
高速道路の逆走は、めったにないことのように思えて、実は全国で2日に1回のペースで起きています。事故になれば死亡率が極端に高いのも特徴です。統計で実態を押さえたうえで、「逆走車の情報を聞いたとき」「前方に見つけたとき」「自分が逆走してしまったとき」の動き方を整理します。
統計で見る逆走
NEXCOなどの集計によると、高速道路で事故に至った逆走は2015〜2024年の10年で427件。逆走事故で死亡事故になる割合は、高速の事故全体と比べて約38倍にのぼります。正面衝突になりやすいためです。
逆走が発生した件数全体(事故に至らなかったケースも含む)で見ると、運転者の年齢は2024年も約70%が65歳以上という傾向が続いています。認知機能の低下や、SA・PA、インターチェンジでの進入方向の間違いが主な原因とされています。なお、実際に事故に発展したケースだけに絞ると、65歳以上の割合は約50%(うち75歳以上が34%)とやや下がる報告もあり、「逆走そのものは高齢層に多いが、事故化までのプロセスはそれだけでは説明できない」という見方もできます。
どこで逆走が始まりやすいか
2023年の逆走事案は224件で、そのうち事故(物損・負傷・死亡)に発展したのは約17%でした。逆走が始まる場所としては「分合流部・出入口部」がもっとも多く、次いで単路部(本線の途中)、料金所の前後が続きます。年齢層別では65歳未満が約3割、65歳以上が約7割で、75歳以上に限ると全体の46%を占めています。SA・PAやインターチェンジから本線に戻るときに進行方向を間違えるケースが多いことと合わせると、「出入口・合流部での方向誤認」が逆走の最大の起点になっていることが分かります。
高齢ドライバー対策としての認知機能検査
75歳以上の運転者は、運転免許の更新時に「認知機能検査」を受けることが義務付けられています。検査は「時間の見当識」(日付・時刻を記入する)と「手がかり再生」(イラストを記憶し、別の作業を挟んだあとに思い出す)の2項目で構成されており、記憶力・判断力の低下や認知症のリスクを確認するものです。結果が「認知症の恐れあり」となった場合は、臨時適性検査や医師の診断書提出が必要になり、実際に認知症と診断されれば免許の取消し・停止の手続きに進みます。また、信号無視など特定の交通違反をした75歳以上の運転者には、臨時の認知機能検査が課される仕組みもあります。運転に不安を感じる場合は、免許を自主返納するという選択肢もあり、返納すると運転経歴証明書が交付され、身分証明書として使えるほか、公共交通機関の割引が受けられる自治体もあります。
技術面での対策はどこまで進んでいるか
逆走は毎年およそ200件発生しており、そのうち4割ほどが重大事故につながっているとされます。看板や路面の矢印表示といった従来の対策だけでは防ぎきれないため、近年はセンサーやAIを使ったリアルタイム検知への投資が進んでいます。準ミリ波レーダーやマイクロ波センサー、3Dステレオカメラを出入口に設置して車両の動きを分析し、逆走車両を検知する仕組みや、三次元レーザレーダとAIによる形状マッチングで逆走・誤進入を検知するシステムが実用化されています。2024年には愛知県の高速道路で、逆走車両を検知するとLEDプロジェクタが路面にピクトグラムを投影してドライバーに警告する仕組みも導入されました。スマートフォンアプリやETC2.0を使って、逆走車自身やその周囲の車に警告を届ける技術も開発が進んでおり、「標識で防ぐ」から「センサーとAIでリアルタイムに検知し、多層的に警告する」対策へ移行しているのが現在の流れです。
もし事故になったら、過失割合はどうなるか
