
「次のGR86は2.0Lの自然吸気になるの? 今の2.4Lより馬力が下がるって本当?」——10月24〜25日に岡山国際サーキットで開かれたスーパー耐久(S耐)第6戦に、トヨタの開発車両「GR86 Future FR concept」が、新しい2.0L直列4気筒の自然吸気エンジンを積んで登場しました。報道では「次期GR86」とも呼ばれていますが、トヨタは市販の時期も車名も発表していません。分かったことと、まだ分からないことを分けて整理します。
岡山で分かったこと
| 項目 | 内容 | 出どころ |
|---|---|---|
| 車両 | TGRR GR86 Future FR concept(ST-Qクラス、32号車) | Car Watch・AUTOSPORT web |
| 場所と日程 | S耐第6戦 岡山国際サーキット(10月24〜25日) | Car Watch・AUTOSPORT web |
| エンジン | 直列4気筒2.0Lの自然吸気。2.0Lターボの「G20E」をもとにターボを外したもの。名称は未定 | AUTOSPORT web・くるまのニュース |
| 出力 | 「200PS前後」(現場のメカニックの話)。トヨタの公式値ではない | Car Watch・くるまのニュース |
| 積み方 | 縦置きで、以前より後ろ(車室寄り)・低い位置に。オイルパンを平らにして低く積んだ | くるまのニュース・Car Watch |
| 足回り | 前をストラットからダブルウィッシュボーンに。後ろもダブルウィッシュボーンのまま設計から新しく | くるまのニュース |
| いちばんの狙い | 軽くすること(ドライバーから「曲がらない」という声が多かったため) | AUTOSPORT web |
| 市販の時期・価格 | 発表なし | — |
※出力は公式発表ではありません。くるまのニュースの筆者は予選のタイムから「220PS前後以上」と推測していますが、これも推測です。
豊田章男会長(モリゾウ選手)は、この車を開発ドライバーの大嶋和也選手の「自由研究」と紹介しています。チームの中では「レビン?」というあだ名で呼ばれているそうですが、正式な名前ではありません。
「今の235PSより弱いのに、これが次のGR86?」
いま売られているGR86は、2.4Lの水平対向エンジンで235PSです。試作車の「200PS前後」はそれより約35PS、割合にすると約15%少ない数字です(35÷235≒0.15)。新しい車なのに力が下がる、というのは不思議に見えます。
| 項目 | 現行GR86(市販車) | Future FR concept(試作車) |
|---|---|---|
| エンジン | 2.4L 水平対向4気筒(FA24) | 2.0L 直列4気筒(G20Eがベース) |
| 過給 | なし(自然吸気) | なし(自然吸気) |
| 出力 | 235PS | 200PS前後(非公式) |
| 前の足回り | ストラット | ダブルウィッシュボーン |
| 価格 | 293万6,000円〜361万6,000円 | 未定(市販の予定も未発表) |
※現行GR86は当サイトのGR86の記事で確認した2026年改良モデルの値。前の足回りの変更はくるまのニュースより。
答えは、この試作車が「どれだけ速いか」ではなく「どれだけ思いどおりに曲がるか」を試しているからです。
AUTOSPORT webによると、開発のきっかけはドライバーからの「曲がらない」という声でした。重いものが車の前のほうにあると、ハンドルを切っても鼻先が向きを変えにくくなります。そこで、エンジンを車室寄りの低い位置に積み、足回りも作り直した、というのが今回の中身です。GRカンパニーの高橋智也プレジデントも、見た目以上に作り直した車だと説明しています。
ターボを外したことにも意味があります。Car Watchの取材に応じたメカニックは、ターボの効き始めの遅れ(ターボラグ)がなくなったことで、コーナーの立ち上がりが鋭くなったと話しています。大嶋選手は「非常に乗りやすい」と評価し、くるまのニュースでは開発を率いる藤原裕也氏が、これまでの延長線を捨てて「ライトウェイトスポーツカーとして本当に作りたいクルマ」の原点から設計し直したと語っています。
ただ、重さについては話が分かれます。Car Watchのメカニックは、以前のターボ仕様と比べて全体の重さはあまり変わっていないと話しています。どれだけ軽くなったかの数字は出ておらず、「軽さが狙い」と「重さはあまり変わらない」は、どちらもまだ途中経過として読むのがよさそうです。
4年かけた「公開開発」の流れ
