えるより先に、荷物を下ろすのが手っ取り早い方法です。一度片づければ、あとは何もしなくても効果が続きます。
送り迎えや待ち時間が多い人
待っている間のアイドリングを見直すのが近道です。毎日5分の待機でも、年にすると20L以上になる計算です。ただし、真夏や真冬に車内の人の体調を優先すべき場面では、無理に止める必要はありません。
エコドライブの数字は、一つひとつは数%の話です。けれども、そのほとんどは、急がない、積みっぱなしにしない、待ちっぱなしにしない、という小さな習慣の言い換えでもあります。
ガソリン代を減らすいちばんの近道は、特別な技術ではなく、「最初の5秒を急がない」ことから始まります。
参考にした情報
- 環境省 報道発表「『エコドライブ10のすすめ』の見直しについて」(2020年1月27日) env.go.jp
- 岐阜県「エコドライブ10のすすめ」 pref.gifu.lg.jp
- 福島県「エコドライブ10のすすめ」 pref.fukushima.lg.jp
- 環境省「エコドライブ10のすすめ」関連資料 env.go.jp
- 資源エネルギー庁 石油製品価格調査(2026年10月15日発表、10月13日時点) enecho.meti.go.jp