逆走車と正常に走行していた車が衝突した場合、基本的には逆走した側が100%の過失を負うとされています。逆走は「絶対にしてはいけない」明確な違反行為であるため、過失割合の判断でもほぼ一方的な責任が認められやすい類型です。ただし、非逆走車の側も、逆走車を発見してから回避できたはずの行動を取らなかったと判断される場合には、わずかながら過失が付くこともあります。実務では「別冊判例タイムズ」という基準書に沿って基本の過失割合が決まり、そこから個別事情(減速していたか、回避行動を取れたかなど)で修正されるのが一般的な流れです。逆走事故は正面衝突になりやすく被害が重大になりがちなため、遭遇したときにどれだけ早く危険に気づき、安全な行動を取れるかが、過失割合以前に自分の身を守るうえで最も重要です。
逆走車の情報を「聞いた」とき
ラジオやカーナビ、道路の電光掲示で「付近で逆走車」と流れたら、
- 速度を落とし、前の車との車間を十分にとる
- できれば追い越し車線(右)を避け、走行車線を走る
- むやみに車線変更せず、前方をよく見る
逆走車を「前方に見つけた」とき
- まず追突されないことを最優先に、急ブレーキは避けつつ減速
- ハザードランプで後続に危険を知らせる
- 安全なら左に寄る。SA・PAや路肩など、避けられる場所があれば入る
- 同乗者が110番、または最寄りの非常電話(約1km間隔・SA/PA内)で通報。場所(上り/下り、キロポスト)を伝える
自分が「逆走してしまった」と気づいたとき
- Uターンや後退は絶対にしない(さらに危険)
- 近くの安全な場所(路肩の広いところ、非常駐車帯)に停め、ハザードを点灯
- ガードレールの外側など、車の外の安全な場所に避難する
- 110番か非常電話で通報し、指示を待つ
よくある質問
Q. 逆走はどんな人がしやすい?
逆走が発生した件数全体で見ると、2024年も運転者の約70%が65歳以上です。ただし実際に事故に発展したケースだけに絞ると65歳以上は約50%(うち75歳以上34%)とやや下がります。SA・PAやインターチェンジから本線に戻る際の方向誤認が主な原因とされています。
Q. 逆走車を見つけたら、自分でどうにかしようとするべき?
絶対にやめてください。無理に停めさせようとしたり幅寄せしたりするのは非常に危険です。ハザードで後続に知らせつつ安全な場所に避け、110番や非常電話で通報するのが基本です。
Q. 逆走事故に遭ったら、過失割合はどうなる?
基本的には逆走した側がほぼ全面的に過失を負います。ただし個別の状況によって修正されることもあるため、正確な判断は保険会社や弁護士への相談が必要です。
背景
逆走対策として、高速道路の合流部やランプには、逆走を知らせる大型の矢印路面標示や「進入禁止」の看板、光る装置などが順次整備されています。ただし物理的に完全に防ぐのは難しく、運転する側の知識も安全につながります。
とくにSA・PAから本線に戻るとき、駐車位置によっては進行方向を勘違いしやすいと指摘されています。出る前に「本線はどっち向きか」を意識するだけでも予防になります。
情報源
- NEXCO西日本「無くそう逆走 ― 高速道路は一方通行です ―」 w-nexco.co.jp
- NEXCO東日本 ドラぷら「逆走にご注意を」 driveplaza.com
- 国土交通省「高速道路の逆走発生状況」/JAF Mate Online の解説記事
- 政府広報オンライン「高速道路の逆走原因の傾向と最新対策」 gov-online.go.jp
- IHI「三次元レーザレーダとAIで高速道路の安全を守る」 ihi.co.jp
- JAF Mate Online「高速道路の逆走は2日に1回の割合で、年間では平均190件も発生している」 jafmate.jp
- 警察庁「認知機能検査について」 npa.go.jp
- アトム法律事務所弁護士法人「逆走事故の過失割合をケース別に紹介!慰謝料相場額もわかる」 atomfirm.com
- シニアガイド「高速道路での逆走の7割は『65歳以上』。事故の死亡率は『46%』」(事案全体と事故化ケースの年齢構成の区別の確認用) seniorguide.jp