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年 | GR86をもとにした開発車両で「公開開発」を始める。エンジンは市販車の2.4L水平対向から、1.6L直列3気筒ターボに積み替えた |
| 2024年 | 車両を新しくする。ただし今のGR86の延長線上の改良だった |
| 2024年5月 | トヨタが新しい2.0L直列4気筒ターボ(G20E)の開発目標を説明 |
| 2025年10月 | G20Eを積んだミッドシップ4WDの「GRヤリスMコンセプト」について、トヨタの担当者が「400馬力以上」と発言 |
| 2026年10月24〜25日 | GR86 Future FR conceptが、G20Eからターボを外した2.0L自然吸気で登場 |
※くるまのニュース(2026年10月26日)、Car Watch(2025年10月25日・2026年10月23日)より。
同じ週末、豊田会長は隣のピットのG20Eターボ搭載車「GRヤリス”風”Mコンセプト」で走っていました。ひとつの新しいエンジンを、ターボ付きの四駆と、ターボなしのFRで同時に試していることになります。量産を考えると、同じエンジンを複数の車で使えるかどうかは大切な点で、今回の試作車はその可能性も見せた形です。
まだ分からないこと
- 市販されるのか、いつか。トヨタは発表していません。くるまのニュースは「将来の量産化を念頭に腰を据えた開発へ移る」と伝え、Car Watchの筆者は「市販化までまだまだ時間がかかりそう」と見ています。
- 市販車の出力。200PS前後は試作車の、それも現場の話です。市販の際にどうなるかは分かりません。
- スバルBRZとの関係。今のGR86とBRZは同じ骨格と水平対向エンジンを使う兄弟車です。Car Watchの筆者は、前まわりがまったく違うため同じラインでの生産は難しいと見ていますが、これも筆者の見方で、両社の発表はありません。
- 車名。「レビン?」はチームでのあだ名で、正式名ではありません。
今GR86を考えている人は、どう受け止めればいい?
今年・来年のうちに買いたい人
今回の話は、発売の予定が何も出ていない試作車です。今のGR86は2026年8月に改良されたばかりで、運転支援のカメラも3眼になっています。乗りたい時期が決まっているなら、試作車のニュースを理由に待つ必要は薄いと考える人が多いでしょう。
「軽くてよく曲がるFR」を待ちたい人
試作車が目指している方向は、まさにここです。ただし時期が見えないので、待つなら「何年でも待てるか」を先に決めておくと迷いが減ります。軽さで楽しむFRなら、今すぐ選べるロードスターも候補になります。
中古のGR86を考えている人
次の型が出ると前の型の相場が動くことはありますが、今回は発売時期が未定です。今の段階で相場が大きく動くと決めつけず、状態と価格で判断するのが無難です。
モータースポーツとして見たい人
この車は、レースの場で改良を重ねる「公開開発」の車両です。次に姿を見せるとき、どこが変わっているかを見比べるのも楽しみ方のひとつです。
馬力ではなく「曲がり方」から作り直す
新しいスポーツカーの話題は、どうしても「何馬力か」に目が行きます。けれど岡山に現れた試作車は、あえて今より小さな数字を選び、エンジンの置き場所と足回りから組み直してきました。
次のGR86がどんな車になるかは、まだ誰も決めていません。分かっているのは、作っている人たちが「速さ」より先に「手応え」を探しているということです。
情報源
- Car Watch「トヨタ、S耐マシン『TGRR GR86 Future FR concept』が…新たな4気筒2.0リッター自然吸気エンジンで登場」(2026年10月23日) car.watch.impress.co.jp
- Car Watch「トヨタが世界初公開した新型2.0リッター直列4気筒自然吸気エンジン搭載GR86の愛称は”レビン?”」(2026年10月26日) car.watch.impress.co.jp
- くるまのニュース「トヨタの”次期型”『GR86』登場!? 新開発の『2.0L直4』搭載で200馬力超え?」(2026年10月26日) kuruma-news.jp
- AUTOSPORT web「S耐第6戦岡山登場のTGRR GR86 Future FR conceptはベテランをも熱くさせる”自由研究”」(2026年10月24日、Yahoo!ニュース) news.yahoo.co.jp
- Car Watch(G20E型エンジンとGRヤリスMコンセプト、2025年10月25日) car.watch.impress.co.jp

